今日でおよそ3ヶ月になる・・・。
トラはおよそ3ヶ月間も一人の女を追いかけ続けた。
その女には彼氏がいた・・。
一瞬諦めかけたが、トラは粘った。
通常粘ることすら難しいが、その女にはトラをひきつけ続ける何かがあったのだ。
それは女性としての魅力ではなく、ある種の「希望」というものなのかも知れない。
「私には彼氏がいるから、貴方とは付き合えません・・。」
このようにトラに言った後でも、寂しくなると次の日には電話をしてきた。
そうして自分の悩みと、その彼氏の不満を嵐のごとくしゃべり続けた後、
「彼にはあまり思ってることいえないの・・トラ君には何でも話せるのに><」と言って黙った・・。
その彼は、たまに密かに合コンとかに参加していたらしい・・。
写真でみたところ、かなりのイケメンだ。
「もうだめなのかなぁ・・ あたしどぉすればいいのかなぁ・・・?」
トラは、そんな弱音を聞くたびに悪魔に魂を売った。
「そうだと思うよ。 だからオレと付き合ったほうがいいんだよ!!」
珍しく言い切った。
しかし、その女はその都度、
「そうなのかなぁ・・。ありがとうね☆ 本当はそうなのかも知れない・・。でももう少しがんばってみる。 またボロボロになったらトラ君に慰めてもらうね。」
と言って、適当に話をそらした。
トラの気持ちは「女の魅力」+「希望」という餌を与えられ、
そんなことを繰り返しながら3ヶ月も引っ張られ続けたのだ。
体の関係は1回だけあった。
その直後、その女はトラに引導を渡そうとしてきたのだ。
夜21時ごろ、荒川の堤防下の落ち着いた道路に車を停め、2人は車内で揉めた。
女
「ねぇトラ君・・・。何も言わず私の前から消えて。」
トラ
「え!?なんで??」
女
「英クン(彼氏 仮名)と真剣にやって行くことにしたから・・・。今までありがとう。」
トラ
「え!? 何それ? ちょっといきなりそんなこと言われても・・・。」
女
「お願い・・。私の前から消えて・・・。」
本気で言っているのだろうか?
この女の声のトーンから考えるところ、一応本気なのだが迷っている部分があるような気がした。
今までこの娘は、彼氏とトラの二人を測りにかけていて、
トラの存在がどんどん大きくなってきたのかもしれない。
このままだと手に負えなくなってしまう・・。
悩んだ末に、いっそのことトラに消えてもらおうと思ったのかもしれない。
これは大人になってから気づいたことだが、
当時のトラはそのことが理解できていなかった・・。
さっきまであんなに仲良くしてたのに・・・。
手をつないで散歩してたのに・・。
焼肉食べて、帰りに二人で歌いながら車を運転してたのに・・。
この展開はいきなり過ぎて、通常の男は納得できないと思う。
トラ
「今のいままでこんなに仲良かったのに・・。それって本気で言ってるの??」
女
「うん。本気だよ。 お願い・・。消えて。」
トラ
「いや。 オレは消えない!」
女
「ええ!!? どぉして??><」
トラ
「ミキ(仮名)がオレを本当に嫌いになったのなら、仕方ないから消えるよ・・。でも、そうじゃないでしょ??」
女
「ううん・・・><トラ君が嫌いになったの。><」
トラ
「いや。ウソだね!!」
女
「えぇ~><なんでさぁ~~!!? 本当だもん~。」
絶対に嫌いな人に対しての口調じゃない・・・。
女
「あたし、もうトラ君が嫌いになったの・・・。お願い。私の前から消えて・・・。」
今日はミキの車だったため、車内には女の子らしいスヌーピーのぬいぐるみが付いたティッシュ箱が積んであった・・。
ミキはそのスヌーピーのぬいぐるみをトラの肩と二の腕付近に持ってきて、
じゃっかん腹話術のような調子でもう一度トラに言った。
女
「お願い。 私の前から消えて・・・。」
あたかもスヌーピーがしゃべっているような演出・・。
意味は無いが、こんなときにでも可愛く思えた。
こんなときだからこそ、なおさら可愛く思えた。
こんな可愛い娘が、一生自分の前から消えてしまうと考えると、自分の心臓はグシャグシャにかき回され、
心が幽体離脱しているような気持ちになった。
こんなピンチなのに、もう一人の冷静な自分が第三者ヅラをしながら、
この修羅場を眺めているのだ。
そして、もう一人の熱い自分・・。
なんとかして、この女を自分のものにしたいと思っている情熱的な自分に対して、
冷静な視点でアドバイスをしてくれていた。
結局、その場は絶交しないという結論に落ち着いた。
しかし、その日2人がわかれた後、
その女から1通のメールが届いた。
女
「さっきは絶交しないって言ったけど、あの場はそうでもしなければ収まらなかったの・・。
そういうわけで、もう私達は逢わないことにするね。 色々ありがとうね。 トラ君、大好きだったよ」
そうしてメールは途切れた・・・。
トラは返信する気力すら残っていなかった。