本棚の整理をときどきする。

そろそろ終活もしておくか、という気持ち。

数年前までは死ぬことなど非現実的だったが、ヒトは、驚いたことに、

70歳を過ぎた途端に体のあちこちで老朽化が顕在化する。

始まったときは何だこれは? というくらいだったが、

今や満身創痍で、特に悲しいのが肌が汚くなったことだ。これは辛い。

ホントに、そろそろくたばるのかなと思う。

 

本棚をいじっていた話に戻る。

『東海の鬼 花村元司伝』という将棋の本があった。これ↓

花村八段は、昭和20年代から60年くらいまで一線級で活躍した将棋指しで、

同時期のライバルは升田、大山。晩年に彗星のように中原名人が現れる。

わしはNHKのテレビ将棋で対局を見ている。

本の監修の森下卓九段は弟子である。

 

この人の指し手は「妖刀」と評された。

本からその一例を掲出する。

図は、順位戦での対:原田八段戦。図は見やすいように天地逆にした。↓

 

 

中盤戦で、コマ割りは角+桂と銀2枚で、これは原田が儲けている。

玉の防御も原田の方が堅い。

しかも、今、6四歩と突き出して、と金を作ろうとしている。

これは現代のAĪ評価なら、原田が断然有利な局面だと思う。

しかし、ここから、花村は信じられない勝負手を指すのだ。

 

4六歩打ち→同銀→4七角打ち(

 

えっ、何、それ? タダじゃん! え、えぇー!!

それで良いわけ?? 

 

以下、同金→3八角打ち、と進む。

勝負はこれで決まったわけではなく、もつれ合った末に花村が勝ったそうだが、

角の連打で手を作る着想が非凡。それで行けるという大局観が凄い。

 

瞬間、今期名人戦第二局の幻の勝負手、3五桂打ちを思い出した。

あれと同じ手触り感がする。

 

藤井聡太の将棋をAĪ将棋という人がいるが、

確かに他者を圧倒する読みの深さと量、そのスピードはAĪの様だが、

本質は違うところにある。

名古屋将棋だ。

うまく言えないが、藤井聡太は花村元司の血脈。

そういうことではないか。