晩秋はバードウオッチング入門の季節。
もともと動物全般が好きなので、鳥はいれば目で捉える。
できそうな気はする。
高校の時に講演会があった。
記憶にあるのは一回だけなので、3年に一度だったのか。
話したのは串田孫一。
詩人が本職だろうが、筆も立つので随筆家で暮らした人だ。
それは後に知った。
痩せた気難しそうな男が演壇に上がって、
最近の編集者との会話から話し出した。
このとき串田は50歳をひとつふたつ過ぎた勘定になる。
もちろん、高校生のわしから見れば立ち枯れ寸前の老人だ。
で、編集者に、近頃は都心では鳥の姿も見なくなりましたね、と
言われて、
串田は、おそらくカチンと来たのだろう。
鳥はたくさんいますよ、と言って
その日の朝の散歩で見た鳥をつぎつぎとあげたそうだ。
14種類いたと演壇で嬉しそうだった。
なかなかのバードウォッチャーだ。
その日の講演は何も覚えていないが、そのことだけは覚えている。
串田は、スズメ、カラス、ハト、…から数え始めたのだ。
わしは、なるほどと思った。それは間違いなく鳥だ。
鳥をろくに見ていない人ほど鳥を見なくなったと言うのだ。
串田はそう語っていたように思う。
英国ミステリードラマの『主任警部モース』で、
引退をひかえたモースはバードウオッチングを始める。
ぜんぜん向いていない。
窓から見えた小鳥を手にした本で調べて、名前を見つけるが、
あれはスズメですとルイス巡査部長に訂正されてしまう。
やっぱり、バードウオッチングで老後をごまかす玉ではない。
さて、わしの場合はどうだろう。
まず、双眼鏡と身近な鳥のカタログを見つけないといけない。
