競馬と将棋には相似性がある、とは若くして亡くなってしまった
真一郎くんの言葉だが、昨日のNHK杯を見てなるほどと思った。
中村修vs.行方戦である。
勝負は対局前の今日の対戦に臨んでというショートインタビューから始まった。中村修が過去の対戦の思い出を語ったのであった。
それは2011年3月11日の対局について、だった。
対局は地震で中断し、再開されたが、中村修は胸が騒いで対局に集中できなかった。対して行方は揺るがぬ集中力を見せたという。
中村修は、自分の修行の至らなさを恥じて、非礼を償うつもりで、今日は集中して臨みたいという決意を語ったのだと思う。

ビデオの収録は放送順だろうから、自分の番を待つ行方はこの中村のコメントにおどろいた。東日本大震災の日の自分の姿にそのとき気が付いたのだと思う。それが東北人としての動揺を誘い、心の整理が付けられぬまま対局になってしまった、というのがワシの読みだ。
               
勝負は序盤から中盤に差し掛かるところ、後手番行方が6六歩と取り込む。先手の中村修は同銀と取った。
解説の藤井九段がアレッと声を上げた。ささっと手を動かして大盤解説をする。後手6五銀とぶつければ先手壊滅であった。
「これは喜んでそうするでしょ」
ところが行方は、4二金寄るとして自陣に手を戻した。
踏み込まなかったのだ。
そして、その数手後、9五歩と端にムリ気味の仕掛けに出た。
アクセルとブレーキが滅茶苦茶では勝負にならない。
対局は、中村修の個性的な差し回しが随所で光る一番となった。
 
将棋と競馬はよく似ている。