馬券課税の問題点について、実例をひとつあげよう。
友人のヒロシくんは熱心な競馬ファンである。彼は馬券の収支をノートに付けている。(ワシも大体は計算しているが、
ざっと見たら、今年は早くも20万円負けている、あれ~)
彼はめったに競馬場に行かず、PATで買っているので、
最後の百円まできっちりと算出。厳格な資金管理をしている。
応用数学科出身だ。

数年前に聞いたのだが、彼が年間に購入する馬券は計300万円。払い戻しは計240万円。回収率80%というのが平均的な
成績だそうだ。(少し見栄を張っている気がしないでもない)
それをもとに課税額を計算してみよう。

馬券の額は一定しない。1点当たり100円のときもあれば、
1万円のときもある。
通常は、ひとレースに付き、計2000円予算。重賞は計1万円。
おおきなGⅠでは計5万円使うときもある。土日とも、
5レース以降はだいたい手を出している。
馬券スタイルは、いわゆるタコ足だ。本線を買った後に、買い目がどんどん継ぎ足される。馬連、馬単から始まって三連単、抑えに
複勝やワイドも買う。これもありそうだ、それも押さえてとと
買い増しを続ける。よく当たるのだが、トリガミもしょっちゅうだ。
買い目が多すぎるとワシは思うが、負けず嫌いで外れたくない
気持ちが優先する彼は複勝でもいいから、当たり馬券を欲しいのだ。

そんな彼の1日当たりの大切な的中馬券に限った購入総額を
仮に平均5千円としよう。すると年間約50万円になる。
では、税額を計算してみよう。
① 240万円(払い戻し総額)- 50万円(馬券代総額)
  =190万円(これを[A]とする)
  [A]- 50万円(控除額) =140万円
② 140万円×50%=70万円
ヒロシ君の払い戻し金の納税額は、70万円だ。

法律ではこれを納税しなければいけない。
もちろん、実際には勝っていない彼には払う気は全くないし、
一度も確定申告をして払ったことなどない。
ということは、彼は競馬歴30年のベテランだから、
脱税総額の累積はゆうに2100万円になる。

立派な犯罪者ではないか!
これはおかしいでしょう? 国税局の皆さん。
現行の払戻金納税の法律は、品行方正にして善良なる市民を
脱税の大犯罪者にしてしまうのだ。
実際には逮捕されたりはしないのだからいいじゃないか、
というのならそれはさらにおかしい。
脱税を見逃して、税を納めない風潮を蔓延させることにつながる。
税務署として、それは一番まずいんじゃないのかな?