早いもので、4月も下旬に入りました。多くの企業では、4月から新年度を迎え、気持ちも新たに業務に取り組まれていることと思います。

 春はお花見の季節でもありますが、今年の東京は開花から満開になるまでが遅かったため、例年よりも長く桜を楽しむことができました。弊所のある荻窪にも幾つか桜の名所がありますが、先日、近くの「明治天皇荻窪御小休所」の桜を見に行ったところ、ちょうど立派な大木に咲いた満開の桜を見ることができました(下記写真をご覧下さい)。

 

  

(写真左)御小休所跡長屋門前の桜の木 (写真右)「明治天皇荻窪御小休所」の碑

 

 さて、今年は知財4法の法改正がありませんでしたが、近年の法改正で導入された新制度の動向が、少し前に特許庁のホームページで公開されていましたので、ご存じの方も多いと思いますが2つほど紹介させて頂きます。

 

 1つめは、特許異議申立制度についてです。平成27年4月に制度が導入され、実際に申立が本格化したのは同年10月以降とのことですが、特許庁が公表したデータ(平成28年12月末時点のデータ、公表は平成29年2月)を見てみますと、確かに平成27年10月以降は、ほぼコンスタントに80件~100件強の申立が毎月なされています。最も多い月では150件近くの申立がなされていますので、こういったデータを見る限り、着実に異議申立制度が活用され始めていると言ってよいのではないかと思います。

 一方、異議申立案件の審理状況ですが、全申立件数1578件の半数弱(712件)が既に審理を終えています。これらの判断結果を見ますと、異議申立対象の請求項の全部又は一部の取消が認められた件数は、審理終結案件数の約7.7%(55件)にすぎず、審理終結案件数の約90%(644件)は維持決定となっています。これだけを見ると、無効審判よりも使い勝手良く特許権の効力を争える制度として導入された異議申立制度が特許権者側に有利な運用をされているのでは、とも思えますが、まだ半数以上の案件が審理中であることを考慮しますと、まだそのような判断するのは早計なように思います。

審理中の案件は、取消理由通知が出され、それに対して意見書提出や訂正請求の手続が行われているために審理に時間を要している可能性があり、従って、これらの案件の審理結果如何によっては、取消が認められる案件数が増える可能性もあると思われるからです。

 また、維持決定がなされた案件でも、訂正が行われた案件が維持決定案件数の約36%(232件)ありますので特許権者に訂正をさせることで申立の目的を達成できるようなケースでは、異議申立制度を上手く活用していると言えるのではないでしょうか。

 いずれにしましても、これからも異議申立の件数が増えていき、審理終結件数も増えてくるに従い、様々な事例が出てくると思いますので、弊所も、実務を通して、又は特許庁公表の情報等を通じて、特許異議申立制度の理解を更に深めていきたいと思います。

 

 2つめは、新しいタイプの商標の登録状況についてです。新しいタイプの商標は、特許異議申立制度と同じ平成27年4月に導入されました。音の商標や動きの商標等は、平成29年2月20日現在で、既に登録件数が200件を超えていましたが、色彩のみからなる商標だけは492件もの出願があるにも関わらず、登録に至るものがありませんでした。

 今般、色彩のみからなる商標について、初めて2件の登録が認められました。認められたのは、トンボ鉛筆のトンボ鉛筆の青・白・黒からなる消しゴムのカバーの色彩と、セブン-イレブン・ジャパンの白・オレンジ・緑・赤からなる小売業に関する色彩です。この2つの商標の周知性については恐らく異論のないところであると思いますが、個人的には、今後、単色の色彩のみからなる商標で登録になるものが出てくるのかに注目しています。指定された商品やサービスに限るとはいえ、特定の色を特定人が独占することを認めて良いのか、意見の分かれるところではないかと思いますので、この点に関する特許庁の判断がどのように示されるのか関心をもって待ちたいと思います。

 

参考URL   
 1)特許異議の申立て  (特許庁ホームページ)   
  2)色彩のみからなる商標について初の登録を行います (経済産業省ホームぺージ) 

 

 弊所も、4月から新たな営業年度を迎え、また創立38年を迎えたことから、4月3日に創立記念式と新年度方針発表を行いました。今年度も、より良いサービスの提供と高いお客様満足度の獲得を目指して、所員一同力を尽くしていきたいと思います。

 

特許業務法人樹之下知的財産事務所

所長 弁護士・弁理士 小泉妙子