前回三段リーグは中学生棋士誕生かという期待が高まっていた。山下数毅三段と炭崎俊毅三段であったが、残念ながら藤井竜王名人以来の中学生棋士誕生はならなかった。山下三段は前々回で次点を取っていたので、期待はかなり大きかった。炭崎三段は1期目だったのでそこまでの期待ではなかった感じである。山下三段は次点を取っているので、新人王戦で優勝すれば四段昇段が決まるという状況でもあった。残念ながら服部慎一郎六段に敗れてこちらも消えた。現在は竜王戦6組で決勝に進出しているが、決勝の相手は藤本渚五段である。やはりこの辺りの棋士を破らないと優勝は出来ないということかな。藤本五段、服部六段、そして伊藤匠七段は若手の三羽烏であろう。既に伊藤匠七段は藤井竜王名人に次いで第2位のレーテイングを記録している。新人王戦で優勝した上野裕寿四段は三段リーグは10期を費やしている。藤井竜王名人との記念対局を見て解説の棋士が、この将棋で三段リーグをなかなか上がれなかったのかと、舌を巻いていた。記念対局では中盤までは藤井竜王名人に対して互角の将棋であった。以前藤井竜王名人は年下の棋士や奨励会員の将棋に注目しているようなことを語っていた。藤本五段や上野四段、山下三段などを意識しての発言だったのであろうか。

 さて第75回三段リーグは4回戦まで進んでいる。今期は44名の三段によるリーグである。競争率22倍である。私は大体10倍以上の競争率になると、実力よりも運の要素が大きくなると考えている。現在4連勝が3名、3勝1敗が13名である。注目の山下三段は13名のうちの一人である。中七海三段は残念ながら1勝3敗である。女性の三段は連敗癖があるように思うので、要注意である。実力者なのになかなかい四段になれない斎藤優希三段は1勝3敗のスタートである。年齢制限を超えているので10勝以上しないと三段リーグに残れない。9敗した時点で奨励会退会決定という瀬戸際に立たされながらも、9期連続の勝ち越しを更新している。前期の前半戦は酷くて、1勝6敗の立ち上がりである。その後10勝1敗で三段リーグ残留を決めたが、上野四段よりも三段リーグでの成績は良いのである。服部六段は三段リーグ1期目に14勝4敗で上がれずに、その後5期かかっての昇段であった。1期抜けや2期で抜けると勝率7割超えもあるが、5期もかかって勝率が7割近いのは、随分としたものである。勝率5割台の後半ならば、比較的昇段しやすい。爆発的に勝つのが出れば、四段昇段のチャンスを掴むものである。服部六段は中学生名人の経験者である。中学生名人は初代の中村修九段を筆頭に丸山忠久九段や屋敷伸之九段などのプロ入り後は快進撃をしてタイトル経験者になったりしたが、その後はあまりパッとしないのが現状である。小学生名人経験者に圧倒されている感じがどうしてもするのである。最近は藤井竜王名人や伊藤匠七段の登場で、小学生倉敷王将低学年の部が注目されるようになった。上野四段も藤井竜王名人が優勝した翌年の優勝者である。佐々木勇気八段、大地七段は第2回、第3回の優勝者である。第4回の優勝者は斎藤優希三段である。昔は高校生になって将棋を覚えてプロ入りした棋士もいるというのに、隔世の感がする。どうしても天才棋士に目が行きがちであるが、遅咲きの棋士にも注目したいものである。ABEMAの今回の解説に新四段が登場した。まだ公式戦を戦っていない間に解説デビューとは初めてのことだろう。20代半ばというのは将棋指しとしては遅咲きの部類である。頑張ってもらいたい。

 さて中三段の事だが、確実に実力を向上させているようである。私見によれば、里見三段より強く、西山三段と互角に近いかと思う。もう残りの回数が少なくなっているので、スタート良くダッシュしてもらいたかったが、初戦の勝利の後3連敗である。炭崎三段も1勝3敗である。以前注目していた岩村三段や片山三段も1勝3敗の出だしである。13勝5敗だと昇段のチャンスはあるので、まだまだこれからではあるが、有力者が上位にひしめいているからな。得意な季節とかもあるかもしれないし何とも言えない。

 毎度のことだが三段リーグの改革は急がないといけないと思う。藤井ブームで将棋のプロを希望する子供たちが増えたところで、上手く取り込まないと、将棋界の未来は暗いものになると思う。どこの世界でもそうだが、既得権益にしがみついている人々が居るが、その人たちのことも考えてしまうと改革は出来ないと思う。フリークラスは順位戦陥落組は5年でカムバックできなかったら引退でいいと思う。宣言組は10年を目途にすればいいと思う。後は思い切って、全棋士参加を義務付けない事。予選参加は対局料は出ないことにしてもいい。本戦から対局料は出ることにする。他のスポーツでもそうだが、予選を義務付けてお金を払うなんてシステムは将棋界だけであろう。逆に参加費を取ってもいいぐらいである。産児制限を撤廃する必要はないかもしれないが、そろそろ見直した方が良いと思う。お金がすべてではないが、藤井八冠が2億円に満たないなんて、夢を与えることは出来ない。趣味の延長線上にあると言われても仕方がないところである。