けさまで雪が降って、そのあと急に晴れた。天気の落差にもやられそうになったけれど、なによりも花粉がすごかった。

置き配をとりに玄関ドアを開けて閉めただけで鼻水と咳とくしゃみが止まらなくなり、皮膚がかゆくてどうしようもなくなり、お笑いライブに行く予定をしかたなくキャンセルした。


花粉にきく漢方をたくさん飲んで、花粉の薬も飲んで、気がついたら眠っていた。目が覚めてきつねカップうどんを食べた。最近食べているきつねカップうどんはわかめが入っている。わかめを食べておくと健康にいい気がしてなんとなくそのきつねカップうどんばかり食べてしまう。わたしはかまぼこがあまり好きではないのでかまぼこの入っているきつねカップうどんではかまぼこを抜いてから食べている。それをずっと食べ物を無駄にしているという気持ちがあったので、わかめが具になっているものを見つけてよかったと思っている。



---時間軸----





髪を切る前のわたくし




きのうは髪を切りにいった。気がついたらものすごくさっぱりした髪型になっていてびっくりしたけどそれもよいだろうと思ってスターバックスに入った。本を読みたかったからだ。


まだ60pしか読んでいない情報で言うと、高橋源一郎『DJヒロヒト』は昭和を描いた話で、序盤から密度が高い描写が続いていく。戦争が起こっている。そのことよりも原爆というもののことが細かく映し出されている。いまのところDJは出てこない。DJというのが比喩なのかマジなのかまだわからない。序文がわたしをすこしわくわくさせたまま続いている。


本を読んでいると隣の席の学生さんが3分ごとに咳をするのが気になってくる。貧乏ゆすりが視線に入るのもかなりいやだ。目に入るところでものが周期的ではなくランダムなタイミングで動き続けていることがわたしはとても苦手だ。咳をするのはだいたい3分ごとだとわたしは感じたが、そろそろしそうだなって頃になると耳をすませてしまうので集中力をかなり削がれる。咳と貧乏ゆすりのふたつがわたしを乱してきてウワーーーーってテーブルをひっくり返したくなってくる。


これはいかんと思って薬を飲み、母に電話して気を紛らわすことにする。

本来わたしは喫茶店で電話をすることがないのだが、一番端の席で、隣の席ともかなり距離があり、壁の方を向いてならば誰にも迷惑をかけないだろうと思ってその場でかけた。


母は車庫証明を取ってきたという話をして、うんうんとわたしは聞いている。そのうちになぜかお金を節約しなさいよという話になる。わたしはほんとすいませんと答える。お金の使い方が下手で上京してからおかあさん銀行に頼ったことが数度あるのだ。いま収入はどのくらい?と聞かれて素直に答える。その収入だと家賃がいくらでじゃあ月に何円くらいしか使えないよね?じゃあ外食は減らさないといけないね?とわたしはスターバックスででかいコーヒーとチーズケーキを食べながら外食を減らせと言われているどうしようもなさに体を縮こめてしまう。貯金ができるといいよね、と言われて、そうだね、と答える。よくわからないデビットカードのチャージ版みたいなカードがあることを教わりそれを使ったらどうかと勧められる。そのカードはつまりSuicaみたいなものであんまり根本的な解決にならないとわたしは思うが、クレジットカードを使いすぎないためにはたしかに必要だという点で同意する。


3分ごとに咳が聞こえる。母はわたしにお金を使うなと説く。いま収入のタイミングで現金があまりないから喫茶店に入るにもカードが使える店に来ていることがあまりに悲しくなってくる。行こうと思っていたお笑いライブが気圧の都合で行けなさそうだとわかると(わたしは頭痛ーるの有料会員なのではやめにわかる)キャンセルをして、その分お金が浮いた、と思ってしまう。


20万円欲しい。リアルな金額としての20万円が欲しい。100万円でもいい。たとえば20万円が月々入ってくる時と100万円が月々入ってくるときでわたしの生活はあまり変わらないと思う。高い服やブランド品にこだわりがないし、宝石のようなものもとくに必要がない。けれど本は我慢せずに買うだろうしお笑いライブもたくさん見に行くだろうからその分支出は増えそうだ。調子が悪いときにはタクシーを使うこともあるだろう。そうしたらお金はあっという間に消えていく。


わたしはいま収入が少ない状態なのに収入に対して贅沢に暮らしているのかもしれない。まず20万円欲しい。できれば課税されない20万円がいい。そうしたら貯金ができると思う。毎月20万円をもらうためには20万円を稼がなくてはならない。これは本当に大変なことで、わたしは労働に適性がないためものを書いたりすることでお金を得なくてはならない。20万円。ずっと20万円ということばが頭の中にある。課税されない20万円は降ってこないので自力で頑張って課税されて税を引いたときに20万円残るように仕事をしていかなくてはならない。


きつねカップうどんは一個あたり150円ほどで、3玉100円のうどん1玉にめんつゆを入れて煮たら40円くらいになるはずだ。スターバックスの季節のフラペチーノは700円くらいする。


みみっちい話してるな〜〜〜〜と思う。みみっちい話をしている。そういうの考えるのがいやなのでなるべく現実逃避をしていたがわたしはちゃんと稼いだりなんだりしなくてはならない。20万円欲しいとか言っていられない。


電話を切ったあとに椅子の向きを正すと3分おきに咳をする貧乏ゆすりの学生さんはいなくなっていた。かわりに別の社会人風のシャープなメガネをかけた人がわたしの方を嫌そうに見る。電話が思わず長くなってしまっていたことにわたしは気がつき、それはわたしの意図していた母にちょっと電話かけて元気をもらおうという気持ちとは違っていて、スターバックスの片隅でやるとしてもあまりに長くお金の話ばかりしている電話だったと思う。


わたしは軽くすいませんでしたの意を示す会釈してでかいコーヒーを飲みきり席を立つ。トレーを下げていると飲み干したはずのコーヒーがまだ残っていたことに気がついた。横にも人がいて下げものをしている状況で、その場で飲むのはためらわれ、やむなく飲みかけの飲み物を捨てる場所に流した。40円分くらいだ、とわたしは思う。うどんで一食食べられた。花粉症の漢方はひと瓶5000円するがこれがないと春を乗り切れない。家まで歩いて帰る途中に小説の案を思いついた。母はわたしの小説が書きあがったかどうかも気にしていた。まだ書きあがっていない、と言えなくて、書けたけどいま書き直したい部分が見つかってリライト中なのだ、と説明した。うそばっかりだ。家にあるきつねカップうどんを食べ終えたらもうきつねカップうどんは買わないことにする。


つぎはひなちゃん!