4)大谷石と左官のビル | 木の家散歩

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木の家の設計監理経験豊かな建築家・山中文彦と木材産地、職人技術者のネットワークにより、夢の木の家を造る「木の家づくりネットワーク」のブログです。自然素材を活用し、家族と環境に優しい、本物の木の家をCM型施工管理システムによるリーズナブルコストで実現します。

小用にて京橋まで行きました。

中高層ビルが林立する表通りから一歩中に入ると
5、6階建てのビルが隙間無く立ち並んでいます。

その中に、丁度角地に落ち着いた表情の3階建ての
ビルが異彩を放っていました。


1階と角の部分を大谷石を貼り、2、3階の外壁は黒色の
モルタルで塗られています。

丁度雨上がりということもあって、大谷石の一枚一枚が
異なる表情を作り出し、モザイク状に味を出して
フランスの石張りの街並みをイメージさせます。


窓周りは黒色のモルタルで仕上げられ、亀甲状に
細かい割れが見れるものの、大谷石との対照で
引き締まったコントラストを演出しています。

シンプルでありながら、綺麗なプロポーションと
リズム感を感じます。

窓は縦長の黒色スチール製の上げ下げ窓で
室内側の障子とのコントラストが際立ち
壁の面より引き込んであるため、陰影がはっきりします。

また、ガラス面に当った雨が下に流れて壁面を汚さないように
窓の下端には水切りがありますが、普通の金属ではなく
左官モルタルで作られているようです。

その中心部には小さな溝が付いていますが、恐らく
水切りの上の水が微妙な勾配で中央に集められ
その溝から落ちるようにしてあるのではないかと
想像しますが、分かりません。


一枚ずつ切り出された大谷石の表面はのこぎりの刃の跡が
細かい間隔で小さな凹凸上に残り、それが微妙な表情を
見せています。

石自体も表情があり、多少の排気ガスの汚れなどには
負けない存在感があります。


角の出隅部分は流石にかけている部分がありますが
欠けても中も大谷石ですから、一つの造形にも見えます。

なぜか、そこに小さなテントウ虫が休んでいるのも
石ならではの、都会の中の自然を感じます。


この建築は東洋古美術の老舗中の老舗である「繭山龍泉堂」の
社屋で、1960年の竣工です。

ホームページもありますので概要を確認できますが
建築の設計、施工のことは記述がありません。

フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル内にもジェリー店を
構えたとのことで、大谷石もそのイメージから受け継いだ
のかもしれません。

基本的には、外装のほとんどを職人技と自然素材を活かして
が造っているからこそ、モダンな設計でありながらも
どことなく哀愁感が漂います。

その表情は、春の雨に冬の渇きを癒しているようでした。