こんにちは。きのひです。
「マジカルヒプノティスト スプーンはなぜ曲がるのか?」 保江邦夫 × Birdie を読みました。
令和三年一月三十日 初版発行
「理論物理学者が稀代のスプーン曲げ師に科学で挑む」
「理論物理学者が科学の視点で徹底的に分析し、たどり着いた人類の新境地とは」
保江邦夫(やすえ くにお)氏の専門は理論物理学・量子力学・脳科学。
ノートルダム清心女子大学名誉教授です。
Birdie(バーディー)氏は幼少より超常現象に興味を持ち、20代の時に京都の催眠術師に師事。
奇術を取り入れた催眠術誘導の新しい形を開発した功績は大きく、スプーン曲げと催眠の腕前は日本で屈指のレベルと言われています。
ところで「理論物理学」は物理学の中でも理論が優先した学問、ということなんでしょうか。
逆に物理の「実践」は想像しにくいんですが・・
金沢大学素粒子・宇宙・理論物理研究室のホームページに「研究ってどういうもの?」がありました。
「現在の物理学の研究では、物理学は大雑把に実験物理学と理論物理学2つに分類されます」
研究は一言でいうなれば「新しいことを見つける、あるいは生み出す」こと。
簡単に言えば、実験しながら物理の研究をする人たちと理論的に物理の研究をする人たちで、それぞれ「実験屋さん」「理論屋さん」なんて呼ばれたりもします。
「私たちの研究室で行っている研究のキーワードを挙げると、宇宙の始まり、インフレーション、ダークマター、大統一理論、対称性の破れ、等々」
「ちょっと知っている人なら興味をそそられるようなかっこいいものが多いですが、普段やっている作業は地味なものです」
基本的には論文を読みつつ、計算するという作業。
毎日発表されるたくさんの新しい論文の中から自分の興味のあるトピックを見つけ、自分なりの切り口で何か新しい法則性や発見がないか考えます。
そのために過去の論文も合わせてたくさん読み進めていくことになる。
「読む、と言っても本を読むように読むのではなく、片手にペンを持ちながら、あるいはコンピュータを使いながら、論文の式や計算を追っていくという作業です」
物理学の基本的な考え方は「基礎となる方程式から出発して、そこから多様な物理現象を説明する」というもの。
なので「覚えるものは基本的な法則を記述する方程式だけで、あとは論理と計算を間違えなければ正しい答えが出てくるようになっています」
この本で「スプーン曲げを科学する」というところがある。
「鉄やステンレスでできたスプーンなどが、グニャグニャ曲がるというのは、物理学的にはどういうことと思われますか?」とBirdie 氏。
「湯川秀樹先生の素領域理論という、空間の超微細構造についての理論に照らし合わせて考えれば納得できます」と保江氏。
物質の分子構造の並びを変化させるのではなく、背後にある空間の超微細構造そのものを変化させて、結果として物質が曲がってしまう。
金属は、量子が同じ方向を向いたら曲がるという性質があるから、そのイメージを量子的に伝えているのではないか。
普通なら、曲がるというより折れてしまう。折れる前にも、クラックという若干のヒビも入るはずです。
「クラックなしでこうした加工ができるという、何らかの物理的な方法を論文として発表したら、世界的にも驚異の目で見られると思いますよ」と保江氏。
それだけ、現在の技術ではその加工は難しい。
「鉄板を、プレス機械で細かく変形させたとしても、ヒビが入ってもろくなり、折れてしまうからこうした造作はできない」
「最初から3D プリンターで作り始めるか、溶かしたものを鋳型(いがた)に入れるしかないでしょうね」
スプーン曲げを見てこの発想。
すごいです。