こんにちは。きのひです。

「星降(ほしふり)プラネタリウム」 美奈川 護 著 を読みました。

平成30年4月25日 初版発行











施設運営部プラネタリウム事業課天文係。

それは、5月上旬に新入社員研修を終えた渡久地(とぐち)昴(すばる)が告げられた配属先でした。










城亜(じょうあ)コーポレーションが運営するプラネタリウム。

コズミックホール渋谷は、駅から徒歩十二分というお世辞にも良いとは言えない立地です。











レンガ調のビルは古びた外観で、屋上から突き出したドームが角ばったビルの中で妙に目立つ。

ガラス張りの正面入口を覗(のぞ)き込んでみました。












すると、裏手から箒(ほうき)を手にした白髪の男性が歩いて来るのが見えた。

「おお!君ですね、本日付で配属された新入社員は」











「ようこそ、コズミックホール渋谷へ。ここの館長の賀陽晋太郎(かようしんたろう)です」

「昼礼で挨拶した後、簡単な研修をしましょう」












二十人ほどのスタッフは微笑ましいものを見るような視線で新入社員を迎えてくれた。

事務室で一番歳の近いのは、五年前に新入社員として配属された金原(かねはら)ひかりでした。











「どーも、金原ひかりですう」

だらしない体勢で椅子に座っている、派手な若い女性。











おそらくカラーコンタクトだろうが、ヘーゼルの瞳(ひとみ)の上に人工的な睫毛(まつげ)が乗っかっている。

「渡久地昴です。こちらに配属されました。よろしくお願いします」











「へー。じゃあ、すばるんって呼ぶわ。よろしく、すばるん」

勝手に渾名(あだな)を付けられるが、無論のこと否定することもできない。











案内してくれていた先輩が、職員用扉を開けた所で小声と共に後方を示しました。

「・・・言っとくけど金原、ああ見えて赤い門がある国立大学の理学部天文学科生だったからな。中退したらしいが」











思わず、施設の方を振り返る。

「なんというか・・・人は見かけによりませんね」











昴は経済学部出身で、天文学の知識も工学の知識もありません。

早番で十七時に仕事が終わったのでレファレンスコーナーで天体雑誌をみていた。











「おっ、昨今の新入社員は定時になるとすぐ帰るって聞いてたけど、こんな時間まで残業?お菓子食べる?」

事務室に戻ると、素(す)っ頓狂(とんきょう)な声と共にチョコレート菓子が差し出されました。











原色の赤地に白い水玉模様のワンピースという、年齢的には厳しい格好の金原だった。

「勤怠は十七時で切りましたんで・・・個人的に、資料を見てたんです」











「ふーん。じゃあ、勉強熱心なすばるんにはコレをあげるよん」

さしだされた本の表紙は「たのしい星座ずかん」











めくってみると、全ての漢字にふりがなが振ってあります。

「・・・これ、子供向けですよね?」











「なに偉そうなこと言ってんの」

「じゃあすばるん、星座って全部で幾つあるか知ってる?」











そう問われて言葉を詰まらせる。

「たのしい星座ずかん」はありがたく頂戴(ちょうだい)し、目次を眺めながら呟きます。











「星座の数は、全部で八十八個・・・はえ座なんてあるんですね」















国立天文台 NAOJ さんの広報ブログ2022年8月9日に「88星座と国際天文学連合」がありました。

「現在の『星座』は、名称、略号、星座の境界が、国際天文学連合( IAU )によって決められていてその数は88あります」











星どうしを結んでできる形、北斗七星や夏の大三角等のアステリズムとは区別される。

「『星座』の決め方には、20世紀初めまで世界共通のルールがなく、その数も名前も空での範囲も、時代や人によりまちまちだったのです」












星座についてのまとまった記載は、アレクサンドリアの学者プトレマイオスが紀元前150年頃にまとめた「アルマゲスト」に見られる。

これには、黄道に沿った12の星座をはじめとする48の星座が記されています。












中世のヨーロッパ諸国に伝わったプトレマイオスの48星座は、大航海時代以降に大きな変化を迎えた。

南半球へ進出した航海者や、天文学者たちが、次々と新しい星座を考案するようになったのです。












やがては天文学者の経済的後援者である国王や貴族にちなんだ小さな星座まで加えられるようになった。

この星座の新設ブームによって、既存の星座と同じ位置に新たな星座が重ねられ、夜空の星はいくつもの星座に属するという大混乱がもたらされ、それが19世紀初め頃まで続きました。











1919年、世界中の天文学者から成る国際的組織、国際天文学連合( IAU )が発足した。

1922年の第1回 IAU 総会では、整理された88の星座名と略号についての合意がなされました。












1925年の第2回総会では星座の境界線が提案され、それが1928年の第3回総会で採択された。

「こうして IAU によって、プトレマイオスの48星座に、後世に考案された南天を中心とした星座を加えた88の星座が決められたのです」












星座の境界は赤経・赤緯の線に沿う直線で区切られ、恒星は必ずどれか一つの星座に重複なく属することになった。

そして「新たに発見された天体にも、不便なく星座に基づく命名ができるようになりました」












知らなかったことばかり。

私にも「たのしい星座ずかん」が必要です。