こんにちは。きのひです。

「夏越(なご)しの夜」 千野 隆司 著 を読みました。

2010年8月18日 第一刷発行

2010年9月8日 第二刷発行 











南町奉行所定町廻り同心だった菊薗(きくぞの)平次郎は隠居し、蕎麦売りを始めました。

出汁(だし)に拘り、界隈では知られる評判の屋台店となった。











暮れ六つ(午後六時頃)の鐘が鳴って、まだ四半刻(しはんとき)(約三十分)もたたない刻限でした。

入間川に架けられている崩橋にやってきた。











海に近い場所なので、このあたりにやって来ると潮のにおいが濃くなります。

「か、かけ蕎麦を一杯」












いきなり、汗と垢(あか)の染みたにおいが鼻を衝(つ)きました。

顔中髭(ひげ)だらけで、頭は蓬髪(ほうはつ)である。











襤褸雑巾(ぼろぞうきん)を纏(まと)ったとしか思えない男が、店の前に突っ立っていました。

ぬっと差し出した掌(てのひら)の上に、銭が載っている。












「へい。毎度」

平次郎はそう言って、生暖かい汗ばんだ銭を受け取りました。












顔中を覆う無精ひげで、どのような顔をしているのかよく判別がつかない。

物貰(ものもら)いをしている男でいかにものろい動作、はっきり口も利けない。




近隣の人たちは丑(うし)と呼んでいました。












「へい。お待ち」

出来上がったかけ蕎麦を差し出す。











丑はそれを奪うように受け取ると、いかにも愛(いと)おしそうに啜り上げました。

一気には飲み込まず、よく噛(か)み、汁を味わう。




時間をかけて一杯の蕎麦を食い終えた。












「旨(うま)かったかね」

丼(どんぶり)を返して寄越(よこ)したとき、平次郎は声をかけました。











「へ、へえ」 丑はくぐもった声で言い、何度も頭を縦に振った。

「どこが旨かったのだ」











「そ、それは・・・。こ、これは、み、味醂(みりん)を使っているようで・・・」

怯(おび)えた声でそう言った。












「ほう。味醂を使っていることが分かるのか」

そう問いかけると、丑はこっくりとした。




「下総流山(しもうさながれやま)の、天晴(あっぱれ)味醂」
















そういえば「みりん」って「本みりん」と「みりん風」とありますよね。

じつはだいぶ違ってるんでしょうか。











「日の出みりんコラム」2022.9.29 に「本みりんとそのほかのみりんってどう違うの?違いと使い分けを紹介」がありました。

みりん(みりん類全般)は主に3種類に分けられます。












それは本みりん、みりん風調味料、みりんタイプ調味料(発酵調味料)

原料もアルコール分も違います。












本みりんは米、米こうじ、焼酎(もしくは醸造アルコール)を糖化、熟成して作られる。

コクとまろやかな甘み、芳醇な香りがありアルコール分は14%前後。











みりん風調味料は、水あめ(糖類)、米・米こうじの醸造調味料、酸味料などをバランスよくブレンドした調味料。

アルコール分は1%未満で酒税がかからないため、本みりんよりも安価で購入できる。











みりんタイプ調味料(発酵調味料)は水あめ(糖類)、米・米こうじの醸造調味料、食塩、アルコールなどを原料とした調味料。

本みりんやみりん風調味料と大きく異なるのは、塩分を含んでいること。



塩を加えていることから酒税の対象にはならず、本みりんよりも安価で購入できます。

アルコール分は10%前後。












「みりんの使い分け」についても紹介されています。

「アルコールの効果が欲しいときは『本みりん』と『みりんタイプ調味料(発酵調味料)』」











「アルコールの効果には、食材に味を染みこみやすくする効果、アルコールの蒸発時に食材の臭みを軽減させる効果、煮崩れを防止する効果が期待できます」

ただし、みりんタイプ調味料には塩分が含まれているので味を確認しながら調整することをおすすめします。











「そのまま使いたいときは『みりん風調味料』」

アルコールをほとんど含んでいないため加熱によってアルコールを飛ばさずにそのまま使用できる。











「刺身の漬けや和え物を作るとき、めんつゆやドレッシングを作りたいときなど、そのまま使用したいときに便利です」

また、みりん風調味料は、水あめなどの糖類が多く含まれるため、まろやかな甘みを感じられる。




「甘みをより引き出したいときやてり・つやを出したいときにもおすすめです」












読んでいて作り手さんの熱い想いを感じました。

なんとなく、でぼんやり選んでしまっていたこと・・・反省!です。