こんにちは。きのひです。
「よって件のごとし」 宮部 みゆき 著 を読みました。
2022年7月27日 初版発行
江戸は神田三島町(かんだみしまちょう)にある袋物屋の三島屋(みしまや)は、黒白(こくびゃく)の間という客間に人を招き、いっぷう変わった百物語をしています。
語り手が一人に、聞き手も一人。語られる話は一つだけ。
今日の語り手は栗の皮といい勝負なほどにこっくりと日焼けしています。
そのせいで肌は痛んで目元や口元に縮緬皺(ちりめんじわ)がいっぱいだ。
外見から歳の見当をつけにくい語り手だが、顔が明るいし、挨拶の声音も元気です。
今はぱっちりした目を瞠(みは)って、黒白の間のなかを珍しそうに見回している。
三十路(みそじ)よりも手前だろう。なかなか愛らしい女(ひと)です。
名前は「とび」
とびのお母さんは産み月に入るとずっと飛び魚の羽根を帯のあいだに挟んでいました。
「そうすると、安産になるからね」
「だから、おらの名前もとび。おとびとか、とンびとか呼ばれてる」
とびのお兄さんは粂川(くめがわ)の渡し守でした。
とびはその手伝いをしていた。
「大したことはしてねえけど」
客の乗り降りに手を貸したり、荷物を載せたり降ろしたり、道具を手入れしたり、待合場と桟橋まわりを掃除したり。
粂川の広々とした河口から南側にかけての海縁(うみべり)には、海苔の養殖で潤(うるお)っている村が三つあります。
なかでもいちばん大きいのは卯辰(うたつ)村だ。
「うだつを上げる」の「うだつ」に「卯辰」の干支の字をあてはめた。
めでたい名前のこの村には、養殖の筏主だけではなく、主立った海苔問屋や仲卸商も集まっています。
「うだつを上げる」いまは「うだつが上がらない」の方で使われているような。
この言葉の由来ってあるんでしょうか。
「トリスミ集成材株式会社 とりすみコラム」さんに「『うだつがあがらない』語源、ご存じですか?」という記事が。
それによると語源は二つあります。
梁の上に立てて棟木を支える短い柱を「うだつ」という。
この「うだつ」が棟木におさえられているように見えることから「頭が上がらない(出世できない)」との説が一つ目です。
商家などで隣の家との境に設ける防火壁のことを「うだつ」という。
その「うだつ」を高く上げることを繁栄のしるしとしたことからというのが二つ目の説です。
うだつとは「卯建」「宇立」という漢字があてられる。
もともとは、隣家との延焼防止のために建てられた防火壁のことです。
昔は町屋が隣り合って連続して建てられている場合に、隣家からの火事が燃え移るのを防ぐために造られていた。
江戸時代中期頃になると、装飾的な意味合いが置かれるようになりました。
うだつを上げるためにはそれなりに費用が必要だった。
そのことから「生活や地位が向上しない」「状態が今ひとつよくない」という「うだつが上がらない」の語源になったと言われています。
自己の財力を誇示するための手段として、商家の屋根上には競って立派なうだつが上げられたそうです。
瓦屋根の装飾は、富の象徴でもあった。
一段高くなった屋根部分が「うだつ」です。
現代でも「うだつ」の上がる街並みが残っているところがある。
代表的なところでいうと岐阜県美濃市と徳島県美馬市にその町並みを見ることができます。
「日本語の語源には、いろんな想いや意味が込められています」
「その語源を元に、日本の歴史を振り返ってみるのも、大事なことなのではないかなと思います」