こんにちは。きのひです。

「猫でござる(一)」 柏田 道夫 著 を読みました。

2017年9月17日 第1刷発行











元禄の時代、かれこれ百三十年ほども前のこと。

その頃、吉原の花魁(おいらん)は太夫と呼ばれていました。 











大見世三浦屋(みうらや)の薄雲太夫(うすぐもだゆう)は、一、二を争うほどの遊女。

薄雲が飼っていたのは玉という三毛猫です。











薄雲と玉は一時(いっとき)も離れないほどに仲がよかった。

花魁道中の時も、禿(かむろ)に抱かせて一緒に歩いたし、座敷にも連れていきました。











あんまりかわいがるもので「薄雲はあの猫に取り憑(つ)かれている」なんぞという陰口(かげぐち)まで叩かれる始末。

ある時、薄雲が厠(かわや)に行こうとするのに、玉が足もとにまとわりついて離れようとしません。











かねてより玉を嫌っていた三浦屋の主が、無理に引き離そうとしたが、爪を立てて暴れた。

怒った主は脇差(わきざ)しを抜いて斬りつけました。











すると、玉の首と身体が真っ二つに分かれた。

「飛んでいった首は厠に転がり込んで、そこに潜(ひそ)んでいたでっけえ蛇の首に喰いついて退治した」











薄雲は玉のおかげて命拾いをしたってんで、懇(ねんご)ろに弔(とむら)って、それだけでは済まずに、高価な伽羅(きゃら)で玉の姿を彫りました。















伽羅は樹木の名前でしたでしょうか。

大谷大学さんの記事に「伽羅(きゃら)」佐々木令信(ささきれいしん)教授(平安貴族の世界・日本仏教史学)がありました。












「伽羅は、沈香の香木の芯から精製する、樹脂分の多い、良質の香である」

香木の意のサンスクリット語 tagara の音写「多伽羅」の略とする説と、黒沈香を意味する kalaguru の音略とする二つの説があります。











インドでは、仏を供養する荘厳のために香を焚いたり、身体に香粉を塗ったりし、また薬剤としても用いられた。

「出家者の戒律を定めた『四分律』にも、身体に塗る薬剤の一つとして伽羅がみえている」












江戸時代になると日常的な言葉の中に「伽羅」がはいりこんできます。

いいもの、すてきなものの形容として使われ「伽羅の春」はめでたい新春をあらわした。




月とすっぽんのことを「伽羅と薩摩芋」とか「伽羅と大食」といいました。












「現在、伽羅という言葉を使って誰もが知っているものといえば『伽羅蕗(きゃらぶき)』ぐらいだろうか」

蕗を伽羅色(濃い茶色)に煮たものであることからそうよばれます。




「それにしても、私たちの日常から『伽羅』という言葉は、ほとんど消えていってしまった」












香源さんにも「香木って何?白檀・沈香・伽羅について詳しく解説!」というコラムが。

香木とはその名の通り「香りのする木」のことで「白檀」「沈香」「伽羅」のことを指します。











日本書紀にも香木の記述があるそうです。

「推古3年(595年)に淡路島に香木(沈香)が流れ着いた。島民がかまどに焚いたところすごく良い香りがしたので、かまどから外し朝廷へ献上した」












伽羅はベトナムの一部でのみ産出される香木で「香木の王様」ともいわれる希少な香木です。

謎多き香木でもあり、沈香の一種とする説もあれば沈香とは全くの別物であるという説もある。











一説では「神様が作った香りで人間には創りだせない」と言われることもあります。

その希少性から現在では1gあたり50,000円ほどになっており「金と比べても劇的に価格が高沸しております」










田中貴金属工業さんによると最近1ヶ月くらいで高かったのは2023年12月4日で店頭小売価格(税込)1gあたり10,928円でした。

単純にその5倍・・いや、これからもっとあがっていくんでしょうね。










どんな香りかかいでみたい。

でも生涯無理な気がします。