こんにちは。きのひです。
「人は死なない」 矢作直樹 著 を読みました。
2011年9月1日 初版第1刷発行
2011年9月21日 初版第3刷発行
「ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索」
著者は東京大学大学院医学系研究科・医学部救急医学分野教授、医学部附属病院救急部・集中治療部部長です。
昭和56年金沢大学医学部を卒業した著者。
大学在学中は登山が生活の一部といっても過言ではありませんでした。
生活の優先順位は、一に登山およびそのためのトレーニング(金沢から10キロほど南の倉ヶ岳という小さな山での岩登りのトレーニングを含めると年間200日ほど行っていた)
二に生活費を稼ぐためのアルバイト、そして最後が学業。
「身体能力に関して、走る、跳ぶ、泳ぐ、持ち上げる、という運動についてはどれをとっても人間は動物に勝てません」
短距離走ならチータをはじめ、人間は陸上に生活するほとんどすべての哺乳類にかなわない。
跳ぶ力もインパラはひと跳び10メートルです。
泳ぎだとツキノワグマのように流れの速い津軽海峡を一気に泳ぎ渡る力のある人間はほとんどいない。
それでは人間の運動能力で動物と比較して優れた能力はないのか。
「実は人間の長距離走の能力は、他の哺乳類に勝るのです」
「この長距離走の能力のおかげで原人は効率的に動物を狩ったり、倒れた動物の肉を集めたりすることができた」
「そのためアフリカの草原で優位に立ったといわれています」
「戎崎の科学は一つ」の記事「人類の起源」「人類の持久走力」
2014年11月15日 / 最終更新日時 : 2023年5月3日 戎崎 俊一
「 Lieberman et al (2009) によると、ヒトはパワーや強さでは他の動物に負けるが、持久力、特に有酸素能力に関しては驚くべき能力を持っている」
「この能力は有酸素代謝を必要とする 5 km 以上の持久走で特に顕著である」
ヒトの持久走スピードは 2.3-6.5 m/s の範囲にあります。
「後者は世界記録保持者レベルの運動選手のものであるが、特別な訓練をしないアマチュアでも多くのものが 5 m/s のスピードを維持できる」
人間と同じくらいの体重を持つイヌは速足 (trott) ・全速走 (galopp) 遷移速度は 3.8 m/s です。
「理想的な条件のもとで 7.8 m/s の全速力を 10 - 15 分しか維持できない」
大型の犬は 1 - 2 キロメートルでは人間に走り勝てるが、それ以上の距離では逆に人間がイヌよりも速い。
「ウマは、最大 gallop 速度 7.8 m/s を持ち、10 km 走ではヒトより速い」
しかし、10 - 15 分以上では gallop 速度は劇的に減少します。
「長距離にわたる繰り返し走では、速度は 5.8 m/s になり、1日に約 20 km しか走れない」
それ以上走ると、回復不可能な損傷を筋肉骨格系に受けてしまうのです。
「したがって、人間の持久走能力は極めて印象的である」
ヒトと同程度に長距離を走る哺乳類はいるが、暑い条件下で高体温症にならずに長距離を走ることができません。
「人間の持久走能力は、走行距離においても他の四足走獣に比べて引けを取らない」
発熱は、筋肉収縮の強さと頻度に比例して増加します。
「人間では走るときは歩くときに比べて 10 倍の熱を生産し、チーターは熱の発生で 1 km で疾走をやめなければならないほどである」
ヒトは暑くて乾燥した条件下での疾走時にかなりの放熱を行う手段を発達させているのです。
エクリン汗腺を発達させ、毛皮を持っていない。
他の熱帯の走行獣、ハイエナや狩猟犬は、夜もしくは夜明けか黄昏時にしか長く走れません。
ヒトだけが、昼間の暑いさなかに持久走ができる。
この長距離走の能力を、長時間高負荷運動が要求される「登山」に用いる人間。
それは「最も人間らしくかつ無意味な行為である」と矢作直樹氏はいいます。
仕事というわけでもなく、また誰に強制されるわけでもないのに、当時の著者は「とにかく登らなければ」という思いに捕らわれていた。
「今考えても、なぜそうだったのかわからない」
ただ「余計なことを考えずに無心になれること」
それが著者にとっての登山の大きな魅力でした。