読書記録です。
『凍える島』近藤史恵 創元推理文庫
第4回鮎川哲也賞受賞作で
近藤史恵さんのデビュー作です。
喫茶店〈北斎屋〉の慰安旅行。
行き先は瀬戸内海に浮かぶ孤島。
メンバーは
店主の野坂あやめ(照美)、
バイトの寺島ナツ子(なつこ)
ナツ子の恋人の椋隆之。
常連客の田中幸広(うさぎくん)、
田中の恋人の松島静香、
田中の友人で大学院生の守田充。
そして
矢島俊哉(鳥呼)・奈奈子夫妻。
あやめと矢島は長年不倫関係にある。
1週間の予定で
無人島をのんびり楽しむはずが、
密室状態で奈奈子が殺される!
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好きな作家さんですが、
デビュー作を今さら
やっと読む事ができました。
孤島に集まる8人。
密室殺人に幕を開ける連続殺人、
疑心暗鬼になる一行…
「そして誰もいなくなった」や
「十角館の殺人」を思わせる、
ミステリ好きには
たまらないシチュエーションです。
何作もこのパターンはあるのに、
なぜかいつだってワクワクしてしまう
そして『凍える島』です。
近藤史恵さんの作品には
いくつも傑作があるので
それに比べるとどこかなにかが足りないの
ですが、本作が30年以上前の作品で、
デビュー作だと思うとなかなかの力作です。
まず
なにかどこかが足りないと思う点は、
登場人物の名前が
ふたつ設定されている事の意味づけが
希薄なので、読みづらさが勝ってしまう。
(あやめ→照美)(うさぎくん→田中)など…。
所々のレトロ表記の意味づけも、
ただ読みづらい。
(コオヒイカップ、ジインズ、クレエブなど)
最後に
謎解きの哀切が一度の読書で共感しづらい。
(読み手側である私の読み飛ばし問題かも?)
よって、
初回の感想は「あまり面白くない」。
そこで済ませても
よかったのかも知れませんが、
作品のテーマを把握した上で
もう一度読み直しました。
「あまり面白くない」で終わらせるには
もったいない魅力を感じたからです。
この作品の肝は、
「そして誰もいなくなった」のような
孤島を舞台にしたクローズドサークルの
体を取りながら、この連続殺人事件が
新手の心中物語で
新手の叙述ものだという点です。
読了して、冒頭の「点描…」を読み返すと
ただのクローズドサークルミステリでは
ないと言うことにも気付きます。
以下は内容に触れますので、
知りたくない方は
お読みにならないでくださいね。
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矢島鳥呼と野坂あやめは不倫関係にある。
終わらせたいけれど終わりにできない。
作中で
一緒に海に入ろうとする場面もあります。
単に連続殺人に巻き込まれるより、
一か八か泳いで逃げようと言うので、
なんとなく読み進めてしまうんですね。
(ふたりの胸中を想うと
本当はとても哀しいシーンです)
でもこの孤島の事件が、
連続殺人が目的ではなく、鳥呼の考えた
不倫の果ての心中だと解ると、
読み手の私も
あやめの心理描写を丁寧に把握するので
味わいも作品のカラーも
全く異なってくるのです
非常に身勝手な男の仕組んだ筋書きですが、
熱く凍えた心中物語だとすると
若いあやめの胸中を思うに
哀切のミステリだなぁと
初回の印象ががらりと変わりました。
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叙述ミステリはお好きですか。
横溝正史『夜歩く』を子どもの頃に読んで
心底驚いたことを思い出します。
その時は(叙述ミステリ)という言葉を
知らなかったのです。
後になって、
読んだ後に驚愕する
「語り手を信じるな」という叙述トリック、
犯人側の視点で書かれていると
認識しながら読む叙述ミステリ、
いわゆる「叙述もの」という
ジャンルがある事を知りました。
あ…『夜歩く』は
叙述ミステリだったんだ!と。
私はわりと好きです。


