音楽座ミュージカル

「SUNDAY〜サンデイ」を観劇しました。


◇6/14(金)  ソワレ  草月ホール

1階D列下手







ロビーには綺麗なお花がたくさん。







キャストボードはこちらです。




クリスティ「春にして君を離れ」原作の
オリジナルミュージカルです。


主人公は
完璧な良妻賢母を自負するジョーン。
夫は敏腕弁護士、
長男長女次女はそれぞれ立派に成長して
子育ても終わり、
加えて美貌も保っている中年女性。

ある日、遠く中東バグダッドに暮らす
次女夫婦から体調不良の知らせを受けて
見舞いに行った帰りに
悪天候により交通機関がストップ。
ジョーンは砂漠のレストハウスで
数日退屈な時間ができたことで
完璧な半生を振り返ると
ある疑念が生まれる。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

アガサ・クリスティ
「春にして君を離れ」原作。

昔読んだのですが、
読む人読んだ年齢、経験によって
感想が異なるだろうなぁと
思った記憶があります。

後でちょっと
読み直してみようと思います。


良妻賢母を自負する完璧な私ジョーンが
砂漠の街で女学校時代の旧友と再会します。
首席で美人のかつて憧れの同級生が
(ジョーンの目からみると)
下品で貧相にやさぐれて見えた…
これをきっかけに
恵まれた自分の半生に想いをはせると、
実は私は家族に愛されてはいなかった?
という疑念に囚われる物語です。

とてもシンプルな舞台に
回る床の盆と
奥の大きな太陽にも見えるくり抜き壁、
美しい照明とダンス、そして
音楽座さんならではの
豊かな歌唱が存分に堪能できる作品でした。

主演の高野奈々さんのジョーンが見たくて
チケットを取りました。
押し付けがましくも悪気もない、
非の打ち所のない、 
だからかえって家族は疲弊するショボーン
そんなイギリス人女性を
見事に演じられておりました。

銀行員の妻レスリー役の森彩香さんも
異性の庇護欲をそそる声で
好演されておりました。


音楽座さんの曲って
教科書に載っていた日本唱歌を
思い出すような素朴さがありますよね。
本作は
「私が終わる私がはじまる」という
キャッチコピーがポスターにあります。

私が終わると思っているのは彼女だけで
はじまる私はやっぱり彼女なんだから
人ってそんな簡単に変わらないよ??
なんて身も蓋もない事を
私は思ってしまうので、

「私が終わる私がはじまる…♪」
という歌も
前向きなようないい歌なのですが、
物語を知っていると
彼女の開き直りにも思える
ちょっと皮肉なコピーだなぁと感じる
とても面白い作品でした。





ミュージカル「SUNDAY〜サンデイ」 

とは関係ないのですが、

ネット時代になって
いろんな情報がすぐに知れるって
すごいですよね。
読んだ本も自分の感想だけではなく
多くの方がどんな感想を持ったのかも
知ることができます。

そこで今回「春にして君を離れ」は
こわい作品、哀しい作品だとおっしゃる
感想が多いのだと知りました。

結局、
ジョーンの中で疑念が生まれて
悔恨する物語なのですが
実態というか
真実はわからないのですよね。 

この心理ミステリを読んだ
当時の私は
こわいとも哀しいとも思わずに
「ひとりぼっちってなんだろう?」
と様々考えておりました。

主人公は
「君は永遠にひとりぼっちだ」と
仮に言われたとしても物理的には
決して「ひとりぼっち」ではなく、  
たとえ
愛されてはいなくても
信用されていなくても疎まれていても
恵まれて豊かで家族が存在しているなら
怖くも哀しくもないのでは…と。

野生ではいられない
社会的な生き物の人間にとって
本当の「ひとりぼっち」って
もっと切実におそろしいですよね。
ジョーンの比ではなく。

たとえ他人の誰かから
「ええあの人は良い人ですよ、
みんなに好かれていたと思いますよ」
と言われたとしても、
社会的にどうにも孤独であったなら
身体も記憶もままならなくなった時に
その方が私はおそろしいのですが…。