読書記録です。


「殺人出産」村田沙耶香  講談社文庫





「殺人出産」「トリプル」
「清潔な結婚」「余命」
4作品収められております。


かつて殺人は悪でしかなかった。
今は「産み人」という
殺人出産制度が導入されて
10人産めば「ひとり殺せる」のである。
一方「産み人」という合法以外で
殺人を犯すと、男女共に牢獄で
一生出産を繰り返す「産刑」という
厳しい刑罰が下される。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

私個人的には
そもそも「少子化問題」というのは、

学歴がとかキャリアだとか
経済格差だとか…
田舎とか都会とかインフラ政策とか…
そんな
社会性のある「なにか」ではなく
もはや生き物としての存続命題だなぁ
と感じておりました。

そこでこの「殺人出産」です。
少子化対策としてかなり
合理的システムではあるのです。
10人産めばひとり殺せるよ、という
「殺人欲を認める」!
そこではなくて殺人罪の刑罰が
懲役とか死刑ではなく
一生牢獄で人類のために
出産し続ける「産刑」という
刑罰であるということに対して。
私はその視点の変わりように驚いてびっくり
同時にユーモアも感じました。

作品は「産刑」には触れておらず
「産み人」という人生を選んだ人、
家族が「産み人」になった私、
「産み人」に殺される人、
ナチュラルに「殺人出産制度」に
反対を唱える人、を描いております。

あとの作品は、
3人単位の恋愛や結婚が
流行る世界の「トリプル」、
性生活を伴わない結婚が流行る世界
「清潔な結婚」、
医療の発達で永遠の命を得た人類が
死を選ぶ時、「余命」です。

そして、
もし
人が究極に合理的な人生を手に入れる
世の中になったら…と
興味深い世界に入り
想像が膨らむ読書時間になりました。

どんなに
合理的なシステムが導入されても
「人」は感じて考えて悩んで
やはり選択をして生きていく。

それを「感じる」時も
「わかる」時も
くだす「結論」にも
子ども時代なのか青年期なのか
うんと大人になってからなのか、
一人ひとり
その時期も結論も異なるのだという
今と変わらぬ
普遍性に気づいた次第であります。