「月の岬」を観劇しました。


◇3/1(金)  昼公演  D列上手

東京芸術劇場シアターウエスト





平岡佐和子…谷口あかり
平岡信夫…陣内将
平岡直子…梅田彩佳

大浦幸一…奥田一平
大浦和美…松平春香

清川悟…石田佳央
清川裕子…田野聖子
清川有里…金子琉奈      他


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昭和50年代半ば。長崎県離島。
姉の佐和子と弟で高校教師の信夫。
亡き両親の家で姉弟のふたり暮らし。

弟の信夫の結婚式当日の朝。
黒留袖姿の妹和美が
まだのんびりと朝食をとる、
支度のできていない姉弟を
急かして実家を訪ねてくる。

もう一人、
この家をしげく訪ねてくる男。
清川悟(石田)は
かつて姉の佐和子の恋人で
妻子がありながら
しつこく佐和子に復縁を迫る。

この実家で
信夫の新妻直子(梅田)を迎えて、
弟夫婦と姉、新たな生活が始まる。


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京都出身の私にとっては
かつて
京都の小劇場のシンボルであった
アトリエ劇研で松田正隆さんの作品が
上演されていたのも懐かしくて、
「月の岬」を観てまいりました。


離島で暮らす姉弟。
穏やかで聡明な姉佐和子を中心に
のどかな暮らしに見える景色が、

実はほんの滴下で
ボタンをかけちがえたような
愛憎と哀しい狂気が
静々と手を伸ばしてくる。

そんな
バタフライエフェクトを
目の当たりにする作品です。


作品の中には
はっきりと「なにか」が
提示されるわけではありません。
でも心に残る、好きな戯曲です。


私の主観ではありますが
女性を描く作品だと思っております。

佐和子の視点で
姉の自分と亡き父親と弟信夫。
私と元恋人悟、弟信夫。
姉の私と弟夫婦。

嫁にきた直子の視点で
姉佐和子と妻の私と夫の信夫。


佐和子は
子どもの頃に溺れた記憶があり、
そのエピソードが
驚愕の引き金になっております。

近親相姦を思わせる
きわどいテーマもありながら、
ヒロイン佐和子の清潔感で
余計な詮索なく見られます。

少し亜流な見方をすれば、
弟信夫からの視点で
自分と姉と元恋人の悟。

清川の妻からの視点で
自分たち夫婦と元恋人の佐和子。

女子生徒の視点で
先生と私と同級生。

三角関係がたくさんある作品です笑い泣き


わらべ歌も
佐和子の耳には常に残っていると
いう解釈なのかな、とか
佐和子は哀しい狂気なのか、
それとも
弟への呪縛を
自覚しながら仕掛けているのか…。


でもきっと
人ってそういうものですよね。