名取事務所公演

「509号室  迷宮の設計者」を

観劇しました。



◇2/19(月)  昼公演  

下北沢小劇場B1  D列







山口真司(円)
鬼頭典子(文学座)
松本征樹(俳優座)
森尾舞(名取事務所)
西山聖了(名取事務所)
山田定世(俳優座)
紙谷宥志


南営洞(ナミョンドン)にある
「民主人権記念館」の509号室。
その歴史的建築物のドキュメンタリー
を撮る監督(森尾)が
記念館解説員(鬼頭)に説明を受けながら
過去の治安本部による残虐な蛮行を
振り返る。

独裁政権に抵抗する民主化運動家や
学生(松本)らが拉致され、
治安警察官(山田・紙谷)らに拷問の末
殺害される様子。

この建築物を設計したのは、
輝かしい業績のある巨匠、
建築家キムスグンだと言われているが、
なぜ彼は拷問の迷宮の設計に携わる事に
なったのか。

ドキュメンタリー撮影の2020年、
学生らが拷問の末殺された1986年、
この迷宮が設計された1975年、
一つの部屋509号室で
この3つの情景が交錯しながら
舞台は上演されます。


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現代韓国演劇を
日本人により上演されております。

小さな空間で
黒く暗く赤い恐ろしい時間を
目の当たりにしていた観劇中には
たくさん思いや感想が浮かびましたのに

一歩外に出て、
平和でおだやかで自由な街を歩く帰途。
冬だというのに暖かな、
その風にさらさら崩れ消えたように
忘れてはいけない大切な感想の言葉が
なくなってしまいましたガーン


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沈池娟(シムヂヨン)さんの
プレトークによりますと、
巨匠キム・スグンは
その建物(すべてが拷問に適する設計に
なっている迷宮「南営洞対共分室」)を
自分が設計したとは
生前言っていないそうです。
でも
建築の特徴や残された設計書などの
資料から巨匠デザインのものであろうと。

過去、
人権を踏みにじる負の歴史は
数々ありますが、
建造物の設計者から描くという視点も
作品に奥行きが出ています。

私はナイフを作ったけれど、
使う人が殺人を犯したら
私に責任があるのか。
使い方を間違えた人に
責任があるのでは。
(設計者ではなく、
そこを監禁殺害の場にした治安当局が悪い)

当然そのような見方も想定するからか、
それを取り上げる台詞もありました。

100席に満たない小さな空間で
客席と上演する側が
何を感じて何を伝えようとしたのか、

一列に粛々とお辞儀をする
キャストの皆さまと
拍手する客席の間には、
‹届けました›‹受け取りました›という
この作品に対する暗黙の認識を
感じて、それが救いでありました。