読書記録です。


◇「植物たち」朝倉かすみ  徳間書店






植物図鑑のような表紙。
猥雑さと淫靡すら漂わせる中面、
単色で描かれた画を目の当たりにして
気になる装丁を確認しましたら、

あの朝ドラ「らんまん」のモデル、
高知県立牧野植物園所蔵の
牧野富太郎先生の画だそうですびっくり

植物の生態を人間になぞらえて描く
短編集です。


「にくらしいったらありゃしない」
はコウモリラン。
他の樹木にくっついて生きるらしく、
老女と青年の物語。

「どうしたの?」はホテイアオイ。
根から繁殖してぽってりとした葉が特徴。
自宅2階を住居にしている男性が
家出少女に1階を寝る場所として
提供する話。

「どうもしない」はリトルサムライ。
家出少女からの視点で書かれた
寝る場所を提供してくれた男性の家を
めぐるめぐる少女たちの日々。

「いろんなわたし」
はひなげし。忘却と眠りの象徴。
事故にあった娘は植物状態。
見守る母、緑の心中では
世界中の「わたし」が激励にやってくる。

「村娘をひとり」
シッポゴケ属とテラリウム。
キルギスの誘拐結婚に着目して
自分好みの少女を育ててみたい太一郎。
女性としての自分を嫌悪するがゆえに
少女の女性器を自分の美意識に整えたい
助産師の菊乃。
互いの欲望を叶えるためにふたりが
バレエ少女の誘拐監禁を企てる話。

「乙女の花束」
はコスモス、ひまわり、ほうせんか、
けまんそう、はなきりん。
乙女たちの日常を
スケッチのように切り取った物語。

「趣味は園芸」は、
すずめのかたびら。
就職するでもなく
実家で短期バイトとぶらぶら旅行と
休息をくりかえすだけで過ぎる二十代。
ゆっくり「自分」という生き物を
観察して人生を掌握していく
私小説のような物語。


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各30ページほどの短編集ですが
「村娘をひとり」だけとても長め。
そして
2人の夢のおぞましさ
2人の夢の均衡が崩れた結果の重大さ、
夢を語る会話が軽量なところが
かえって不気味さを増す物語でした。

どの作品も
人間の習性を図鑑のように並べ書いたら、
共感、感動、嫌悪、納得…
あらゆる面白さを体感できるだろうと
生き物としての「自分」も
知りたくなるような小説でした。


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植物に疎いので、
検索して写真を確認しながら読みました。
植物を見ながら、着想した小説を読む、
これがとても楽しい読書になりました。

そして驚きましたのは
「ひなげし」。
ひなげし、虞美人草、コクリコ、
ポピー、アマポーラ、ウニッコ…。
呼び名がたくさんあるのですね。 

知らなくてちょっと恥ずかしい。
だって、
アグネス・チャン「ひなげしの花」。
ずっと今の今まで
小さな白い花をイメージしており…びっくり

「アマポーラ」
子どものころ大好きだったジュリーが 
歌っていて、カクテル飲みながら
愛おしい人を想い出している歌で、
てっきりおしゃれなお酒の名前だと
思っていたら、
それも見当違いではないけれど 
アマポーラの日本名は「ひなげし」びっくり

「コクリコ坂から」という
ジブリ映画があるのは知っていて、
でも見たことはなくて。
ポピーの花咲く坂道が出てくるって 
思っていていい?

そして
「ポピー」は知ってる!
写真のイメージ通り。
でもこれが「ひなげし」。
ひなげしってポピーだったの?
ポピーってひなげしだったの?って
どっちの驚き方でもいいのだけどびっくり

マリメッコのウニッコ柄は知ってる、
でもこれが「ひなげし」びっくり
ひなげしってウニッコ…以下同文。

…。
いったい「ひなげし」を私、
なんだと思ってたかというと
白いなでしこみたいな花だと
思ってたみたいです(笑)。


そして、
たまたまテレビで
アマポーラというお酒が紹介されていて、
夫に「アマポーラってひなげしのことよ」
と早速
「知ってる人」っぽくなってみたり爆笑