「友達」を観劇しました。


*9/8(水)  昼公演 新国立劇場小劇場






今月は
先週の「砂の女」に続き、
また安部公房の名作を観劇です。



内容に触れますので、
知りたくない方は
お読みにならないで下さいね。



*祖母  浅野和之
*父   山崎一
*母   キムラ緑子

*長男  林遣都
*次男  岩男海史
*三男  大窪人衛
*長女  富山えり子
*次女  有村架純
*末娘  伊原六花

*男   鈴木浩介

*婚約者 西尾まり
*弁護士 内藤裕志
*警官  長友郁真
*警官  手塚祐介

*管理人 鷲尾真知子


ある男(鈴木)の一室に、
突然見知らぬ「家族」が訪ねてくる。


彼らは親しげな笑顔と
「一人はさびしいよね…」
「助け合うことはいいことよね…」
「じゃあ多数決で決めようよ…」
「皆で使うからお財布は預かるね…」
と部屋に居座ってしまう。


男が出ていってくれと怒り懇願しても
「家族」は空間を我が物顔で占拠する。


不法侵入だと警察を呼んでも
管理人に一人暮らしの証人を頼んでも、

そもそもノックをして訪ねて
玄関ドアを開けてくれたのは「男」。

穏やかで明るい「家族」の様子に
警察も管理人も事件性なしと
出ていく。


怒り心頭の男の抵抗に
「家族」は正義という名の暴力で
ついには狭い檻に監禁する。

部屋も婚約者も仕事も自由も…
ささやかな一人暮らしの幸せの全てを
見ず知らずの他人に
乗っ取られてしまう恐怖。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「家族」に
イライラさせられるストレスフルな物語。

ただ、
「不条理な世界」と「恐怖」が
要の作品であるにもかかわらず、
緊張感が足りない運びが
非常に気になりました。


ベテランの
浅野さん山崎一さんキムラ緑子さん…
若手からは
林遣都さん有村架純ちゃん六花ちゃん…

かなり豪華なキャストで
特にベテランの芝居はテンポも良く、
各々持ち味がありました。

しかしながら、
台詞が立たない、
台詞が生かされておらず、

おそらく
イライラしながら見ていると
気が付くと恐怖で終わっていた、 
という演出の狙いだったと思われますが

作品の見せ方、焦点の当て方、
気味の悪さ、
全方位に緊張感が足りない結果、


「逆らいさえしなければ
私たちなんてただの世間だったのに…」


この最後の鮮烈な決め台詞が
ぼんやりした印象にしかならず
残念でなりません。


この不条理な世界に戦慄を覚え、
後から後から思考するのは観客である。

この「友達」という戯曲に
いつもそんな期待をしている私には
今回は少し物足りない舞台だったように
思います。


なんか辛口になってしまいましたので
キャストの皆さまを誉めます笑い泣き


山崎さんは
笑顔の気味悪い父親でしたし
やけに明るいキムラ緑子さん、
ズレた祖母の浅野さんは笑いを取り…。

林遣都くんは怖いし、
架純ちゃんはとらえどころない優しさ
なぜ迫るのさの富山さんや
そもそも何しているのか
わかってなさそうな所が良い六花ちゃん。
次男三男も口跡がよく…。

鷲尾さんも
本当にいそうでいない絶妙な管理人さん。

鈴木さんの「男」は
いかにも「どこにでもいる人」という
感じがとても良かったです。