しばらく劇場へは行けそうにないので
自宅観劇です。

今月予定していた桜の園…
大竹さんがおっしゃっていた
満開の桜のセット、見たかったなぁ。
どんなに綺麗なんだろう…。

当たり前のように観劇していた
あの日々はなんだったのでしょう。
明日にも緊急事態宣言へ。
本当に大変なことになりました。



自宅観劇「キネマと恋人」
*2019年 6月 世田谷パブリックシアター




*妻夫木聡(高木高助/間坂寅蔵)
*緒川たまき(森口ハルコ)
*ともさかりえ(ミチル 他)
*三上市朗(森口電二郎)
*佐藤誓(マネージャー 他)
*橋本淳(嵐山進/月ノ輪半次郎)
*尾方宣久(支配人 他)
*村岡希美(脚本家根本 他)         他


1936年   架空の田舎町 離島の梟島。
森口ハルコ(緒川)は島唯一の活動映画館
梟島キネマに通うことが何よりの楽しみ。
カフェの女給の仕事帰りに
頻繁に通っている様子。 
たまに妹のミチル(ともさか)も誘ったり。
キネマ支配人(尾方)はそんなハルコに
恋心を抱き、ポスターを取り置きしたり
タダで映画をみせる事で好意を示している。
(でも二人は既婚者なの)

お気に入りの映画「月ノ輪半次郎捕物帳」
で、ハルコは主演の半次郎(橋本)ではなく
脇役間坂寅蔵役(妻夫木)の高木高助の
大ファンなのです。

ある日、
いつものように映画をみていると
スクリーンから間坂寅蔵が出てきて
「いつもボクをみてくれてるよね」と
ハルコの手をとり、外に出てしまう。

映画の中では寅蔵が行方不明なので
話が進まず、観客は怒りだす。
そして、現実の映画班は
スタッフキャストが次回作のロケに
梟島を訪れる。

そこでも
高木高助がハルコと出会い、恋に落ちる。
人妻ハルコは寅蔵と高助から求婚されて…。
というファンタジーラブコメディです。
架空の港町と架空の方言の効果で
ファンタジー感が更に増していました。



ケラさんが
ウディアレンの「カイロの紫のバラ」の
ような芝居を創りたい!という思いから
完成した「キネマと恋人」。


これは傑作ですね。
笑えて泣けてエンタメ要素満載でした。

たとえばあれですねひらめき電球
エリザベート観てたら、
井上芳雄さんのトートが客席に降りてきて
「ラヴェ~ーールさん♪
   いつも観てくれてるのは
   舞台からわかっていたよ~ラブラブ
(ここは♪エリーーザベート♪今こそ…♪
 な感じで歌い出すの…)
私の手をとり帝劇の外に連れ出す。
そして日比谷公園をお散歩デート。
「もう黄泉の国もハプスブルクの終焉も
どうでもいいんだ!俺は戻らない!
ラヴェルの最後のダンスは俺のものラブラブ
と愛の告白をされる。

所かわって、
ある日の渋谷のBunkamura。
井上芳雄さんが桜の園の芝居に悩んでいる
ときに私と出会う。
「ここの台詞は少ししのぶさんから
   視線を外したらどうかしら…」
「なるほど!
   あなたの芝居センスは最高だ!
   こんなに話の合う人はいない!」

井上トートと現実の井上さんが、
私を取り合うラブという
トンでもファンタジーがキネマと恋人では
繰り広げられてるって事よね。


この作品で好きなシーンは、
ハルコと高助が新作の台本を見ながら
過去の作品をフラッシュバックさせて
二人で演じる所です。
(ここ好きな皆さま、きっと多いですよね)

現実の辛さを唯一忘れられるハルコと
自分の作品を逐一丁寧に観てくれていた
ハルコへの感謝と嬉しさの高助。
ファンと役者が
互いに一番琴線に触れるエピソードで
愛情を覚えるとても巧みなシーンです。

緒川たまきさんのハルコは、
自己評価の低い、
幸せを掴みにくい女性ですが
実はとても聡明で美しい。

私がこの作品が好きなのは、
ファンタジーでありながら、
ハルコの実態と選択とそのラストに
リアリティーがあるところ。

叙情的な世界観でありながら、
流されないほろ苦さの現実に
観た後にもずっと余韻が残りました。