「少女仮面」を観劇しました。

*2/6(木)  14:00  シアタートラム  
                   G列下手

 



*春日野八千代  (若村麻由美)
*貝 (少女)   (木崎ゆりあ)
*老婆 (大西多摩恵)
*腹話術師 (武谷公雄)
*その人形 (森田真和)
*ボーイ主任 (大堀こういち)
*ボーイ1/甘粕大尉 (井澤勇貴)
*ボーイ2/看護婦 (水瀬慧人)
*水飲み男  (田中祐弥)

1970年に岸田國士戯曲賞を受賞した
唐十郎氏の代表作です。

物語は、宝塚に憧れる少女貝(木崎)が
老婆(大西)と共に喫茶店「肉体」を訪れる。
「肉体」のオーナーをしている
伝説の宝塚スター春日野八千代(若村)に
会うために。

この喫茶店「肉体」には、
客の腹話術師と人形、
主任から靴扱いされるボーイたち、
そして
ファンに肉体を奪われたという春日野が
常に「自分の肉体」を乞うている…


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演劇好きでないと
かなりハードルの高い作品ですが、
上演されていると観たくなるのです。
そして
一度は是非観ていただきたい。
って、誰やねん私笑い泣き


アングラ作品ですが、
今回は演出も芝居も柔和で
(シアタートラムで上演されているのだもの
もはや地上だし劇場だし立派だし…)。
今回残念なのは柔和な分、
一層難解度が増しているような気がします。
そして戯曲の良さも今ひとつ伝わらない。

アングラで不条理な作品は
ナンセンスな世界を
濃く味付けした方が絶対に良い!
というのが私の持論です。

でも若村麻由美さんの春日野が期待以上に
黒の燕尾服にスターの証の羽根、
ヘアメイク、出で立ち、
全てピタリとはまって出色の出来でした。

永遠の乙女である宝塚スターは
恋を封印する代わりに
鏡の自分に恋をするという。
しかし、
年老いた春日野は、いつしか自分の肉体が
あの名も知らぬ処女たち(ファン)に
奪われたのだと思い込む。
「嵐が丘」のヒースクリッフを演じながら、
春日野の心は
若い頃、遠征した満州に飛んで行く。
秘密の恋をした満州に。


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美貌が大金を生む女優が、
いつまでも若さや美に固執するのは勿論、
たとえば腹話術師と人形は
どちらが人気者なのかとか、
もっと言えば、
物まねタレントが
物まねされるスターより人気者になり、
(そもそもそのスターは知らないといった
逆転現象もあるわけで)、
昨今のSNSのいいね!や発信は
承認欲求の現れであるとか、
膝にはコンドロイチンやセサミンだとか
黒酢やにんにく卵黄は欠かせません!
冬の女子会はコラーゲン鍋だよね、とか
ほうれい線と目尻にはボトックス打つわ!
とか、
たった今だって、
人はわが身の若さと健康と何者であるか
という情報を欲しているような気がする。
(劇中に「欲しがるのはいつも肉体」
という台詞があるのです)

何が言いたいかというと、
肉体や個人の承認欲求は普遍性があって、
それを50年前の仮面少女で
アングラからすでに発表されていたのだと
いう驚きです。

だって、
「亡霊がいつも欲しがるのは「肉体」」
を主題にしたこの戯曲は本当に鋭くて、
「人は「肉体」の乞食である」なんて
生きていくのにこれ以上に的を射た
端的な言葉を私は知らない。