「ナイスガイinニューヨーク」
                                シアタークリエ

12/8(木)ソワレ。16(金)ソワレ。
そして最後に21日(水)マチネ。

2回見終わったところで感想を綴ります。


物語は1960年代のニューヨーク。

一代で会社を築きあげた一家の御曹子
長男アラン(井上芳雄)はプレイボーイ。
女の子と遊びまわる優雅な独身貴族を
謳歌している。

そこに真面目な弟バディ(間宮祥太朗)が
厳格な両親の元から家出をして、
兄のアパートメントにやってくる。

歓迎する兄アランは、
弟バディに、昼は仕事、夜は羽目を外して
女の子と遊んでエンジョイする生活を
指南すべく、尻込みする弟に女優志願の
ペギー(愛原実花)を紹介する。

その部屋に、
アランの本命の恋人コニー(吉岡里帆)、
母親ミセスベーカー(石野真子)、ペギー、
父親ミスターベーカー(高橋克実)が
次々に現れて、
もうバディ(間宮祥太朗)は大混乱。

ニール・サイモン原作の
笑いたっぷりのホームコメディです。





アラン・ベーカー  (井上芳雄)
バディ・ベーカー  (間宮祥太朗)
コニー・ デイトン (吉岡里帆)
ペギー・ エヴァンス (愛原実花)
ミスター・ベーカー(高橋克実)
ミセス・ベーカー(石野真子)


最初に一言で感想を綴ると、

井上芳雄さんの圧倒的な力量に感心し、
愛原実花さんの抜群のコメディエンヌぶり
は必見の価値があり、

間宮祥太朗さんの予想を超える健闘ぶりは
微笑ましくて、
石野真子さんのローテンポなママが愛らしく、
吉岡里帆さんが拙く華を添え、
高橋克実さんのパパが暴走する楽しい舞台
です。


初回の観劇では、
折角の名作コメディが無駄な笑いを取ろう
とするあまり、テンポが悪くなっている
ように感じたのですが、
見る日や座席の位置でずいぶん印象が
変わります。

2回目は前方の席で、
とても面白かったのです。
(初回は後方上手端)


井上さんは、日本人俳優では珍しく
外国の戯曲に無理なくはまる方で、
キザなプレイボーイのアメリカ青年を
全くの嫌味なくのびのびと演じておられました。

ファンだから贔屓目に見ているのではなく
この作品が鑑賞にたえうる十分なレベルに
なっているのは井上芳雄さんの力量だった
と思います。

キャスト6人の笑いのセンスが異なるのが
面白いととるか、まとまりに欠けるととるか、難しいのですが。

愛原実花さんの吉本新喜劇風の
コメディセンスはとても素晴らしく、
間宮祥太朗さんは同じ吉本風でも
東京吉本芸人寄りの作りでした。

そして関西出身にもかかわらず、
石野真子さんは意外に吉本ではなく
ドリフのコント風味。

吉岡里帆さんにはそこまでの余裕はなく、
高橋克実さんは萩本欽一さん寄り。

笑いの方向性が皆さん違うところを
主演の井上芳雄さんがよく拾っており、
本当に感心しました。

欲をいえば、
芸人のプロとは言えない俳優が演じる
あくまで「演劇」作品なので、
アドリブやアクシデントを楽しむ危険は
あまりおかさない方が私は良かったと
思います。

コメディは本当に匙加減が難しいので、
その時の思いつきで笑いを取ろうとしても
つっこんだり、更にかぶせたりするプロが
いないと成立せず、

お客さまを「笑わせる」つもりが
「笑っていただく」になってしまいます。


アドリブに見える計算しつくされた
コメディを見たかった、その方が
もっとクオリティが高く仕上がったのではないかと。

物語の進行に関係ない「笑い」の部分を
観客に伝えるにはこの劇場が広くて、
それでも十分に伝わるのが、
通路より前方の客席。

後方のお客さまにまで伝えられる技術が
あるのは、井上芳雄さんと愛原実花さん。
そして、間宮祥太朗さん。

後の3人のキャストは少し何がしたいのか
わからなくなる時がありました。

でも作品もキャストの皆さんもお客さまも
劇場全体の雰囲気はとてもあたたかくて、
愛される良い舞台でした。

高橋克実さんは、
毎度捨て身の暴走ぶりで、それは
(一番の年長者なのに笑いに貪欲で偉いと)
誉められることなのか、
(たぶん皆さんは誉めている)

自分さえ面白く見えればいいという
自分勝手な捨て身演技なのか、
(私はこちらに見えました)

少し乱暴な芝居が目立ちましたが、
息子役の井上さんと間宮さんのお二人が
上手に受けていました。

井上さんは、キャリアから出来て当たり前
かもしれませんが、
まだ若い間宮祥太朗さんがパパの暴走演技
に応えるのが素晴らしいです。

薄膜のはったような間宮さんの深い美声に
いつか膜がとれた頃には、
主演もされるのかしら。

とても楽しみな俳優さんです。

あと1回、難しいことは言わないで
たくさん笑って観劇してきますラブラブ