舞台「るつぼ」を観劇しました。
10/12(水)シアターコクーン昼公演です。





原作はアーサーミラーの戯曲「るつぼ」。

実際起こった「セイラムの魔女裁判」の
話です。

知りたくない方は
お読みにならないで下さいね。


物語を簡単に。

マサチューセッツ洲のセイラム。
夜の森で少女たちが、禁じられている
怪しげな降霊術をしているのを目撃した
牧師は思わず咎めるような声かけをする。

少女の一人はショックの余り、
昏睡状態になり、村の大人たちは
少女たちを問い詰めるも、
みんなでダンスをしていただけだと
口をつぐむ。

そのうち、
少女たちのリーダーのアビゲイル(黒木華)が
黒人少女の奴隷が悪魔を呼んだのだと
言い出し、他の少女たちも同意する。

それだけにとどまらず、アビゲイルたちは
村人を次々に魔女だと名指ししはじめ、
少女たちを盲目に信用する役人や判事たちに
よりセイラムでは魔女裁判で死罪にされる
村民だらけになってしまう。

というお話です。


ここでチラシに書かれたコピーですが、

「一夜の過ちが男の運命を狂わせた―」

男とは、主人公ジョン(堤真一)です。

セイラムの魔女騒ぎは、
雇い主ジョンと一夜を共にした
少女アビゲイルがジョンの妻の座を
エリザベスから奪うための狂言なのです。


アビゲイルの悪意により、

ジョンとエリザベス夫妻は、
二人とも魔女として逮捕されます。

ジョンの子を身ごもっているエリザベスは
刑の執行の猶予が与えられ、

ジョンは、
罪を認めて、悪魔に操られていたのだと
証言、署名すれば死罪を免れ、

無実だと言い張るなら夜明けとともに
処刑される選択が突きつけられる。


究極の選択をどうするのか。
ここがたぶんクライマックスです。


堤真一さん、松雪泰子さんが夫婦。
ここに黒木華さんとの三角関係。

この3人のキャストの力業で、
序盤からクライマックス、そして、
幕が降りるまで
「たっぷり演劇をみたなぁ」と
いう気持ちにさせてくれます。


証言はしても署名だけはできない、
これは「自分の名前」だからだ、と
絶叫して宣誓書を破る堤さん。
ここは役者魂の真骨頂でした。

エリザベスの松雪泰子さんは
2幕からの登場で、
初めは発声に不自然さを感じたのですが、

正義のぶれない体温の低そうな
女性像が良かったです。
修道女のように禁欲的な松雪さん。

女性らしいしなやかさや可愛げが足りず、
「常に正しい」という非難しづらい致命的
なエリザベスの欠点をうまく表現されていました。

だから、
ジョンが妻のエリザベスより、
気の迷いとはいえ、幼い顔で誘惑する
アビゲイルの黒木華さんに凋落するのが
とてもよくわかります。

黒木華さんは、一見、
ありきたりな役つくりに思えましたが、
無垢な仮面を被る卑怯な少女で、
男と女で態度や見せる表情を変える
嫌らしさをのびのびと演じていました。


この
少女たちの狂言による無実の魔女騒ぎ。

見ている私は、少女の悪意より
大の大人が信じてしまうことの恐ろしさと
苛立ちで息苦しくなりました。

舞台は、闇と光と伸びる影。
動く絵画を見るような美しさでした。

主要キャストは、
堤真一さん、松雪泰子さん、黒木華さん、
溝端淳平さん、秋本奈緒美さん、
小野武彦さん、他とても豪華でした。


ただ豪華だからか、演出は上品。

冒頭の夜の森のシーンは
もっと禍々しくてもいいし、
魔女裁判の恐ろしさも、裁く側の
理屈と苦悩に偏り過ぎていたし、

もっと裁かれる側の残酷さを
ショッキングに上演しても、
ジョンとエリザベス、アビゲイルは
充分に活きたと思います。