6/28の「エリザベート」
初日の公演に行きました。

この作品の大きな魅力は、
実在した悲劇の皇妃エリザベートの生涯
を描きながら、

実は彼女の側には
影のように守り、傷つけ、誘い、
彼女を愛してやまない死の帝王トートが
いたという設定です。






まず、エリザベートは
10代の少女時代から50代まで
一人の女優さんで演じる所が見所です。
(ラストの黄泉の国でトートに再会する
シーンが果たして何歳の演技なのかも、
見ていて興味深いです。)


主役のエリザベートは
もちろん大切ですが、
それ以上に重要なのは死の帝王トート。

このトートが圧倒的に魅力的でなければ、
いくらこの作品が傑作でも、
何度も足を運ぶに至りません。

今回のエリザベートが好評な理由の1つは
トート役の城田優さん、井上芳雄さんが
非常に素晴らしい事だと思っています。

昨年の公演では、井上さんのトートの

恋した瞬間の煌めき、
生きた女性に愛されたいと犯すタブー、
待つと決めたマントを翻す背中、

冷たい眼差しと口元から紡ぎ出される
黄泉から響く美しい声

情熱と冷酷のバランス

ファンタジックな役柄を見事に体現させた
トートに感動してのこの再演。

初日は客席で見る私がお祭り気分なのか、
昨年に比べるとよくできたアトラクション
にきた気分で終わりました。

まだあと何回か観る機会がありますので、
キャストの感想をお祭り気分で
少し記録します。


エリザベート役の花総まりさんは、
少女時代がとくに素晴らしく可愛らしい。
ベテラン女優さんなのに、
誰より初々しく10代を演じられるのは
本当に貴重です。

お祭り気分、と表現していましたが、
こうして記録し始めると
お祭り気分に見えたのは、
エリザベートとトートだけでした。

フランツとゾフィはお祭り気分では
ありませんでした。

フランツ役の田代万里生さん。
この方のフランツは優しくてキュートで
切なくて、(比べる必要ないのですが)
歴代で一番好きなフランツです。
はまり役です。

私の好きなフランツのシーンは
ラスト近く悪夢の
「エリザベートがいない!わが妻だ!」
と半狂乱でトートと対峙するも
トート一味に立ち入り禁止!みたいに
阻止されるところ。
(ちょっとマニアックですみません)

作品中、
エリザベートとトートの愛と死の駆け引き
に目が行きがちで、三角関係のフランツが
添え物に見えそうな所、
田代さんのフランツは人物造形が魅力的で
存在感あります。

この再演で
キャストに入った涼風真世さん。
昨年からの香寿たつきさんとのWキャスト
ですが、印象も姿の違いも
とてもいいWキャストです。

香寿さんは
国のため公の姿勢を崩さない厳しさで、
でも
どこか隠れた慈悲がある豊かな女性に
見えました。怖いだけではない、
奥深さが香寿さんのゾフィのいい所です。
ヘアメイクも中華っぽい美しさです。
(香寿さんで西太后が見てみたい)

この香寿さんのゾフィが素晴らしいので、
もうシングルキャストでいいのに、
と思っておりましたら。

比べて涼風真世さんはとにかく怖い。
こちらを見ると、
ゾフィに慈悲なんて要らない、
怖い意地悪怖い意地悪怖い怖い怖い、
こうでなくっちゃ!と
思うのです。

今まで初風諄さんのゾフィが
一番怖くて意地悪でおっかないと
思っていましたが、
それに匹敵するくらい美しくて怖い。

美しい涼風真世さんのゾフィには、
もっともっと怖くなってもらいたいです。
(もう隠れた慈悲とか奥深さは要らない)


お祭り気分だった井上芳雄さんのトート。

昨年よりエリザベートに対して
焦燥感が少なく、余裕があるように
見えました。

絶対的な力をもった上で、

どうしようもなく恋に堕ちる大人の男の
焦燥感と誇り高さの狭間が
多分に表現されているはずなのに、

私がお祭り気分なので
感じるまもなく幕が降りました。

メイクさんと研究を重ねられている
役作りの熱心な証のような
初日のトートメイク。

生きているキャストの誰より
井上トートのファンデが血色よく、
また誰より元気に歌ったり踊ったり
笑ったりするので

「エリザベート外伝」
死の帝王トート閣下、
下界で恋したり
変装してイタズラしたり大活躍の巻
みたいな楽しい初日でしたウインク

井上さんからは
命懸けで劇場にきて、とのお言葉おねがい

命懸けまでは無理ですが、
いつもは真面目に
ちゃんと見ているつもり。

来週からはお祭り気分ではなく、
きちんと感動したいと思います。