愛に苦悩するジョルジオ
愛し方を知らないフォスカ
ひとり狂わないクララ

クララ編と違いジョルジオ&フォスカ編は
演じる井上さんとシルビアさんの緻密な演技プランで補完しなければ
「なぜフォスカ?」となります。

そこで
お二人の緻密な演技プラン&「文学として捉えると美しい」の解釈で
ジョルジオ&フォスカに納得しました。

私個人の勝手な見解なんですが、
先に綴りました「文学として捉えると美しい」の記事のとおり
「こういう結末しかありえない物語」と受ける方が、
私はこの舞台の素晴らしさを堪能できたのです。

ジョルジオは軍人だから、恋人が人妻だから、
初めて向けられた無償(?)の愛だから、自分の為に死ねると言われたから、
とか色々あるんですが、これは進行上必要なエッセンスで、

「真実の愛」とは何かを二人の女の間で揺れるジョルジオの苦悩、
(これが正しいテーマなんでしょうが)をむしろ、

「運命を甘受することに苦悩する」井上ジョルジオ

(愛を手に入れる筈ない女が)
「運命を変えるために傷つく事を怖れない」シルビアフォスカ

の物語だと3回目からは観ていました。

もちろん井上さんの甘受しなければならない運命とは「フォスカを選ぶこと」です。

(何故ならフォスカは作品における運命の女だからです。)

楽しみ方としては邪道かも知れませんが、有名なロングラン作品だと結末ありきで楽しむってありますよね。

愛し方を知らないシルビアフォスカの止まらない厚かましさと
戸惑ったり、凍りついたり、愛?呪い?え愛なの!?
の井上ジョルジオの滑稽さ。

フォスカの寝室で、彼女が眠ったら出ていくつもりが
うっかり隣で眠ってしまう井上ジョルジオの急に和らぐ表情。

電車のシーンの途中で平行線だった二人の感情がすーっとシルビアフォスカ側にベクトルを近づける井上ジョルジオの表情。

見ていると、あ、フォスカに向いていくんだなと教えてくれています。

邪道ですが、井上さんが彼の運命を甘受するための緻密な演技プランなんだなと楽しんでいます。





フォスカ役のシルビアさんの気持ち悪いくらいの厚かましさと
それを受ける井上ジョルジオのリアクション演技が秀逸!で、
私は感動の結末に至るまでの見所の一つだと思っています。

フォスカが人目惚れしてしつこくつきまとうあたり、「笑ってはいけない」んでしょうがおかしいんです。

私は常々、井上さんのリアクション演技に注目していました。

私が関西人だからか、井上さんも福岡出身で西日本出身と大きく同じと括ると
吉本新喜劇のエッセンスが身体のどこかに染みているのでは?
と思ってしまうんです。

軍医さんとのシーンやフォスカとのシーン。

挙げればきりがないのですが、
ジョ(面倒だな、代筆かよ)
フォ「愛するフォスカ」
ジョ(えーっ!)

もうこの井上さんのリアクション芸はそのまま吉本に行ってもいいと思う位です。

人の感情が真剣なのに噛み合わない状況を端から見ているのは、「滑稽」と感じていいと思っています。

若いときは私も
そばにいた人との永遠に会えなくなった夜明けに挨拶しなければと鏡で身支度する自分を、
ショックで歩く感覚さえ無いのに、ふと喉の渇きに気づく自分を
軽蔑したり許せなくなったりしましたが、この歳になると人間の喜怒哀楽とは別々にあるのではなく、
愚かで悲しいくらいに一続きなんだと解るんです。

ジョルジオの苦悩する姿に笑うなんて!
と思う方もわかるんですが、
折角なのでもし「滑稽」だと思えば、見所だと楽しんでいいと思っています。

もちろん声出して笑うのは、今回の舞台をではマナー違反なのかも知れませんが、心中では大いに楽しんでいただきたい。

あ、学校団体のお客さまは声出して笑っていいと思いますよ。
女子大生は、
ジョルジオ「一人になりたいときだってあるんです」のシーンで
フォスカがびっくりするくらい迫るので堪らず声出して笑っていました。

でも残念なのは、誰かに言われたのか、客席(私)からの笑いの心中が井上さんに伝わるのか、見るたびに井上さんの真剣なリアクション演技が控え目になっていることです。

シルビアさんにも井上さんにも臆することなく、厚かましく、そして大真面目にリアクション演技をしていただきたいです。

そこで笑いが起こっても
井上さんの赤いパッションを背負ってのソロナンバーの熱唱と
シルビアさんとの寝室での愛を語り合うクライマックスで
きちんと涙腺はゆるみ感動できますから。

熱演を面白いとか滑稽とか、
もしファンのかたに失礼なら申し訳ありませんが、
私もファンなんですよ、本当に。

そして
シルビアさんも井上さんにも主演女優賞&男優賞ものの素晴らしさなんです、この舞台。

井上さんには直接申し上げましたが、ここでも最後に。

井上さん、新しい代表作のご誕生おめでとうございます。