はい、次は古川ルドルフです。

③古川ルドルフ3大過剰問題
(美しすぎる、弱々しすぎる、死ぬ時だけイキイキしすぎる)

今回は、皇太子ルドルフは古川さんと京本さんのダブルキャストでした。
私が見たのは、偶然にも三回とも古川さん。

私の記憶のルドルフ像は、今回トート役だった井上さんのデビュー当時のイメージなので、かなり昔です。

この井上ルドルフの生命力あふれる若者が自殺を選ぶ事の悲劇が記憶にあったので、
古川ルドルフの弱々しい皇太子が
弱いまま自殺する事に、演劇的にどうか、と初回は感じたんですね。


(勝手に解決)

美しすぎる、弱々しすぎる、死ぬ時だけイキイキしすぎる、全てOKです。
もう美しい事が正義になっています。

何故なら、古川ルドルフの「死ぬことが美学」であるという思いが
観客(私)には伝わってきたからです。

本当は、もう少し登場シーンで覇気が欲しいのですが。

古川ルドルフは、とにかく美形です。
イケメンなんてレベルではなく、舞台の上で見ると、
顔がとんでもなく凄みのある美しさなのです。
そして、とても弱々しいという印象です。

2幕の父親フランツ皇帝とのいさかいから登場。
「おはようございます。皇帝陛下。」

ここから、いきなり父子口論ですが、当時の井上ルドルフが
この人(井上さん本人)はもしかして本当に皇族なのか?と思う位の
ロイヤル感を出しながらも、父親に猛然と抗議していたのに対し、
古川ルドルフは、最初から押しが弱く、
ハプスブルクの崩壊を本気で憂いての抗議ではなく、
自分の意思というより革命派の受け売りで、かぶれていると言う印象です。

とにかく付和雷同型の古川ルドルフなのです。

井上ルドルフが若さゆえの正義感、清潔で汚れなき信念で国家を憂い、
父親に物申す皇太子だったとすると、
古川ルドルフは、若さとその立場をつけこまれたゆえの不幸、
革命派につけ入る隙を与える憐れな皇太子という感じです。

美しすぎて、弱々しすぎて、だから憐れで…と思っていると、
井上トートに「死にたいのか?」と背後から迫られた途端に、
息を吹き込まれたかのようにイキイキしてくる古川ルドルフ。

そこから一気に見せてくれます。

舞台に登場したときは、覇気がなく、20分後に死ぬ瞬間に向けて、
イキイキキラキラしていて、「死ぬことが美学」と捉えている古川ルドルフです。

だから、精神的に弱いのに、死ぬときだけは壮絶な覚悟で、
自分から井上トートに唇を重ねにいくのですね。

そんな古川ルドルフ相手に、井上トートも様々な表情を
(同調、憐れみ、ほんの少しの躊躇と後悔、包み込むような優しさ、でも青い血の本能からくる残忍性など)
これでもかと言う位に見せて、古川ルドルフ劇場を盛り上げてくれます。
工夫されているなぁと、ただただ感心します。

昔の井上ルドルフは、かなり生命力溢れる正義感のある皇太子で、
早かれ遅かれ自殺する運命の人には見えませんでした。
(だから、当時はとにかくかわいそうでした。)

完全に四面楚歌になり、母親のエリザベートにも拒絶されて、
絶望しても、それでもまだ生きていたいとの願いも叶わず、
情け容赦なく内野トートに攻撃的に死のキスに襲われる井上ルドルフでした。

こちらは、健気さゆえの悲劇です。

ルドルフ劇場は、いつでも見所満載です。



ルドルフ劇場は、あとダンスシーンが素敵です。
ミュージカルですから、ダンスをしながら歌っていたり、セリフが入るのですが、
このルドルフ劇場の中の「独立運動」のシーンの後半は、歌もセリフも入らず、
オーケストラの音とダンスだけになります。

上手に、井上トート率いるトート集団が客席に迫ってきて、
下手には、古川ルドルフ中心に革命派集団、そのあと井上トートが操って掻き回す感じのシーン。

かなりカッコよくて、私の見所ベストテンに入ります。