帝国劇場エリザベートの感想の続きです。

井上さんのトートにクラクラして、
完全に脳内でエリザベート様になりかわってしまい、
冷静に感想を綴れなかったので、観劇から4日も経ってしまいました。

今回こそ、きちんと観劇の備忘録になるように綴ります。

深呼吸して。落ち着いて。
ロキソニン飲んで、体温下げて…。

東宝版エリザベートの観劇は、2001年梅田コマ劇場と2004年に帝国劇場、
そして今回2015年と3回目です。

リピーターのお客さまが多くて、チケットが中々取れない人気のミュージカルですね。

主要キャストの造型もアンサンブルも音楽も全てが素晴らしいのはもちろんですが、
やはり「死の帝王トート」というキャラクターを絡めて、
悲劇の皇妃エリザベートをミュージカルにしたことが大きな魅力だと思います。

トートは死の帝王でありながら、生きている女性(エリザ)を愛して、
更に単なる事故で死者となり自分の元に来るのではなく、
生きた女性自ら、自分(死)を望んで愛されたい、求められたいという欲望にかられる男なのです。
(まず、この設定が素晴らしい!)

だから、冒頭で高所から落ちて、死の縁にやってきたエリザベートを生の世界に戻します。

このミュージカルの舞台では、トートは全ての人の生死を自由に操る絶対的な存在ですから、
余裕も自信もオーラも有り余るキャラクターで、どの役者さんも演じてきました。

今回の井上さんのトートもそうです。

まず第一声の「天使の歌は悦び~」で、
伸びる美しい歌声が生きている人間ではなく、
この一節だけで、黄泉の国を見事に表現します。

でも生きている女性を愛するタブーを犯した死神の戸惑いや甘美な欲望、
相手自らが自分を求めるまで待つと決めたのに
暴走しそうになる攻撃性で誘惑するトート。

そんな自分の誇りと矛盾した恋心を美しく冷たく細やかに演じる井上さん。

切れ長の冷たいまなざし、息も声も黄泉の国から紡ぎ出るような口元、官能的に動く指先までも美しい。

ルキーニは、「自我に目覚めたエリザベートにトート閣下はご機嫌ななめだよ~」と歌いますが、
井上トートは、自我に目覚め、戦うエリザベートもやはり愛していたと思います。

最後、エリザベートが
「泣いて笑って朽ちて…。でも自分らしく精一杯生きたから、連れていって。
永遠の世界へ」と
ようやく自分の胸に飛び込んできた時の井上トートが新鮮な役作りだったんです。

死者になったエリザベートをすぐに抱き締めないで、
かなり驚き戸惑いそれからやっと優しく手をまわすのです。

あのエリザベートが!?、というより自分の内面に驚き戸惑うトートという印象を受けました。
ここの場面、好きです。



城田さんの評判もよくて、是非見たいのですが、今度はいつ見られるのかな。

オペラグラスを覗かないと表情がしっかり見られない席で一度の観劇ですから、
拙い感想で、しっかり何度もみたらまた違うのかも知れません。




あ、あとルドルフとトートのキスシーンです!
以前は、井上ルドルフ「僕、食べられちゃうの!?」みたいな勢いで、
唇を奪う攻撃性高い内野トートという演出が、
今回ルドルフから、トートにキスをします。
それも静かに長い。

どちらのパターンも悲劇のルドルフであることに変わりありません。

どちらも甲乙つけがたい悲しい演出です。

ルドルフ自らキスすることで、自殺しか道がない覚悟が見えますし、
そのあとの井上トートのなんて優しいこと!

おでこをコツンと合わせて、
「わかった。君はよくやった。」
みたいな二人の沈黙。

エリザベート、トート、フランツ、ルキーニ、主要キャストはもちろんその他まで
それぞれがしっかり舞台で主体性を持ち、
生きていて、どの場面も見応えがあります。
オススメです。




内野さん、井上さん、と好きな俳優さんが揃ってトート役者歴に名を連ねるなんて、
とてもうれしいです!