脳科学者中野信子さんの書籍『科学がつきとめた運のいい人』
私はここのところ、書店に通うことが日課になっています。
思考や潜在意識の勉強を始めてから読書量が増えたと感じていましたが、2024年のテーマを「受け入れる1年」に決めて以降、「本を通してもっといろいろな人の話に耳を傾けたい」と思うようになり、さらに読書に拍車がかかっています。
先日、丸善丸の内本店に立ち寄ると、脳科学者の中野信子さんの本が積み上げられていました。
⚫︎2023年8月31日発売
『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』
この本は、今から約10年前の2013年に単行本として刊行され、2019年に文庫化、そして昨年の夏に改めて新書版が発売されるという、かなりのロング・ベストセラーの本です。
私はこの本については存在も知らなかったのですが、タイトルを見てすぐに興味が湧き、読むことを決めました。一気に最後まで読み切った後、細かくメモを取りながらもう一度最初から読み返したほど、非常に学びの多い本でした。
「運のいい人」の特徴は科学的根拠に基づいて説明できる
この本は、非科学的に思える「運がいい」ということに科学的にアプローチしている本で、脳科学の観点から丁寧に紐解いていくと、運は生まれもったものではなく、「考え方」と「行動パターン」によって変わるということが解説されています。
私がこれまで思考や潜在意識の勉強をしてくる中で、何度も目にしてきた、
・「運がいい」「ついてる」と声に出して言うといい
・夢や目標、ほしい物は紙に書いて貼っておくと実現する
・他人に感謝をするといい
などということが、誰かの経験に基づく話としてではなく、しっかり科学的根拠に基づいて説明されていました。
一見、努力ではどうにもできないと思える「運」に、実は誰でも主体的に関わっていけるのだと、中野さんは本の中で言っています。
運のいい人たちを観察すると見えてくる特定の「考え方」と「行動パターン」
この本の中には、運のいい人たちをよく観察することで見えてくる共通の行動パターン、物事の捉え方・考え方などが、実例と共に科学的実験や根拠に基づいてたくさん紹介されています。
個別の経験則のみで話が展開されているものよりも、信頼できると私は感じました。
少し話がそれますが、令和の虎に出演しているアマソラクリニック院長の細井龍さんが、志願者に「なんでn=1の話を堂々とするのかがまったくわからない」と言ったことがあり、私はこの考えにものすごく共感したことを覚えています。
⚫︎2024年1月17日公開
【FULL】「アカンこの人」虎が感じる理由とは…。光水素カプセルを開発し全国展開したい【平野 剛】[517人目]令和の虎
私が中野さんの本を深く読み込もうと思い、メモを取りながら読み返したほど心が惹かれたのは、この点にあったのではないかと思います。
運のいい人たちは何をしているのか?
この本には、運のいい人たちが具体的に何をしているのかが、36項目にわたって紹介されています。
その中でも、まず「運のいい人になるための絶対条件」として紹介されているのが「今の自分を最大限に活かそうと考えること」です。
脳には「自分でも如何ともし難い生まれつきの個性」があり、これを「運のいい人」になろうとして変える努力をするのはものすごく遠回りなこと。無理に自分を世間の標準に合わせたり、何か新しいことを身につけたりしようとする必要はない。自分だからこそできること、今の自分に与えられているものを最大限に活かすことを考える、これが一番の近道だというのです。
この「自分の特性を変えようとするのではなく活かす」という話は、昨今のマーケティング業界で多くの実績を残している森岡剛さんもおっしゃっていることです。「ナスビはナスビにしかならない。違う人にはなれない。ナスビにキュウリになれとか玉ねぎになれと言っても無理。ナスビは立派なナスビにするしかない」と。
⚫︎2019年4月10日発売
『苦しかったときの話をしようか』
それからもう1つ、私がとても印象に残って「背中を押してもらえた」と感じるほど勇気づけられたのが、「運のいい人は自分を大切に扱う」という話です。
なぜ自分を大切に扱うことが運がよくなることに繋がるのかという例として、心理学の「割れ窓理論」の話が紹介されていました。ピカピカに磨かれた車と汚れていて傷だらけの車があったとき、「どちらかを棒で叩いて」と言われたら、多くの人が傷だらけの車を叩くのではないかと。ある特定の秩序の乱れがあるとそれに同調してしまう、これは物だけでなく人に対しても起こるそうです。
つまり人は、自分を大切にしている人を粗末に扱うことには抵抗を感じるもので、逆に自分で自分を粗末に扱っている人のことは粗末に扱っていいような気がしてくる、というのです。
自分を大切にしていると周囲からも大切にされるようになり、それによって良好な人間関係を築けるようになり、その良好な人間関係こそが運のよさに繋がるということなのです。
他にもたくさんの学びがある話が書かれていた
この本に紹介されている「運のいい人」の科学的特徴36項目は、その1つ1つにとても大きな学びがありました。
いくつか簡単に紹介すると、
・自分の命がこの世に誕生した奇跡的確率に目を向けられる
・勝ちすぎると逆に生き残れないという「勝ち過ぎないことの大切さ」を理解している
・粗野な振る舞いより品のある行動のほうが人の心を動かせると知っている
・人助けは尊い行為であるものの相手に「申し訳ない」という精神的負担を負わせるものであることも忘れていない
・ある日突然「宝くじで3億円が当たったら?」その使い道を即答できる
・報酬を期待しているときの快感は実際に報酬を得たときと同等かそれ以上になると知っている
・自分の幸福の先にある自分以外の人の幸福を考えてそこに焦点を当てることができる
・脳は嘘をシビアに見抜くので心から思っていないことを無理して自分に思い込ませようとしない
といった感じのことです。
これらのことは、私がこれまで思考や潜在意識の勉強をしてくる中で出会った、さまざまな書籍や動画、ワークなどに書かれていた話とも一致しています。
10年も前に刊行されていた本なのに、なぜ私は今の今まで気づかなかったのだろう……とも思いましたが、実はこの本の最後には、こんなことも書かれていました。
以前は、成人になると脳細胞は増えずに減る一方だと考えられていましたが、1998年に大人の脳の中でもシナプス(神経細胞間の接合部)が新しく生まれていることが発見されたそうです。つまり、何歳になっても脳を育てていけるということ。今からでも全然遅くないのだと、最後の最後に再びこの本に背中を押してもらった思いがしました。
いい本に出会えてよかったです。しばらく、書店通いの日課を続けたいと思っています。
次の投稿を楽しみにお待ちいただければと。