正月を迎えて4日目ともなれば、街中もなんとなく普段の顔を取り戻したみたいに見慣れた服と見慣れた風景。

 自動販売機に背中を預けて、ぬるくなった缶コーヒーを飲み干したあと、手持ちぶさたでポケットから携帯電話を取り出した。新しいメールの着信もない。恋人同士や家族連れ、あるいは友人同士でふざけあいながら行き交う人々。
 部屋にいても一人だけど、こうして繁華街に出てくると、人だけは沢山いるのによけいに寂しい気持ちになる。こんな事なら部屋でテレビでも眺めていたほうがましだったんじゃないか。いや、そうやってテレビを見ているのにうんざりしたから出てきたのか。大学の親しい友人達はみんな実家へ戻ったりスキー旅行に行ったりと、この時期の学生街は逆に人口密度が極端に減る。
 最後の受信メールは気になってるちょっと可愛いサークルの後輩から。
"今年はお世話になりました。良い年をお迎えください"
まぁ当たり障りなく,いやがおうにも距離感を感じさせてくれる内容だ。特別な関係はないけどサークルでの飲み会なんかでは普通に仲良く会話も弾む。そう、一歩踏み出す機会を俺が逃しているだけなのだ。同じゼミの富田が言ってたっけ。

「機会がない?チャンスがないとかってお前、偶然に女の子が落とした学生証を拾って届けてあげたら、実は彼女は自分のことを片思いしてましたなんて話は漫画やアニメの中にしかねぇんだよ。」
「そうなんだよなぁ。実際の所さ、ハプニングっていうの?そういうのって起こんないよなぁ。」
「ハプニングってのは、起こるもんじゃなくて起こすもんなの。まぁハプニング起こすより、普通にただ電話すりゃいいんじゃね?」

 そうだよな。待ってたって何かが向こうからやってきてくれる訳じゃない。

 彼女の番号をアドレス帳から探してコールした。

「先輩、あけおめです!」
「おう、あけおめ」
「去年はいろいろお世話になりました。今年ももかわいがってやってくださいね。」
「うん、あぁもちろん」

うぅ、何か話が進まねぇ。もうちょっと考えてから電話すりゃ良かった。

「先輩から電話かかってきて、びっくりした。でもちょい嬉しいかな。えへ。」
「えっと、今、何してる?」
「昨日、実家から寮に戻ってきたから退屈で、街ブラしてます」
「え、マジ?実はさぁ、俺も・・・」

 そう、待ってたって何もはじまらないんだよな。俺は携帯をポケットにつっこんで、今決めた待ち合わせ場所に向かってダッシュした。



<おわり>





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