中学に入った頃、新しい友人が出来た。
A君は、スポーツ少年というよりは、もやしっ子だった。私は、もやしっ子じゃないがスポーツも大して出来る訳でもなく、小学校からやっていたのでブラスバンド部に所属していたけれど、それほど熱心にラッパを吹いていた訳でもない。
A君は貧弱な体格をしていたが、良く勉強の出来る子だった。ちなみに、部活は軟式テニス部(笑)家庭もちょっとプチブル系で、なんで団地住まいの貧困層側の私と友人になったんだろうと思うくらいだ。
郊外にあった私が通っていた学校は、団地と農村部の子供達のどちらかと言えば貧しいグループと、郊外に大きな一戸建て住宅を購入して移り住んできた富裕層の子供達のグループに明らかに別れているという具合だった。一般には通常、富裕層と貧困層の子供は一緒に遊ばない。貧困層側の子供は、金や学力の上でなんとはなしに水をあけられてしまっている上に、富裕層の奴らに媚びて一緒に遊ぶくらいなら、そいつらを張り倒してやるぞぐらいの静かな闘志を燃やしているものだって少なくなかった(笑)
だが、とにかくA君と私は思いの外気があって、良く一緒に遊んだ。
遊ぶと言っても、それはプチブル系のお勉強が出来る子なので、遊びに内容だって今まで私が考えたこともないような遊びが多かった。
なんせ、化石を堀りに行くとか、いろんな試薬を持っていってそこらじゅうの水の水質検査をするだとか、捕まえたばかりの虫を標本にするだとか。遊びがすでに学術的である(笑)
同じようなシチュエーションの中だった、今までの私の友人達との遊びなら、山に入ってリンゴをかっぱらってくるだとか、カエルを捕まえて博打ををしかけて破裂させるだとか、竹を切り出してきて手製のアーチェリーを作るだとか、気に向かってナイフ投げの練習をするだとかね・・・学術性のかけらもなかった訳だから。
そういう、訳で、私はA君と遊ぶようになって随分といろんな面白い事を教えてもらった。科学が面白いという印象はこの頃に培われたものなんじゃないかと思う。
そんな私たちの夏休みの遊びのひとつが天体観測だった。
A君は赤道儀望遠鏡と天文図鑑とカメラを持っていて、夜の9時だとか10時だとかに集合して自転車で天体観測をしにちかくのはげ山に登ったりしていた。カメラだって、ちゃんとした一眼レフである。
天文マガジンというマニアな雑誌があって、毎号読者の写真の投稿ページがあった。月だとか土星だとか、星雲を望遠鏡にセットしたカメラで撮影した天文写真のページである。私とA君は月のクレーターの写真やなんかを撮影してはその雑誌に投稿したりしていた。と言っても、私はいつも付いていくだけでA君が持ってくる魔法瓶に入った冷たくて甘い紅茶やココアを飲んでおやつのクッキーなどをたしなむのが主だったんだけれどね。
シンと静まり帰ったはげ山の上で、望遠鏡から覗く月はとても大きく見えた。