♪ 針が落ちる 瞬間の
  胸の鼓動  焼き付けろ ♪

Diamonds (ダイアモンド)(PRINCESS PRINCESS)より


 プリンセス・プリンセスの名曲の一節である。
 このフレーズがたまらなく好きである。

 今の高校生あたりになってしまうと、もう完全にCD世代だから、DJでもやってたりとか関心がなければアナログレコードなんてのは見たこともないなんて事があるかもしれない。
 私が20歳の頃は、まだ普通にレコードが売られていた。丁度CDへの過渡期の頃で、CDプレーヤーを持っていなかった私は結構ぎりぎりまでアナログレコード派だった。何々派と言える状況じゃなく、ようするにCDプレーヤーが買えない派だった訳である。

 レコードを聴くというのは、なかなか気合いの入ったイベントだった。
 なんせ、レコードの再生中は下手に身動きが出来ない訳である。畳の部屋にステレオセットを置いていたのだけれど、気軽にのっしのっしと歩こうものなら”プギョっ”とか音を立てて、再生している溝からプレーヤーの針がズレてしまうなんて事だって起こりうる。

 レコードをかける時だって、真剣勝負のように息を止めて、回転しているレコード盤の一番外側の最初の部分にそっと、本当にそっと針を下ろすのである。新しいレコードのに一番最初に針を落とす時の、緊張と、興奮は今でも覚えている。

 正直に言うけれど、CDを買ってきてコンポに突っ込んで聞くのとは相当に気合いの入り方が違っていた。CDは2回目だろうが100回目だろうが同じ音で再生してくれる。
 ところが、レコードというやつは扱いが悪ければどんどんと傷がついていき、再生中に「プチッ」というノイズが入るようになってしまう。傷をつけることのないように細心の注意を払って取り扱うけれど、普通に部屋に置いておくだけでも埃がつけば、その部分が「プチッ」というノイズになる。再生前にはスプレーをかけてそれを綺麗にクリーニングするけれども、どうしても多少のノイズが入ってしまったりする。

 だから、買ったばっかりの最初の再生の時は特別なんだと私は感じていた。(最初から埃ついちゃう事もあるんだけれどね)



 それはとても特別な時間であり、音楽を聴くという”儀式”みたいなものだった。



 ナガオカというメーカーがレコード用の針の生産を打ち切ると聞いたときに、ダイヤモンド製楕円針を奮発して5セット購入した。後々針は5セット使い切って買い足したりもしたけれど、段々とレコードも聴かなくなってき、私が中学から使っていたコンポのレコードプレーヤーは長持ちして、ほんの5年前くらいまで現役としてたまに懐かしいレコードを再生していた。