「最後の夏」 by けんぱ



野球場 [日本:宮崎県]




Dear 先輩


 急にこんな手紙を貰って先輩は困っているのかな?

 なんだか、こうして改めて手紙を書くってすごく照れくさいものですね。


 これで夏が終わってしまったんだなと思うと、本当はほっとしている気持ちもあるのに、それでもやっぱり寂しい気持ちがしてしまうのはなぜなんでしょう。

 いつも遠くから見ていた、グラウンドの先輩の姿がもう見れないと思うと、私はこれから放課後の長い時間をどうやって過ごしたらいいのかわからなくなってしまいそう。


 ちょうど美術室の窓からは、野球部のグランドが見渡せて、私は気がつけばいつも、先輩の動きを追いかけてしまって、目の前のキャンパスの絵はいつまでたっても完成しそうに無かったんですよ。


 本当は、マネージャーになってもっと側で見ていたかったけれど、とてもそんな勇気が出なかったんです。


 いいえ、ちがいますね。


 いつか、最後の夏の最後の試合を目の前で見るのが怖かったのかもしれない。だって、先輩が本当に一生懸命に練習していたのを知っているから。どうして、どうしてそんなに一生懸命なんだろうといつも思ってしまう。


 高校野球って残酷だって私は思う。

 ものすごく努力して、練習して。みんな一番になりたいのに。それでも、1回でも負けちゃったらおしまいなんて。


 私に魔法が使えたら、先輩を優勝させてあげるのに。

 でも、きっと先輩はそんなことして貰っても嬉しくないんでしょうね。


 本当に、本当にご苦労様でした。


 先輩にとって、忘れられない最後の夏は、私にとっても忘れることが出来ない夏になりました。

 私にとっては、ピッチャーや4番バッターよりも、背番号14番の先輩が誰よりもヒーローでした。