京都で大学生が、うだうだとお酒を飲んだり、バイトしたりして、身近な色んな人と交流する感じの話。
登場人物の名前が日本人なのにカタカナ表記をしてみたり、それはおそらく、登場人物の存在感を調整しているのかな?と私は思います。
少しLGBTQにかかわる話でもあります。
大部分がどこか間が抜けていてユーモラスだったり、うだうだしているものの、中には攻撃的な人物や、大変なひどい事件にあっている人物などもまぎれており、その描写が「作者の近しい人に、実際にそういう人物がいるのではないか?」と疑うくらいリアルでおそろしいです。
さすが太宰治賞受賞。すごみがあります。
この作者は「なんらかの激しい痛みを経験した人」ではないか?、と、推測します。
なんらかの激しい痛みを経験した人と、割合おだやかな人生を送ってきた人、では、表面上は同じように見えても、深いところで同じではいられないように思います。変質しているように思います。
しかし、作中にもあるように、激しい痛みを経験した者がそれを信頼している人に打ち明けたからといって、到底受け入れられず離れてしまう場合も少なくないのだと、そういうところがリアルだと思います。
ラストは希望が持てるラストで、ほっとしました。
「そんなひどい事件に合った人など、激しく悲惨なシーンがでる本は読みたくない」という人には、この本はオススメできません。
自らも痛みを持つ読者が、「こっぴどい目にあっても、最後はいくらか希望や救いがある感じの本」を望んでいる場合には、オススメの本です。
しかし、ひどい話が色々書かれていても、主人公はうだうだまったりしている感じが、とても印象に残りました。