ロスジェネ世代、いわゆる就職氷河期世代の小説家を俎上に載せて、分析した本。
まだまだ新しい世代なので、ちゃんとした文学論で分析されていないのを、本書で扱ったとのこと。
大変興味深く読むことができました。
ただ、まだ読んだことのない作家さんも取り上げていたので、「先にその小説を読んでから、こっちの文学論を読みたかったなあ」と、少し、不満に思い、読んでない小説個所は、チラ見。
綿矢りさ、平野啓一郎、金原ひとみ、津村記久子、朝井リョウ(『桐島部活やめるってよ』)、中村文則、など。
平野啓一郎、金原ひとみは読んだことがあるし、現代の未開の領域をずぶずぶ切り込んでいくような感じでしかも、才能をビシビシ感じます。お二人の実験的小説の背景などを知れて良いです。
金原ひとみは漫画家の内田春菊さんと、過激な性や、攻撃的な感性や、時代を先取りした感じや、非常に才能があり魅力のある作品が、そっくりです。どちらかのファンであれば、もう一方も読んで損はないです。
津村記久子は読んだことがないのですが、「どこにでもいるような人がとんでもない悲劇に見舞われながらも普通に暮らしている」(うろおぼえ・図書館に返却後ブログを書いてしまったから)、そういう人々に目線を向けた小説らしいから、興味を惹かれて、読んでみたいと思いました。「こういうタイプの方は、人として好きかもしれないなあ」と、読む前から感じられました。
戦争を経験していない世代として、戦争を描いた作家さんも紹介されていて、「戦争を経験していないのに、さも経験したかのように描いたら、戦争の現実を誤解していく人が沢山でないだろうか?」という不安を感じました。とはいえ、そもそも、経験したことがないことも描けるのが小説というものですし、「少なくとも、現実に戦争経験者を取材をしたのだろうか?」という心配をしました。余計な心配でしょうか?
どなたか忘れましたが、高層階から植木鉢を落とす作風には、震撼しました。知性は常識を超えて、狂気です。
ロスジェネ世代の作家さんの案内本として、楽しめました。