私が実際に渡鹿野島を訪れた感想として、島の夜遊び(女遊び)が確実に衰退していることはもはや否定できなかった。海ぞいにあるファミリー向けの大きな旅館「福寿荘」を中心に、島全体が健全な観光地のイメージに向かっていこうとしている雰囲気が、ひしひしと感じられた。
私が夜に島の散歩に出たときにも、夜遊び目当てで来たような男性とは一人もすれ違わず、唯一、島のメインストリートですれ違ったのは、「福寿荘」に泊まっていると思われる浴衣姿のカップルだけであった。
そんな状況の中、私がエリーのような女性と一夜を楽しく過ごせたのは、やはり運が良かった、と言わざるをえない。本来なら、私の部屋にはもっと年齢の高い娼婦(四、五十代?)が顔見せに来るはずだったが、旅館の若女将(私を玄関で出むかえてくれた娘さん)が、
「東京から若い男性がせっかく一人で見えたのだから、なるべく若い女の子を引き合わせてあげた方が…」
という一言を、じつは裏で添えてくれていたそうで、それでエリーが優先的に私の部屋に来ることになったそうだ。(あとで、エリーとの会話で聞いたことである)
そんな周囲のあたたかい配慮もあって、私は渡鹿野での一夜を楽しめたわけで、もしタイミングが悪ければ、完全に真逆の感想を抱いて島を後にしていただろう。
二〇一六年の七月の時点ではもう、島の売春業は無くなる一歩手前、「風前の灯」だったと言わざるをえない。島が確実に健全な観光地のイメージにむけて歩み出している中で、「売春」という不健全なイメージは排除されるべきものなのだろう。島の売春の歴史の、最後の灯の中、私は奇跡的に夜遊びを楽しませてもらった、という印象がある。
これを読んだ人でもし渡鹿野島に興味をもつ方がいたら、ぜひ一度足を運んでみてほしいが、観光は良いとして、夜遊びの部分に関しては正直、保証はできない。
「夜を楽しめるかどうかは、運次第…」
としか言えないところが、実際に訪れた私としては、なんとも歯がゆいところである。
渡鹿野きんも
