慶喜鏡END | lunaーcha。

lunaーcha。

言いたいことも言えない、
こんな世の中じゃ~poison♪



15話前編





泣きかけの赤い目で
慶喜さんを見上げるけど、
それ以上は教えてくれなかった。
その代わり、とびきり優しく
私を抱き締め返してくれた。

「…ありがとう。お前がそんな風に
言ってくれるのは、とても嬉しいよ」

「…慶喜さん…」

穏やかな声で囁かれ、これでよかったんだ
という気持ちが胸に広がっていく。

じっと慶喜さんを見つめながら、
これからは家族のことは忘れて、
この人の為に生きていこうと思った。

どんな時もずっと一緒にいるんだ。

ふいに、慶喜さんがくすりと笑った。

「そんなに可愛い顔で見ないでくれ。
このまま唇を塞いで
しまいたくなるだろう
」ニコキラキラ

(…別にいいのにな)

だけどさすがに耐えきれなかったのか、
傍に居た翔太君がわざと咳払いをする。


「…それじゃあ、俺は行くけど。
本当に俺だけが
現代に戻ってもいいんだな?」

真剣な顔で翔太君が最後の確認をする。

もう二度は聞かれないだろう。

ここで頷けば、多分私は
永久に未来に戻る方法を失う。

私は一度慶喜さんの顔を見つめて、
それからゆっくりと首を縦に振った。


「……わかった。
もし無事に戻れたら、留奈の親にも
会いに行くよ。何か伝言はあるか?」

「…ありがとう。
それじゃぁ…えっと…体に気をつけてって
伝えてもらえるかな。私がいなくて…
きっと二人も凄く落ち込んでるだろうから」

「…ん。わかった」

「あっそーだ、お父さんね、家の近くにある
お店のお饅頭が大好きなんだ。
よかったら、それも持っていってあげて…」

「わかった。それも持っていくよ」

「それから…」と続けるうちに
家族を思い出し、涙を堪えることが
出来なくなった。

慶喜さんと生きることが
私の望みのはずなのに…


「…留奈…」シュン

「…っく…ご、ごめんなさい…
でも、本当に優しい両親だったから…」


私のことを何より大事にしてくれた。

一心に愛情を注いでくれた。

修学旅行に行く前に、お土産を
たくさん買ってくると話す私を
笑顔で見つめていた。

きっと楽しみに待っていてくれただろう…。


「…っ、親不孝な娘で
ごめんなさいって伝えて…」

最後にそう言うと、私はもう
言葉を発することが出来なくなっていた。


「………」シュン

慶喜さんが私の肩をそっと引き寄せる。

彼の腕の中で、私は小さく
お父さん、お母さんと呟いた。

慶「………」

翔「留奈…」

「…結城、心配するな。
留奈のことは俺に任せておけ」

翔「慶喜さん…」

「…さあ、そろそろ始めよう」

慶喜さんの言葉に翔太君は無言で頷き、
私にカメラを手渡す。

シャッターボタンの位置を教え、
押すだけでいいと私から少し距離を取った。

「…留奈、元気でな」

「うん…翔太君も…。わざわざカメラを
届けに来てくれたのに、ごめんね」

「いや、いいよ」

苦笑する翔太君にカメラを向けると
危なっかしかったのか、慶喜さんが
そっとカメラを支えてくれた。

「ちゃんと向こうに戻れたら、
この時代と行き来できる方法がないか、
オレ、調べてみるから」

「うん…うん…ありがとう、翔太君…」

これで本当にお別れだ。

翔太君の姿を目に焼き付けようとして。


「───その必要はないよ」


静かな声が降ってきて
え…?と思っているうちに、
私の手からカメラがなくなっていて。

何が起きたのか判らず、固まっていると、
私の体が前に放り出された。

肩にあった温もりが一瞬で消える。

翔「えっ!?」

ぐらりと前に傾いた私の体を、
翔太君が困惑しながら受けとめた。


──私ははっとして振り返る。

慶喜さんがカメラを持っているのが見えて、
一瞬でぞっと鳥肌が立った。

「慶喜さん!!!!」

悲鳴のような声があがる。

…あの手は、カメラを支えるためではなく、
奪うために添えられていたんだ。

慶喜さんが何をしようとしているのか、
本能で悟ってしまった。

慶喜さんの視線が、悲鳴をあげる
私を通り越して、翔太君に向けられる。

「──!」

「やめて下さ……っ!?」

慶喜さんに駆け寄ろうとする私を
翔太君が力付くで引き止めた。

「やっ…!?離して、翔太君!」

翔太君は何も言わず、
離れようとする私をただ押さえ込む。


「…すまないね、嫌な役回りをさせて」シュン

「慶喜さんっ!!」

僅かに笑みを浮かべた慶喜さんは
私達に向かってカメラを構えた。

「一度自分で撮ってみたかったんだ」

「やめて…!やめて下さい!」

喉が痛いくらいに泣き叫んでも、
慶喜さんは悲しげに笑うだけで。

「やはりお前は未来で生きるべきだ。
……大事に思っていた家族が、
ある日突然いなくなってしまう
というのは、とても辛いものだから」

「……っ」

「…祈ってるよ、留奈。
お前の幸せを、ここからずっと


「やめ…!」


───カシャッと、シャッター音が聞こえ、
涙でぼやける視界が、
強烈な白で埋め尽くされた。

慶喜さんを呼ぶ私の声も
慶喜さんの最後の言葉も、

何もかもが遠くなっていく。


それでも必死で
慶喜さんの名前を呼び続けていたけど…。


ある瞬間に、ぷつんと糸が切れたように
私の意識は途切れた。




……次に目を覚ましたのは
見覚えのある古道具屋の中だった。

蛍光灯の光。

遠くから聞こえる車の走行音。

現代に帰ってきたんだと
思い知らされて、私は泣き崩れた。

どれだけ探しても、求める人は
この時代の風景の中にはいない。


…遅れて目を覚ました翔太君が
はっとして表情を凍らせる。

慶喜さんの名前を馬鹿みたいに繰り返す私を
彼は口を引き結んで苦しげに見つめていた。




──数日後。

幕末に飛ばされてから何年も経っていて
髪も身長も伸びていたのに、
戻った時には全てが
飛ばされる前の状態になっていた。

まるで幕末で生きたことが夢みたいに。


そして今は普通に授業を受けている。

先生が、今日は江戸時代から
明治にかけての転換期をやります。
まずは教科書を見ないで
質問してみましょうか。と
徳川幕府最後の将軍は誰かと
生徒に尋ねるが、その生徒が
わからないと答えると、ヒロインに問いかける。


……私は小さく笑って答えた。

「…慶喜…。
徳川慶喜さんです」

「よく知っていましたね。
では教科書を開いて…」


いつも通り授業が始まる。
私は教科書の表紙を見つめながら
ノートの間に挿んであるものを、
指先で確かめた。


教科書を見なくたってわかる。

この人が、一体何を考え、
何を成した人なのか。


どんなに優しくて、
どんなに頑張っていた人なのか。

……だって誰よりも傍で、
私はそれを見ていたのだから。

どんなに辛い思いをしても、
誰に何を言われても、慶喜さんは
自分のやるべきことを見つけ、貫いた。

私のことも守ろうとしてくれた。

……綺麗に笑う人だった。

冗談もよく言っていた。

誰よりも大好きだった。

あの人だけを見つめて、
私は幕末でのあの日々を生きていた。


ふと、こちらに向いている視線に気付くと、
翔太君が少しだけ心配そうに見ていたから
安心させるように微笑んでみせた。

(翔太君にも随分心配かけたな…)

でも、もう大丈夫。

時間が経つにつれ、私は少しずつ
前に進めるようになった。

あの人の強さを知っているから。

あの人に恥ずかしくない自分でいようと
思えるようになったから。


(もう、あの手に抱き締めて
もらうことはないけれど…。
あの人が作った日本の未来を、
私は生きているから…)


窓から入ってきた風がカーテンを揺らす。

机の上のノートも、パラパラとめくれ…

そこには一本の簪が挿まれている。


遠い昔、薄暗い揚屋の一室で贈られた。

別れ際にいつの間にか
スカートのポケットに
忍ばせてあったもの。


『お前の機嫌を損ねた
かもと、怖くなって…』

いつかの彼の軽口が聞こえてくる気がする。


(慶喜さん…ずっと大好きですよ)

心の中で、私はそう呟いた。



━END━





(´;ω;`)ブワ


ふぇ~ん…(´;ω;`)



書いてる時、涙出そうで
中々前に進まないってゆーね。


悲しすぎるよぅ!。・゚・(*ノД`*)・゚・。


最後に慶喜様の台詞出すとか
泣けるじゃないかッ(;Д;)


悲しすぎて、でも慶喜さん
最後まで優しかったなぁ…

家族を思って泣く私に
家族が突然いなくなるのは辛いって

秋斉さんがちらついたよ(ノω`。)


だから未来に帰したんだよね?
私があそこで泣かなかったら…
泣かなくても帰すつもりでいたの?

だからわざと翔太の前で
唇を塞いでしまいたくなるって言ったの?



初めて鏡見たけど…

あんなに甘い慶喜様でも
この悲しさでしょ?

他の人どーなっちゃうのよ…


見たくない。笑