前編を読む
その代わりに、優しく頭を撫でてくれる。
「…なあ、瑠奈。
お前がそう言ってくれるのは、
本当に嬉しいよ。
こんな風に謹慎する身になっても、
一心に俺を慕ってくれるお前を、
いじらしく可愛らしいと思う」
「…でもね、やっぱり俺は
お前が心配なんだ。この先俺の身に
何が起こるか分からない。
生きていられる保証もない。
そして俺の傍にいるお前にも、
同じ事が言える」シュン
「…」
「…お前の人生だから、
どうするかはお前が決めていい。
ただ、俺からお前に何かを
命令したりする事はない。
自分で考えて…選択するんだ」
先の見えない未来が
こんなに恐いものだと知らなかった。
翔太に落ち着いて考えてと言われる。
こんな言い方はしたくないけど、
この世界じゃ俺や瑠奈はあまりに無力で、
瑠奈を守る為に慶喜さんが
危険になることがあるかもしれない。
仮にお前がこの時代で生きていけたとして、
慶喜さんに万が一があった場合、
残りの時間を独りで生きていけるのか?と。
何も言えなくなる私に、今迷いがあるなら、
現代に戻ったほうがいいと思う。
さっきのはただの例え話じゃ
なくなるかもしれない、そうなった時…
もう俺は、お前を助けてやれない。
「戻ろう、瑠奈。現代に帰ろう」
現代に帰れば、またカメラで
戻る方法が見つかるかもしれない。
そう言われ、慶喜さんを見上げた。
「カメラを、試してみるんだね?」
「…はい…」
慶喜さんはそうかと小さく頷いた。
必ず戻ってくると言って、翔太が慶喜様に
カメラを渡し、操作を教える。
なかなか離れられない私に
「…瑠奈。それじゃぁ、いつまで経っても、
カメラを使う事ができないよ」
苦笑しながら
子供にするみたいに言い聞かせる。
その優しい声を聞いていると、
簡単に涙腺が壊れた。
やっぱり戻りたくない、
でも戻らないといけないんだという想いで
胸が引きちびれそうだ。
「慶喜さん…。…慶喜さん…っ」
カメラを持つ慶喜さんの手に
自分の手を重ねる。
ぽろぽろ涙が零れて、
慶喜さんの指にも落ちる。
「……そんな顔をしてちゃ駄目だろう、瑠奈。
さあ、結城くんが待ってるぞ」
泣きながら慶喜さんの手を
そっと離そうとする。
「……」
「……お前の事は、生涯忘れない」シュン
指先が離れそうになる瞬間、
慶喜さんは、静かに囁いた。
そこで初めて気付く。
カメラを持つ慶喜さんの手が
ほんの僅かに震えている事に。
勝手に動こうとする体を必死に
押さえつけている様に見えた。
私はまた、この人に
我慢させてしまうところだった。
口元に笑みが浮かぶ。
離しかけた手をしっかりと握りしめて。
ごめんなさい、と翔太君に告げて
シャッターを切った。
「な…!?」
その瞬間、驚いた翔太の顔は
白い光に覆われて、消えてしまった。
そこにあるのは変わらない風景と
驚いた顔をした慶喜さんと、私。
「……瑠奈、お前なん…っ」!?
慶喜さんの唇を人差し指でそっとおさえて、
もう何も言わないでと彼を抱きしめた。
慶喜さんがゆっくりと
私を抱きしめ返してくれて。
すまない、と一言だけ謝られる。
きっと慶喜さんは
私に悟らせるつもりはなかったんだろう、
私を手放したくないことを。
本当は何があっても
私を傍に置いておきたかったことを。
だけど。
「これでよかったんです」
あの震える指先に気付いた瞬間、
ようやく決意出来た。
この先の人生を、全てを
慶喜さんに捧げる決意が。
「…瑠奈。ありがとう…」
穏やかに微笑む私を、慶喜さんは
今度はぎゅっと抱きしめた。
それから明治2年、9月。
謹慎が解け、ようやく慶喜さんは
慶喜さんらしく生きることが
出来るようになった。
もう政治には関わらないと
決めているみたいだ。
「しかしお前にもだいぶ迷惑をかけたね。
…すまなかった、瑠奈」
「ふふ、どうしたんですか?
私が好きで慶喜さんと
一緒にいるんですから、
迷惑なんてちっとも思ってませんよ」
「…そうか」テレ

そしてこれから何をしましょうか?
時間はたくさんありますよと言うと
「そうだねぇ。
確かにいろんなことに興味があるね。
でも…俺にはそれよりもまず
やらないといけないことがあるな」
「え…?」
ふいに足を止める彼に私も足を止める。
「…瑠奈。
俺の妻になってくれるかい?」
゚+。:.゚(*゚Д゚*)゚.:。+゚
驚いて固まる私の手を
慶喜さんがそっと引き寄せた。
「約束をしていたのに、果たすのが
随分遅くなってしまってすまない。
謹慎中も、俺を支えてくれてありがとう。
…あの日、この世界に残ると
決めてくれてありがとう」
「これからも辛い思いを
させてしまうことがあるかもしれない。
それでも俺は、お前に隣に居続けて欲しい」
うぅっ(´;ω;`)
「慶喜、さん…」
「俺が妻にと望むのはお前だけだ」
嬉しすぎて泣いてしまいそうで
顔を俯かせようとしたけど、
彼が優しく名前を呼ぶから、
真っ赤になった顔のまま見上げた。
視線で、返事は?(ニコ
)と尋ねられる。「不束者ですが宜しくお願いします」
「…そうか。ありがとう…」
「ありがとう、瑠奈」ニコ

甘えるように彼に寄り添う。
≪スチル≫
「今日から奥さんなんですね」
「ああ、そうだよ。これからは
毎日遠慮なく甘えてくれていい」
今までも甘えていたし、これまでも
ずっと一緒に暮らしていたから
妻になる実感がわかないと言う。
「そうかい?
まあでも…これからは、嫌でも
実感していくことになると思うよ?
何と言っても妻の務めを
果たして貰わないといけないからね」
「妻の務め?」
「そう。男の子が生まれたら慶斉、
女の子が生まれたら秋と名付ける」
゚+。:.゚(*゚Д゚*)゚.:。+゚
「どちらでも構わないけど
元気な子を頼むよ、瑠奈。
俺の希望としては、やはり
男の子女の子両方…さらに言うと
出来る限りたくさん欲しいわけだが…」
楽しげに話す慶喜さんに、
私は真っ赤な顔で口をぱくぱくさせる。
それが面白かったのか、
慶喜さんは声をあげて笑った。
「可愛い瑠奈。俺はお前が本当に愛しい。
これからもそうやって俺の隣に居続けてくれ」
日の光の下、慶喜さんは
とびきりの笑顔を見せた。
はぁ…(*´∀`*)
花はちゃんとプロポーズ
されるから好きです
