慶喜9話 | lunaーcha。

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言いたいことも言えない、
こんな世の中じゃ~poison♪

艶が~る

花魁でありんす
艶が~る



彼が将軍と名乗り大声を出しそうになって
慌てて口を手で塞いだ。
お付きの立花さんが、落ち着いて、
というような仕草をして

「目立ってはいけませんので、
申し訳ありませんが
あまり動揺なされずに…」

「…今でも結構目立ってると思いますよ」

「やはりそうなのか?」

家茂さんは身なりも綺麗だし、
周りには数人、目付きの鋭い護衛もいるから
自然と視線を集めてしまうのは仕方ない…と
いう私の考えを立花さんが言うと、
家茂さんはふむ、と頷いた。

(慶喜さんが今の将軍はすごく若いって
言ってたけど…本当に私と同じ位の歳だ。
でも、何でここに?
というか、どうして私に会いに…?)

「…ええと、上様」

「慶福(よしとみ)と呼んで頂ければ。
私の幼名です」

何故私を訪ねたか聞くと、知り合いに
島原に素晴らしい太夫がいる
と聞いたので一目見てみたかったと。
噂通りお美しい、と
褒められ、素直にお礼を言うと
用件はそれだけと、去ろうとする。

「あっ、慶福さん…」

私は一瞬引き止めようかと思ったけど
忙しいだろうし、長居するのも
危険かもしれないと
少し迷って言葉を止めた、その時。

「──やぁ、留奈」ニコキラキラ

「「あ」」

私と立花さんが呟くと、
家茂さんは無言で立ち止まった。

何も知らない慶喜さんは、私に軽く
手を挙げて挨拶をしてから、
家茂さん達の方に目を向ける。

「ん?何だい、やけに
ものものしい護衛だね。
将軍様でも、島原に遊びに来て…」

「……る、の、かな……」シュン

慶喜さんは、
気まずそうに目を逸らす立花さん達を見て、
だんだん声から色を失くしていき。

「……っ!!??」!?

最後に家茂さんの顔に目を留め、
信じられないと言ったように絶句した。

「ど、どうしてこんな所に!」!?

「貴方だって、いつもお忍びで
町に来ているのでしょう。
知っているのですよ」

そう堂々と答える家茂さんに、
慶喜さんは言葉を詰まらせ、
立花さんへと呆れたような視線を向けた。

「……立花。お前もどうして
止めなかったんだ」シュン

「申し訳ございません…、
何度もお止めしようとはしたのですが、
『一橋殿が良くて、何故私が駄目なのか』
と仰せられまして」


「………」シュン


慶喜さんはため息をついて
「とにかくここは目立ちますから」
と路地裏の方へ向かった。




「それで、どうしてこちらに
いらっしゃったのですか。
用件を済ませて早くお帰り下さい」シュン

窘めるように言う慶喜さんに、
家茂さんは眉をひそめた。

「…留奈さんにお会いしたかったのです」

「留奈に?」シュン

「貴方を変えた人だと思ったから」

「………」シュン

慶喜さんが虚を突かれたように
言葉を止める。

(……変えた?
私が慶喜さんを……?)

「近頃の貴方は、以前と違う。
何と言うか…生き生きしている。
それで肥後に何か心当たりはないかと
尋ねたのです。そうしたら…以前より
島原という所に通われていたようだが、
贔屓の女性が出来たらしいと。
その方の話をする時の貴方は、
とても優しい顔をしていると…」

「……容保か」シュン

容保さんって会津藩主の人のこと?
二人の知り合いなんだ…と考えていると
慶喜さんがふぅっと息をついて目を伏せた。

「…私のことなど、よろしいのです。
それより、まだ京は危険。
護衛は付けていらっしゃるようですが、
早くお戻りください」シュン

その彼の表情は、どこか
照れたような感じでもあったのだけれど、
私以外にはそれが判らなかったのか、
家茂さんは不安げな瞳をする。

「後で留奈さんの話を聞かせて頂けますか」

「それは……」シュン

「………」

慶喜さんが言い淀むと
家茂さんは困った顔をする。

さっきすぐに帰ろうとしたのも、
後で私のことを慶喜さんから
聞こうと思っていたのかもしれない。

だけど今の慶喜さんは
少し不機嫌…なように見えるから、
どうしようかと迷っているのだろう。

(助け船を出してあげたいな…)

「私も話がしたい」と言うと、
驚く慶喜さんと、瞳を輝かせる家茂さん。

危険な場所には行かないと念を押すと

「…少しだけ、でしたら」シュン

私と家茂さんの視線に負けたのか
慶喜さんが渋々頷いた。

「かたじけない、留奈さん」

「いえ、何だか困ってる慶喜さんが新鮮でしたし、こちらこそお礼を言いたいくらい…」

「……あとでお仕置きだよ、留奈」

(〃艸д〃)お仕置き!?

何してくれるのラブラブ!!笑



そして、3人でお茶屋に入る。

こうして茶屋に来るのは初めてで、
慶喜様に時々こうして来るのか聞くと、
たまに、と答える彼に羨ましいと呟くが、
それは慶喜様には聞こえなかった。


それから団子をニコ02しながら頬張る上様。

「……私は今まで一橋殿が
あまり好きではなかった」

と、唐突に言うから、慶喜様は
飲んでいたお茶を吹き出しそうに。

「何ですか、いきなり。
…言われずとも、判っております」シュン

軽くむせながら言うと、
家茂は柔らかい微笑みを浮かべる。

「私は、今までは、と申し上げたのです」

「……?」シュン


「最近は考えが変わりました」

家茂はお茶をすすり、私の方を見て
ひそめた声で呟く。

「…お恥ずかしい話なのですが、
私は先日将軍職を辞そうと思ったのです」

「えっ!?」

彼はぽつり02と言葉を続けた。


実は一月程前、日本と貿易したい外国の人が
兵庫の港を開けと幕府に迫っていたらしい。

京都に近い兵庫を開港するのは、
朝廷が嫌がっていたのに、
幕府の人が朝廷に相談せず
勝手に開港すると約束をしてしまった。

それで慶喜さんは何とか幕府との関係が
悪くならないようにと、朝廷と話し合った。

だけど怒った朝廷が、責任者を
辞めさせるように命令をして…。

それでまた慶喜さんと幕府の人たちの間で
大問題になってしまったらしい。

その時、結構な口論になっのだけれど、
家茂はどうしていいか判らず、
ただ成り行きを見守るばかりで…
それが情けなかったと彼は言った。

「…私は将として兵を率い、
民を守らねばならぬ立場の者だ。
それなのに部下すら統率出来ず、
自分の言を持って納得させる事も出来ない。
それは前からそうだったのですが、
今回の事で痛感しました。
だから私はもう
将の器ではないと思ったのです」

そう言って彼は目を伏せた。

家茂は慶喜様を将軍にすればいいと
辞表を残して江戸に帰ろうと大坂城を出た
その途中で、慶喜様や容保達に説得され、
京都に戻ったらしい。その時は
疲れが溜まっていたせいだと
思ったけど、実は今でも少し、
自分が将軍でいいのか悩むと彼は呟いた。


「一橋殿は聡明な方だ。
それに比べて私は…」

「貴方は誠実なだけです。
私などと比べて、自分を
卑下してはなりません」シュン

慶喜さんが叱るような声を出す。

その言葉に家茂さんは
顔を上げて、ふと笑みをこぼした。

「……ほら、そういう所だ。
貴方は優しくなった」

「……え」!?

「以前はどこか、冷たいところがあった。
何を考えているのか掴めなかった。
だから私も、貴方が少し…怖かったのです。
だけど近頃は、自らの意志で正しいと
思うことをやられているように感じる。
私が辞めると言った時も、
真剣に引き止めてくれた」

「……」シュン

「……それもきっと、留奈さんの
おかげなんでしょうね」

「…私の、ですか?」

「一緒にいて、よくわかった。
私も江戸に妻を残しているのですが
一橋殿が貴女を見る目は、
私が妻を想う時と似ている気がする」

「………」

その言葉に慶喜さんは少し驚いたように
息をして、家茂さんを見た。

「私は何を怖がっていたのか…。
貴方も、愛する女性を持った
ただの男なのですね」

二人の視線が真っ直ぐに触れ合って
家茂さんははにかんで微笑む。

「…それでは、私はそろ02失礼いたします」

立ち上がろうとした時…。


「───すまない。
みたらし団子をもう一皿」

「……」

「…もう一皿分だけ、
よろしいでしょう」ニコキラキラ


(*´∀`*)きゅんッハート


慶喜さんが優しく笑うと、家茂さんは
年相応に目を輝かせて席に戻った。

……そして。

「…あの者らが食べている
黒蜜団子も頼んでいいだろうか」

「駄目です」ニコキラキラ


ぐはっハート(ノд`*)


慶喜さんがぴしゃりと答えて
私は思わず声を上げて笑った。





続き⇒9話後編