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間もなく喜寿を迎えるというおじさん、いや年齢的にはおじいさんか。物静かで積極的にお話をされない感じだが、近寄りがたい雰囲気は全くない。僕が乗車中に偶然「大回り乗車の達人」に出会いました。親切な方で、僕みたいな人に色々と大回り乗車の魅力を教えてくれました。そのお話を僕の体験も交えて紹介します。
1.遠くに移動する楽しさ
おじさん曰く、大回り乗車は気軽に遠出ができるのが楽しいとのこと。僕が今回巡ったルートを見てもわかりますが、普通なら距離30kmの移動で済む場所でも、400km以上乗車する事が可能です。電車移動が好きな人にはたまらないでしょうね。おじさんは高齢で長時間の乗車は厳しいとの事でしたが、ルートによって距離の調整が可能というのも魅力のひとつでしょうね。
2.車窓が楽しい
「大都市近郊区間」というアーバンな響きを感じる制度ですが、実際は山の奥の方を通過する路線も含まれています。普段都会に住んでいても、百数十円で大自然を感じることができるのです。また、経路によっては大阪城や京都東寺の五重塔を見ることも可能です。遠くから眺める程度ですが…。
関西本線の柘植~加茂間のどこか。こんな遠くに来ても200円以内で済む
3.本が読み進む
これは僕が気づいた点なのですが、本が読み進みます。今回は比較的短い行程でしたが、それでも13時間程度の乗車です。車窓を眺めるのも楽しいのですが、数時間同じような風景が続くので正直飽きます。だから本を読むのですが、自宅で読んでいるときと違ってテレビやラジオがないため、集中して読むことができます。3冊ほど持ってきた本を読破してしまいました。勝間和代さんが一日3冊本を読めと言っていましたが、大回り乗車すれば可能ということがわかりました。
4.人間観察
朝から晩までずっと移動しているので、いろんな人を観察できます。朝の京都のサラリーマン、昼前から学校をサボる滋賀県の高校生カップル、という具合。関西本線の閑散区間でもスーツ着た人が多くて驚いたり、和歌山県の高校生の間でもモンハン流行っているのを確認できたり、新しい発見が多くて楽しいです。地域によって方言など違うのが結構おもしろいです。それと高校生の若々しさがどこも変わりなく良いですね。誰と誰が恋してるとか、受験で悩んだりとか。僕も(灰色の)高校時代を思いだし、涙を禁じ得ません。
大回り乗車を象徴するような、おじさんの印象的なお言葉「長く乗っているのはしんどいけど、楽しいからやめられへんねん」。僕が思ったのは大回り乗車と人生は同じという事。おじさんの経歴を聞くと、波乱万丈の人生だったそうです。現役時代、仕事相手を騙したり、あるいは騙されたり、敵だらけの仕事人生。未だにそれが尾を引いていて、僕にも名前や素性を明かす事が出来ないほど。そんな中でも信頼できる人、信用のおける仲間がいた。それを支えに仕事を全うできたそうです。定年後、悠々自適な生活の中でも刺激を求めて大回りをする日々。大回り乗車でも乗り換えがうまく行かなかったり、間違った方向に進んでしまったり、困難は多いのですが、それを忘れさせてくれる楽しさが待っているから乗り続けるのだそうです。
人生のダイナミクスを感じられない現代、大回り乗車オススメっすよ!!