気になる言葉 <第867回>
今週は第十四節気の『処暑(しょしょ)』です。
「処」とは止まるという意味があります。
暦の上では、ようやく暑さの峠を越え、少しづつ過ごしやすくなる『処暑』という節気のはずですが、今年のこの異常なまでの暑さは、今もまだ酷暑の真っ最中、外に出ると身の危険を感じるほどです。
そんな中、一昨日は無謀にも仲間とゴルフをやってきて、家族の顰蹙を買っています。流石にゴルフコース内の芝も枯れたような状態でやや身の危険を感じるほどでした。
毎朝の朝散歩は、できるだけ日の出前に歩こうと5時には出発しています。気のせいかこのところ日の出前に微かな冷気を感じることができ、一瞬ですが爽やかな気分になれ
ています。
<写真1>
散歩道の脇でオレンジ色のホオズキを見つけました。ホオズキは淡い黄色の花を6月から7月にかけて咲かせますが、8月になると花の咲いた後に、六角状の萼(がく)の部
分が発達して果実を包み袋状になり、それが熟すとオレンジ色のホオズキになります。
<写真2>
ホオズキ(鬼灯)と言えばお盆ということになりますが、そのふっくらとした形とオレンジ色から、お盆に帰ってくるご先祖さまや精霊を導く道しるべに見立てられ、お墓や仏壇に飾られます。
また、ご先祖様は体を持っていないため、お盆の四日間はホオズキの空洞の中に身を宿して過ごすと言われています。
草むらに鬼灯赤い灯をともし (笹川イツ子)
鬼灯の花に約すや父母の供華(くげ)(植村よし子)
先日ネットの中で山百合リリーさんの『ほおずき』という詩を目にしました。
遥か昔に両手で包み込んだ赤さが
遠い記憶の奥で息をしている
赤い実の中で ひっそり息をしては
声なき声と言葉を抱えたまま
赤い実の中で眠りについたままで
小さな記憶を抱えたまま眠っている
今なお、赤いほおずきの実の中で
今週の<気になる言葉>は、スポーツ脳学者の林成之さんが、”そうだね”という言葉の意味について語っていました。
脳神経外科医として脳科学をスポーツ指導に活用して、五輪選手らの快挙をお膳立てしてきた林成之という人がいます。
サッカーやカーリング女子日本代表が競技中に使って流行語になりましたが、相談に来たリーダーに「チームメイトと話すときには必ず『そうだね』と言ってから話なさい」と伝えたそうです。
そうすることにより、話す側は否定されることへの恐怖がなくなり、聞く側も相手の言うことに興味を持ち、受け止めるようになるからだ、と言います。その結果、強いチームワークが保たれるというわけです。言葉って、実に不思議な効果を持つものなんですね、私も感心しきりでした。
今週の<旅スケッチ>は、千葉県にある小湊(こみなと)鐡道の列車が走る風景です。
小湊鐡道は大正14年(1925年)に開通した非電化・単線の路線で、JR千葉駅から約20分の「五井駅」から「上総中野駅」までの全18駅を結んでいます。その中からの風景です。
主役は小湊鐡道の列車です。ゆっくりと田んぼの中を進んでいくのどかな静けさを出すために、空の青と白い雲、手前の田んぼの緑、小山の樹々の色そして、その中を横切るオレンジ色の列車の配色のバランスを考えながら彩色してみました。
加えて、それぞれの色が少しづつ周りに反映し合っているような雰囲気になれば、、、と思い、いろんな色を重ね合わせてあります。
ゆったりした時間が流れていくような沿線の風景に、少しでも癒される気持ちになって頂けたら幸いです。
今週の<朝の散歩道>の一枚目は、白いレースのような烏瓜(からすうり)の花です。
ふつう烏瓜と聞くと、瓜という名前から秋になると赤い実をつけるつる性の植物、、、という印象があるのですが、じつは実をつける前の、夏の夜中に咲く真っ白いレース状の花が美しいことは、ほとんど知られていません。
あまりにもその印象が違いすぎますからね。しかし、真夏の夜に咲く魅力的というか、妖しい雰囲気を持つこの花は一度見たら忘れられないような感じの花なのです。
日没に少しづつ咲き出し、夜中に満開になります。そして夜明けになると店じまいです。
早朝散歩のこの時間は、ちょうど店じまいの最中で、運がよければ写真のように半分くらい開いた花を見ることができます。
なぜこんな妖しい花を? と思うのですが、実は身もふたもない話なのですが、受粉の媒介をする雀蛾(スズメガ)をおびき寄せるためなんですね。
送り盆賑やかに咲く烏瓜 (松崎鉄之介)
秘密めく白さにからすうりの花 (飯島かほる)
誰がために咲く烏瓜魔女めきて (鈴木浩子)
二枚目は、散歩道で見たカマキリの様子です。
8月から秋にかけて林の中や草原で見ることができるカマキリですが、朝散歩の道の上で見かけました。あまりに暑いので道に出て来たのでしょうか。
近づいてみるとこちらを向いて鎌を開こうか迷っているような雰囲気がありました。
カマキリにとっては、秋の交尾に向けて今はひたすら獲物を捕まえて栄養をつける時季だそうです。その食性は肉食で、自分より小さな昆虫や小動物は何でも食べてしまうと
のこと。
昔から、カマキリの交尾はおどろおどろしい、と言われてきました。交尾をした後、雌が雄の頭を嚙み千切り、身体を食べてしまうというのです。
ただ、専門家によると、実態はそういうこともあるが、すべての雄が食べられてしまうわけではなさそうです。
しかし、それにしてもこのオスのカマキリ君、暑さでグロッキーにも見えるのですが、だいじょうぶかな?
かまきりの首をかしげて動かざる (黒住康晴)
蟷螂の金色の眼の不動なり (杉山瑞恵)
蟷螂の怒りは人を見るにつけ (小松里草)
1.「”そうだね”と同調して会話を始めると、潜在能力が高まる」
ー林成之(スポーツ脳学者)ー
脳神経外科医として脳科学をスポーツ指導に活用して、五輪選手らの快挙をお膳立てしてきた林成之という人がいます。「脳の本能を活かし、限界を超えて前進するためには、
誰もが持つ才能である潜在能力を高めていくことである」と考え、その秘訣を月刊誌特集記事の中で述べていました。その中の一例を紹介します。
2011年開催のサッカー女子W杯で日本勢初の優勝を成し遂げた”なでしこジャパン”ですが、大会に入る前、当時の佐々木則夫監督に「先生、頭を強くする方法はありますか」と相談を受けました。
その時に教えたのが『そうだね』という仲間の頭に入る言葉と使い方です。後にカーリング女子日本代表が競技中に使って流行語になりましたから、ご存知の方も多いでしょう。私は「チームメイトと話すときには必ず『そうだね』と言ってから話なさい」と伝えました。
既にご説明したように、脳には「生きたい」 「知りたい」「仲間になりたい」という本能があります。この本能を活かすのです。後から何を言うかに関係なく、『そうだね』と同調して会話を始める。すると、話す側は否定されることへの恐怖がなくなり、聞く側も相手の言うことに興味を持ち、受け止めるようになります。その結果、自ずとお互いの潜在能力が引き出されるのです。
なでしこジャパンがボールを持ったら仲間がいないところへ迷わず、失敗を恐れず蹴る、という常識破りのパス回しを生み出し、相手を翻弄(ほんろう)しましたが、あれはまさにこの『そうだね』で生まれた信頼関係、チーム一丸で潜在能力を発揮した結果だということでしたが、なるほどという感じがしましたね。
この効果を私たちの日常会話の中で活かすとしたら、「面白そうだね」「楽しそうだね」とまずポジティブな言葉を使ってから話を進めていくことが良いと思います。
これによって「脳が持つ美しい本能、潜在能力」が最大限に引き出されるというわけで、このことを「育能」と呼んでいるとのことでした。
この効果は私たちが何か新しいことにチャレンジしたり、未知のことに挑戦したりする時などにも広く応用できそうな気がしています。
それではまた。