気になる言葉 <第853回> | MIKEのブログ

気になる言葉 <第853回>

五月に入り、第七節気の『立夏(りっか)』になりました。

野山には新緑が青々と萌え、徐々に夏めいてくる頃、ということですが、この時季になると気持ちのいい五月晴れが続き、爽やかな風薫る日が多くなってきます。

また、この時季に感じる新緑の間を抜けてくる心地よい風を薫風(くんぷう)といいます。

 

この時季の朝散歩では何とも気持ちのいい爽やかな景色に出遭い、思わず深呼吸したくなることがあります。

写真の景色は、手前に柿の木の若葉が、また遠くにはチャペルが見える私の好きな景色の一つになっています。

<写真1>

 

しばらく歩くとあちらこちらにツツジの花が見えます。

朱、紫、白など実に鮮やかな色の花を咲かせます。ヤマツツジ、モチツツジ、ミツバツツジなど、日本には40種程度

が自生しているそうですし、また園芸種では300種を超えているとのこと。

<写真2>

 

和名のツツジという名前は、筒状の花を意味する筒しべが語源のようですが、漢字では何とも難しい『躑躅』と書きます。私は憂鬱(ゆううつ)という字と、この躑躅が未だにしっかり書けません。

英語では、Azalea(アザレア)といいます。マスターズゴルフで有名なオーガスタコースのアザレアは有名ですよね。グリーンの緑との相性抜群ですから。

 

近道へ出て うれし野の 躑躅かな (蕪村)

岡にそひてつつじの多き小道かな (子規)

五月晴うす色つつじ全山に (松本たかし)

 

そう言えば、金子みすゞの『つつじ』という愛らしい詩がありましたよね。

 

小山のうえに

ひとりいて

赤いつつじの

蜜を吸う

 

どこまで青い

春のそら

、、、私は小さな

蟻かしら

 

甘いつつじの

蜜を吸う

私は黒い

蟻か知ら

 

 

さらに、この時季になると、マーガレットの花もいいですよね。白く一面に咲き、薫風が吹くと一斉に揺れて、まるで風のかたちが目に見えるような気がします。真っ白で清楚な一重咲きの花を咲かせるマーガレットの原産地はモロッコ沖のカナリア諸島だそうで、日本には明治時代に渡来したと言います。

和名は木春菊(もくしゅんぎく)といいますね。

<写真3>

 

よき朝がマーガレットに来てをりし (篠原樹風)

風白しマーガレットを野に置きて (稲畑汀子)

マーガレット猫額の庭満たしけり (中村汀女)

 

 

 

今週の<気になる言葉>は、脳学者、池谷裕二さんの”マシュマロテスト”についての話です。

「目の前にマシュマロが一個あって、食べずに15分間我慢すれば、もう一個もらえる」という、たったそれだけのテストなのですが、その簡単なテストの結果から結構いろんなことが見えてくるというのです。

とくに子どもの頃にやったテストの結果が、大人になった時にいろんな形で現れてくるといいます。

例えば、出世率や肥満率がちがってくるという結果が確認されているそうで、目の前のマシュマロを食べずに我慢できた子は、大人になったとき肥満にならないとか、出世するといった傾向が強いと言われています。

不思議なことですが、聞くと、なんとなく納得できるような感じもありますね。

 

 

今週の<旅スケッチ>は、初夏の新緑と五月晴れの空に浮かぶ白い雲を描いた風景です。

 

 

日本全国どこにでもあるような初夏の風景です。手前の畑の緑、遠くの山々、そして白く湧き上がる雲、、、なんだか見ているだけで深呼吸したくなるような爽やかな気持ちになりました。

家とその裏にある大きな木々が、景色のアクセントとして感じられ、全体をまとめているように感じました。

光を感じる風景に加えて、最近は空に浮かぶ雲にも惹かれるようになりましたが、その白い雲の表情をどのように表現するか、、、なかなか面白いテーマだと感じています。

雲の描き方には、いろいろあるようですが、わたしはあまり複雑に考えるのではなく、ウォッシングした紙の上にコバルトなどの空の色を広げ、やや乾いたときに色をティッシュで拭き取って雲の輪郭を描き、その後、乾いてから雲の光っているところにREMBRANDTの白いパステルなどを使っています。

自分で考えた勝手な自己流ですが、、。

 

 

<朝の散歩道>の一枚目は、この季節になると田んぼの畦に見られる野蒜(のびる)の様子です。

 

野蒜は葉が細く、茎はネギのような匂いがします。「野に生える蒜(ひる)」の意味で、蒜とはネギやニンニクの古名ですから嚙むと辛くて、匂いもします。

この写真を撮った時は先っぽに小さなネギ坊主のようなものをつけていましたが、5~6月ころになると白い小さな花をいっぱい咲かせます。

葉と地下の小さな球根は食べられます。縄文の時代からすでに食用されており古代から春先の重要な野菜であったようです。

古事記の中にも応神天皇の歌として「いざ子ども野びる摘みに、、、」と載っています。

 

一瞥(べつ)もされず揺れゐる花野蒜 (堀田恵美子)

すぐ抜けて音符のごとき野蒜かな (藤井淑子)

野蒜摘み野性の匂ひ濃かりけり (渡邊松美)

 

二枚目は、菜の花にとまって花の蜜を吸っているベニシジミチョウの様子です。

 

ベニシジミチョウの大きさは十円硬貨くらいで、濃いオレンジ色の前ばねを持ち、黒い点々があります。後ろばねは灰色で黒っぽくてオレンジ色の模様があります。

面白いのは春の成虫と夏の成虫があり、夏の方が全体に黒っぽくなっているようです。

それにしても、黄色の花との鮮やかなコントラストがとてもいいですね。ベニシジミの仲間はユーラシア大陸や北アメリカにも広く分布しているようです。

昔の昆虫少年だった私にとっては、なかなか魅力的なベニシジミチョウでした。

 

 

 

 

1.「 ”マシュマロテスト” を知っていますか?」

                -池谷裕二(脳研究者)ー

 

東大薬学部の教授で人間の脳の研究を続けている池谷裕二という人がいます。第一線の脳研究だけでなく、読みやすい本の形を通して私たち素人にも人間の脳に関する興味あふれる話を紹介する活動を続けています。

今回出版した『脳はみんな病んでいる』という本は、作家の中村うさぎさんとの対談の中から生まれたとてもユニークなもので、そこに紹介されていたおもしろい話を紹介します。

 

「マシュマロテスト」を知っていますか? 目の前にマシュマロが一個あって、食べずに15分間我慢すれば、もう一個もらえる。それだけのテストです。

何もない部屋で一人で我慢させると、三歳児は食べちゃうのですが、四歳児になると合格する子が出てきます。

おもしろいことに四歳でマシュマロテストを合格したかどうかで、大人になった後の人生の質、例えば出世率や肥満率がちがうのですよ。

アメリカにはSAT*という、日本でいうセンター試験のような共通テストがあります。この点数も、マシュマロテストを耐えられた子は平均210点も高い得点をたたき出すのです。(2400点満点)

忍耐力がある子とそうでない子は、明らかに成績に差が出て、その結果が出世や年収にもあらわれるわけです。

 

四歳児の段階でこの自制心力が養われていれば、後々大きな差が出るということが証明されてきたというわけです。しかも、面白いのはその自制心は生まれ持った性格というよりも、むしろクイズやナゾナゾなどの遊びを通して育てられるというのです。

つまり、「我慢には利点がある」ことを遊びの中でも十分理解させられるということですね。

 

もちろん我慢の方法は大人になってからでも覚えられますが、「三つ子の魂百まで」と言われるようにこの段階で我慢の仕方をきちんと教えられた子は強い。

何しろ人間は生まれてから三、四歳までの間に、生まれ持った神経細胞の七割を殺してしまうそうですが、この脳のリストラシステムの中でも必要とされて残る「我慢の力」はとくに強く、人生に劇的な変化を起こすと言われているそうですから。

 

それではまた。

          *SAT(Scholastic Assessment Test)