気になる言葉 <第844回> | MIKEのブログ

気になる言葉 <第844回>

『雨水(うすい)』の次候、『霞始靆(かすみはじめてたなびく)』です。

春になると大気中の水滴や細かな塵が増え、遠くの山は霧や靄(もや)がかかって景色がぼんやりと見えます。これが春霞(はるがすみ)ですね。

二月も終わりに近づこうとしています。まだ寒い日もありますが、確かに春本番に向かって進んでいるような感じがしています。

 

まだ薄暗い中での朝散歩ですが、心なしか、途中で見る日の出にも春の予感を感じるようになりましたね。

 <写真1>

 

しばらく歩いていくと、道の脇に沈丁花(じんちょうげ)の花が咲いているのを目にしました。立ち止まって近づくと、懐かしい沈丁花の春の香りがします。梅の花も少しづく散り始め、次は桜の花が咲く番ですが、その桜の花に先駆けて沈丁花が開花して周りに春の香りを漂わせるのです。

<写真2>

 

沈丁花は室町時代より少し前のころ、中国南部から渡来したと言われていますが、香りは「沈香(じんこう)」という香りに似ており、葉の形が丁子(ちょうじ)という植物に似ているところから、”沈丁花”となったと聞きました。

ご存知のように、クチナシ、キンモクセイとともに日本の三大芳香木の一つですね。

 

明日咲くと思はせ振りの沈丁花 (楯野正男)

通り抜けならぬを承知沈丁花 (小西龍馬)

沈丁の香りを深々と吸い込みし (大橋敦子)

 

毎年、沈丁花の香りがする頃になると中学校の国語の授業で習った峠兵太の『じんちょうげの花』という詩を思い出します。

 

タバコ屋さんの横をまがると

じんちょうげの花のかおりがします。

そのはなの香りをたよりにきてください。

すぐにわかります。

となりの街にひっこしていった

あの子のたんじょう日の招待状に

そう書いてあった

 

なぜか、詩の中のこの部分だけを鮮明に覚えているのですが、よほど印象的だったんですね。

子どもの頃の記憶って何とも不思議なものです。

 

 

 

今週の<気になる言葉>は、日本電子会長、栗原権左衛門さんの言葉です。

このところ、日本の経済力の停滞、そしてそれを支える科学技術の低下などが頻りに話題になっています。しかし、本当に日本というのはそんなに短い時間に実力を落としてしま

ったのだろうか、と悔しい思いをしていた時に見た記事の中の言葉です。

たしかに、最近の日本のGDPは低迷していますが、何かを生み出すための能力と言われているECI(経済複雑性指標 Economic Complexty Index)は、この20年間ずっとナンバーワンを続けているというのです。つまり、何かを生み出すための能力がどれだけあるかの指標では依然として高いのです。

ただ、最近の日本はそれを活かしていく総合力が弱い。ですから、蓄積されてきた多様な知識を解明して横断的に組み合わせることができれば、つまり創造的な製品に結晶化させていくことができればいずれまた高いGDPを達成することができるはず、と言うのです。

大いに発奮したいものですね。

 

 

 

今週の<旅スケッチ>は、昨秋スケッチ燦の『近郊スケッチ』の行事で行った半田市運河界隈の景色です。

 

 

私の故郷、半田は知多半島に位置し、豊かな地下水によって古くから醸造業が盛んでした。

そのために、ミツカンとかキッコウトミなど多くの醸造会社があり、江戸への輸送もあってこの半田運河界隈には多くの古い建物が今も残っています。

今回の絵は川の東側に残っているキッコウトミの工場跡です。ミツカンの創業者中野又左衛門の建てた旧半六邸のちょうど対岸にあります。

今も醸造蔵の黒板塀を見るといかにも『醸造の街、半田』を感じさせてくれる何とも懐かしい風景です。

 

古い工場の黒板塀が主役の絵ですが、黒板塀の黒さの中にいろんな色を重ねることで古い感じを出してみました。この絵では景色の遠近感も重要な役を果たしています。その中に歴史の長さを感じていただければ、、、と。

 

 

<朝の散歩道>の一枚目は、枝垂れ梅(しだれうめ)が満開になっている様子です。

 

枝垂れ梅は、普通の梅よりも少し遅く、2月中旬から3月にかけて開花しますが、まだまだ寒い時期なので花持ちも良く2~3週間咲きます。

枝垂れというと桜が有名ですが、こういう枝垂れ梅もまた魅力的でいいものです。

 

しだれ梅主無き庭にほころびぬ (西村咲子)

咲き満ちて風の重さの枝垂れ梅 (今瀬剛一)

地に向いて放物線の枝垂れ梅 (安倍桂)

 

二枚目は、梅の木にメジロがやって来て蜜を吸っている様子です。

 

メジロは字のごとく目の周りが白くなっている春の鳥ですが、花の蜜を好むために「花吸い」とも呼ばれています。蜜を吸うために嘴(くちばし)が細く、蜜を吸いやすい特殊な先が筆のように進化した舌を持っているのがすごいところですね。また、蜜を吸うだけでなく、花粉を運ぶ鳥媒花(ちょうばいか)の役割も果たしています。

変ったところでは、「メジロ押し」という言葉があるように、仲間で温め合ったり、敵から身を守ったりするために、押しくらまんじゅう状態になることもあるのだそうです。

 

春めきし庭に目白の来てゐたり (阿部文子)

梅の香の中飛び交へる目白かな (中島知恵子)

梅咲くと目白忙しき枝移り (石井邦子)

 

 

 

 

1.「日本は何かを生み出すための多様な能力(ECI)が世界一高い」

             ー栗原権左衛門(日本電子会長)ー

 

日本の経済成長を牽引してきた科学技術の停滞が語られるようになって、悔しい思いをしている人が多いと思います。しかし、「本当にそうだろうか、そんなに急に能力が落ちてしまうものだろうか」と悔しい気持ちでいたとき目にした吉野彰(ノーベル化学賞)さんと栗原権左衛門(日本電子会長)さんの対談記事の中に希望の光を見た思いがしました。とくに栗原さんの言葉に勇気づけられました。

 

何かにつけて、「日本はもう後進国だ」「低開発国だ」「三流国だ」と。でも、それ私は反対なんです。決してそうじゃないんですよ。国力というのは何を指標にするかで大きく変わると思いますけど、ハーバード大学の経済学者が「経済複雑性指標(ECI)というものを提唱しています。以前、資料を読んで驚いたのは、日本がずっとナンバーワンを走り続けているんですって。それも20年間です。

これは要するに、どれだけ多岐にわたる産業やテクノロジーを国内に持っているか。生み出されたものの量で測る国内総生産(GDP)とは違って、何かを生み出すための能力がどれだけあるかの指標です。これだけ多様さを持っているのなら、それを横断的に連携させれば、今までにない新たな価値を創造できると思いますよ。

 

ECI(Economic Complexty Index)というのは、私も初めて聞いた言葉ですが、、もともとハーバード大のリカルド・ハウスマンらによって提唱された指標で、ある国の独自の文化により蓄積されてきた多様な知識を解明して組み合わせることにより創造的な製品に結晶化させていく能力を示すものです。それが2000年以降、なんと20年連続で日本が世界一になってきたというのです。

 

栗原さんも言うように、この指標はその国の将来における経済成長を計測するための有力なツールとして、主にGDPとの対比において正確に予測できると言います。つまり、

今GDPとの間にギャップがある日本のような国も、将来的にはその差が埋まっていくということになります。今後ますます注目すべき指標として各国で採用される可能性が高く、それだけ強力な指標だとのこと。 何だか明るく頑張る気持ちになりませんか?

 

それでまた。