気になる言葉 <第841回> | MIKEのブログ

気になる言葉 <第841回>

今週は「日本七十二侯」の最後、『大寒』の次候『水沢腹堅(さわみずこおりつめる)』です。

沢の水に分厚い氷が張りつめる頃、というわけですが、大寒のこの時季になると、一年でも最低の気温になり、ときにはシベリア寒気団の影響で大雪や分厚い氷を見ることになります。

 

先週の大雪はとくに能登地震に被災された方たちにとっては、とても辛い状況だと心が痛みます。

この寒気団は強烈で、普段はあまり降らないわが知多半島にも雪をもたらしました。知多半島は若狭湾~琵琶湖~伊勢湾という雪回廊の端にかかっているために、ときどき、こういう思わぬ量の雪が降るのですが、北陸はそんなものではなかろうと、とても心配です。

 

この辺りでも、朝散歩のときは周り一面真っ白で、わが村は深い雪に埋まっているように見えました。

<写真1>

 

その日はウィークデイでしたので、慣れない雪道に周りの道路はどこも大渋滞でした。一台でもスリップすると道を塞ぎます。とくに、橋の上でのスリップはひどかったようです。そんな中でも、通学の子どもたちは元気で、はしゃいでいました。

そう言えば、草野新平の『雪の朝』という詩がありましたね。

 

まぶしい 雪の はねっかえし。

青い。

キララ子たちは はしゃいで。

跳びあがったり もぐったりしての 鬼ごっこだ。

 

あぁ。

まぶしい 雪の はねっかえし。

自分の 額にも キララ子は 映り。

 

うれしい。

空は グーンと まへに 乗りだし。

天の 天まで 見え透くやうだ

 

 

この雪は次の日まで少し残り、散歩道脇の咲き始めた梅の花も何だか寒そうに見えました。

<写真2>

 

この辺りの梅は1月末頃から咲き始め、ピークは2月末から3月になりますが、気の早い梅の木はもう咲かせ始めています。ただ、まだ「馥郁(ふくいく)たる梅の香り」とはいきません。

そう言えば『梅一輪一輪ほどの あたたかさ』という句がありましたね。この句は、あの有名な松尾芭蕉の弟子、服部嵐雪の作品ですが、春を待つ気持ちがよく感じられます。

 

つぼみ満ち梅いちりんの咲く木あり (阿部ひろし)

寒中に健気なるかな梅一輪 (江口九星)

一輪の色をほどきて梅匂ふ (稲畑汀子)

 

 

今週の<気になる言葉>は、数年前に亡くなった日本文学研究者のドナルド・キーンさんと瀬戸内寂聴さんの対談からの言葉です。

日本の美や文学に造詣の深い二人が生前に「日本の心」について熱く語り合った『日本の美徳』という本の中にまとめられています。当時ともに96歳。その中で語られたキーンさんの言葉です。

「日本人の特徴は『清潔』『礼儀正しさ』と『何が起きても前に進むたくましさ』です」

なんだか、少し面はゆさもありますが、日本人として誇らしく感じますね。

でも、16世紀のザビエルの時代からそう言われ続けてきましたから、おそらく本物だと思っていますし、信じたい気持ちがいっぱいです。

現在は、いろんな苦境の中にありますが、この日本の美徳を活かして、もう一度日本の底力を示したいものですね。

 

 

今週の<旅スケッチ>は、以前描いた絵で恐縮ですが、気に入っている雪の中にみえる村の景色を描いた小作品です。先週の雪で思い出しましたので。

 

 

静かな雪国の村に朝日が射してきました。その光の色が真っ白な雪原に反射してオレンジ色に輝いています。周りの気温はとても低いのでしょうが、何だか温かみを感じる風景です。

 

技法的には、静寂な雪原をひろくとらえたアングルで捉えてみました。雪の白さは紙の白さだけではなく、不透明の白い水彩絵の具を使って雪の感触を表現しています。

また、真っ白い雪原の広さを強調することで音のない世界を感じてもらえるように考えました。

また、光のオレンジ色は、白い水彩絵の具で描いた雪の上にパステルを使って柔らかく表現してあります。

 

 

今週の<朝の散歩道>は、柑橘類でも最も耐寒性があると言われている柚子(ゆず)です。

 

柚子の原産地は、中国の揚子江上流であると言われています。日本には飛鳥時代、奈良時代に渡来したという記録があるそうです。

”桃栗3年柿8年、ユズの大馬鹿18年”

と言われてきたように、柚子の成長は遅いことで知られています。しかし、その分というか、含まれる栄養素は豊富で美容、健康に効果があると言われています。

とくにビタミンCの含有量は日本の柑橘類の中ではNo,1だそうですね。

 

柚子の実の日に日に変はる黄色かな (黒澤登美枝)

次々と顔出すごとし柚子明かり (中緒和子)

朝日燦々柚子のしづくの柚子いろに (高尾豊子)

 

 

 

 

1.「日本人の特徴は『清潔』『礼儀正しさ』と『何が起きても前に進むたくましさ』です」

          ードナルド・キーン(日本文学研究者)ー

 

ニューヨークの古書店で『源氏物語』に魅了されて以来、日本の文化を研究してきたドナルド・キーンさん。法話や執筆によって日本を鼓舞し続けた瀬戸内さん。

二人ともすでに鬼籍に入られましたが、日本の美や文学に造詣の深い二人が生前に「日本の心」について熱く語り合った『日本の美徳』という本が出版されました。当時、ともに96歳。その中で語られたキーンさんの言葉の一つです。

 

日本人について書かれた一番古いものは『魏志倭人伝』です。その中で日本人の特徴が二つ挙げられています。一つは『清潔』であること、もう一つが『礼儀正しさ』。驚くことに、これは今も変わっていないのです。まず、『清潔』ですが、日本人ほどお風呂に入る人々はいないでしょうし、「行きたいところは?」と聞けば、「温泉」。とにかく日本人の生活は清潔さを大変大事にします。

そして『礼儀正しさ』、これは私も非常に重んじていることです。今の若い日本人は、以前のようにあまり敬語を使わないかもしれません。でも、いざというと、みんな敬語を使って話すことができます。あとは、何が起きても立ち上がって前に進む逞しさ、それも素晴らしいと思います。

 

自分達日本人からすると、程度の差こそあれ、清潔も礼儀正しさも当たり前のように感じていることですが、外国の人からすると「日本人の特徴」と見えるという指摘です。

現代の私たちからすると、少し面はゆく感じるところもありますが、同時に先人たちのお蔭、とありがたい気持ちにもなります。

 

実はこういう指摘は、16世紀、キリスト教伝道のために日本に来たザビエルの本国への手紙の中にも多く書かれています。中世以来、外国の人たちからは驚きの目で見られていたのです。

もう一つ大事なのは「何が起きても、立ち上がって前に進む逞しさがある」という指摘です。

おそらく、日本は大昔から台風、火山、地震など頻繁に自然災害に襲われており、その都度立ち上がって前に進むしかなかった。そのことが、この逞しさを育んだのではないでしょうか。

この逞しさは、最近では東日本大震災の復興に見られましたし、その復興の力は自然災害だけでなく、先の敗戦の廃墟からの復活にも見られました。最近、話題になっている日本経済の長期低迷にも、この「何くそ」という復元力が大いに期待されるところです。

もう一度日本の底力を示したいものですね。

 

それではまた