塩の街 | heart.

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今を過ごして見つけたキモチ。

昨日買った、このライトノベル。

今さっき読み終って、ここに書かずにはいられない。

すごい。すごい。すごすぎる!

何気なく立ち読みしたら止まらなくなって、思いがけず買っちゃって、

読むのが止まらなくて、ラストの両ページの帰還の絵と、再開に胸が打ち震えた。

なんて素晴らしい。すごい。読めてよかった。この本に出会えてよかった・・・!


※多いにネタバレ含みます。先が楽しみな方は見ないことをお勧めします。



塩害という、人が塩の塊になってしまう病の時代。

人口は人類絶滅の危機にまで晒され、治療法も、原因すらわからなかった。

ただ、東京湾に、天を突く程の巨大な塩の結晶が隕石として落下しただけ。

道端には、元は生身だった塩の彫刻が林立し、家族もまたどこかでそうなってしまったのか

仕事から帰ってこなくなり、愛する人は手から塩を吹きはじめ、目の前でゆっくりと白く固まっていく。


あいしてる。そう言いかけた形のままで、白く凍りついた塩の柱となった。


”二人は、世界と溶け合ったのだ。それは、永遠を手に入れたことに―――なるのか。”


“真奈ァ・・・・・・目が、濁ってきたよォ・・・・・・。”



あたし、迎えにも行ってあげなかった。きっと家に帰りたかったのに、


もう、誰かと混ざって見分けもつかない。



世界でいちばん愛してる人が、目の前で安らかに微笑むすがた。

-俺が先かあいつが先か。-

一体自分たちに後どれだけの時間が残っているのか。


そして、一人の男が訪ねてくる。彼は言った。

“じゃあ言い方を変えよう。世界とか、救ってみたくない?”

厚木の米軍基地を襲撃・飛行機を強奪し、その男が塩害の原因とみた結晶を攻撃・破壊。

それは塩害の原因が確定されるまで静視しようとしていた、世界への大規模テロを意味していた。

そして実行するのは、

その人は、




初めて会ってから、わざとらしいほどそっけなく助けられてから、ずっとたくさん見つめてきた。

優しくするとき怒る人を気づかれないように見つめてきた。

優しい目と優しい手と優しい仕草と。

どうしてこんなにぐずぐずしてたんだろう。

変わらない明日が来るなんて、もう世界は約束してくれないのを知っていたのに。


けれど、少なくとも、自分が手を伸ばす自由はある。

手は動くのだ、自分が伸ばそうとさえ思えば。

たとえ、それが届かなくても。


――――――恋は恋だ。



いつか聞いた台詞。

“わがままだけど、身勝手だけど―――俺たちが恋人同士になるために、世界はこんな異変を

起こしたんじゃないかって。”

そう言って海を目指した恋人たち―――。

世界なんか救わないで!だから無事でいて!もう旧い世界のほうがよかったなんて言わないからっ!

空気が、激しく動いた。

触れた唇が同じ温度に。


「先に死なれたら俺がたまらねェんだよ!」


手は届いた。思いがけず。

ただし、届いた瞬間振り払われた。


世界なんかどうでもいい。あの人だけ無事でいてくれるならそれで。

世界が救われることを、何千人、何万人、何億人の人が望んでいたとしても。

ごめんなさい。ごめんなさい。誰に謝っているかもわからずに、ただ何度も呟いた。

たとえ世界中から憎まれても、その歪んだ願いを捨てられない。

あの人にもしものことがあったら、たとえ世界が救われたってそんな世界には何の意味もないのだ。


“何であんたが誰かに謝んのよ”


“好きな人に死なないでほしいって思うのが何で悪いの。あんた、二尉が好きなだけじゃない”

秋庭が好きなだけなのに。

まるで世界中にその恋は悪い恋だと言われているような。


“悪くないから”



そして、秋庭を探す扉は、別の人によって閉ざされた。

居場所を教えてくれるって言ったのに、

どうしてこんな、最後まで、―――誰も彼もが邪魔をする。



“ここを―――開けてください。別に、秋庭さんの居場所教えてくれなくていいですから。

もう、誰にも頼まないから―――ここを開けて。あたしが勝手に探すんなら自由でしょう?

やみくもに探したって見つかるわけないんだから、誰にも迷惑かからないでしょう?”


“あたしも邪魔しないから、あたしを邪魔しないで”



“ごめん。行かせるわけにはいかないんだ。頼まれたんだ。君に二尉を追わせるなって。”


誰に。


“秋庭二尉に。”




真奈の頬を涙が滑り落ちた。

こんなに苦しくてままならないなんて。そのうえ―――。

秋庭自身が一番ままならない。


お願い。秋庭さんと、話させて。

ドアの向こうからはごめんと返ってくるばかりだった。



司令のおかげで部屋から出られた真奈は、挑まれた。

“秋庭のためなら何でもできる?”

そして挑み返すように頷いた真奈は、塩害の実験室―――入った人間を塩化させるための部屋へ入った。

そして司令は秋庭へと無線を繋ぐ。真奈をあの部屋に入れたと聞き激昂する秋庭に、司令はこともなげに

言い放った。

“作戦をね、成功させて帰っておいで。それで丸く収まるよ。”

死ねなくなった。

「てめえ今度こそ殺してやる!機体の海上投棄なんざ知るか、直で立川に降りるぞ!

せいぜい苦労して後始末しやがれ!」

伝令にマイクを突っ返し、秋庭は自分に何かあったら真奈に渡してくれとつい先ほど渡した認識票(ドッグタグ)を

隊員から引ったくった。

「やめだ、辛気くせえ! 生きて帰るぞ!」


秋庭は必ず戻ってくる。そう信じる。信じることでもし願いが叶うなら、部屋を出ることは

自分の願いを疑うことだ。信じているなら出る必要はない。

願をかけるなら全身全霊でかける。弱気に願ってもきっと何も叶わない。

それに、もし秋庭が戻ってこないとすれば―――もっと出る必要はないのだ。

秋庭のいない世界なんてもう要らないから。


――――あたしたちは、恋だろうか。


手が届いたことは、等しい温度になった唇は、夢ではなかったかと思えてくる。

怯えるように息をした慄きさえも。

だからまだ半分だ。半分、真奈の分は恋。

“分かれよ!”

叫んだ声が耳に蘇る。―――分かってなんかあげない。

ちゃんと分からせてくれるまでは、分かってなんかあげない。

ちゃんと、秋庭の分の半分も恋だと教えてくれなくては、半分ではなくひとつの恋だと―――

どうか分からせて。

世界なんかどうなってもいい。どうか、あの人が無事に戻ってきますように。

世界で一番身勝手な祈りを呟く。


あの人をください。あたしにとってすべての意味を持っているあの人を。




そして、最後のページのあの言葉。


何てぶっきらぼうで、愛想のない―――


でも。



まるで、愛していると言われたような気がした。




何て胸を打つstory。

読むほどに、手が止められない。どうなってしまうのか、はらはらしながらページをめくった。

本を閉じた時、またひとつ、心の宝物に出会えたと、強く感動した。

素晴らしかった。

何も言わずに読めと触れ回りたいくらいに。

私の中で、彩雲国物語と文学少女と、ハリー・ポッターに匹敵すると思った。

これらは絶対、絶対読まなきゃだめだという、本と。


愛する人と世界を秤にかけられたとき、自分は何を思うのだろうか。

喪って初めて気付く大切さ。掌からすり抜けそうになって初めて、愛していたのだと気付いた。

本当に素晴らしかった。

電撃文庫版ライトノベル『塩の街』。著者/有川浩 Hiro Arikawa

これほどに素晴らしい感動を、あなたに伝えたい。あなたにも是非、是非読んでほしい。