南一局南家
親は首位のモンドチーム。きっとカボチームがスピードを上げてくるはずだ。
門前リーチや三翻以上見込める仕掛けなら正面からぶつければいい。この点数状況で先手リーチを打てればカボチームは道を譲ってくれる可能性もある。
わたしの手牌は仕掛ける条件を満たさないのでリーチを目指すため、白をツモ切る。
するとこの白をカボチームがポン。次巡には東もポン。案の定全力速で来た。
6巡目、親のモンドチームからリーチ。
東一局にも見た光景だ。ここはカボチームが押すはずだ。
わたしも手が整えば勝負に行くけど、無理矢理間に割って入るほどではない。一向聴で安全に聴牌をとる道を探った。もしくはカボチームに和了ってもらいたかったが終盤でカボチームもおろされモンドチーム1人聴牌で流局。
南一局1本場
神々しい配牌を手にする。
4巡目に聴牌、跳満確定リーチ。
ところがこのリーチは、モンドチームに12000は12300の放銃という結果を見る。
このリーチ選択については後悔もないし、やるべきことをやったと思う。
ちなみに和了り牌は他にも流れていないので、闇聴にしてもこの巡目までに和了りはない。単純に5対2を引き負けた。
これもまた麻雀だ。
モンドチームの押しが見事だったとしか言いようがない。
しかしこれでこの半荘3着目に落ちる。
南一局2本場
配牌でドラ2枚。満貫取り返せる材料がある。純粋にリーチを目指す。
11巡目に門前聴牌しリーチ、2巡後にツモ、満貫。
南二局
親でタンヤオリーチを打つ。
2副露していたカボチームがリーチの現物待ちになっており、モンドチームからの横移動を誘発する結果となる。
南三局
この局はモンドチームがお見事だった。
わたしはこの点差でリーチ棒を出すのが嫌で、役あり聴牌を目指した。
②をツモ切り三色を狙う。
でもここは③受けを残さなければいけない。
次巡、リーチを受け、③を引き聴牌逃し。
結果として和了り逃しまではなかったけど、この選択ができないと今後それが原因で負けることもあるだろうと思う。
モンドチームはドラを切って狙い通りの2sツモで満貫。
この和了りはかっこいいな。
満貫直撃、満貫ツモられ、満貫出和了り、満貫ツモられ、トップ目にいたところから親満直撃され3着目。そこから満貫ツモ、横移動でまたトップ目、さらにまた満貫ツモられて再逆転される。ジェットコースターだ。
オーラス、トップ条件は満貫ツモ。
8巡目この聴牌。
七が入れば文句なくリーチだったけど、この形では高めツモ+一発か裏が必要。
時間があるなら四ツモ切りで赤か七を引くのを待ちたい。
ところがトップ目の首位チームは聴牌気配。時間がない。
わたしには、地元に麻雀できる女友達が何人もいる。
中でも1人、わたしの麻雀を見て言語化しにくいわたしの思考を汲んでくれる友達がいる。
いいことも悪いことも正直に言ってくれるメンターのような存在。いい麻雀が打てたと思う時、一番にそれを見せたくなる、話したくなる存在だ。
4年ほど前のとある対局、決勝戦のオーラス、トップめの親番。
ライバルの2着目の選手からリーチを受け、ジタバタして放銃し、優勝を逃したことがあった。
帰り道、その彼女から連絡があった。
「ゆかりが泣いてるんじゃないかと思って」
何よりもまず先に謝った。
『みっともない麻雀打ってごめん。がっかりさせてごめん』
「あそこまでめちゃくちゃいい麻雀打ってたから、あとは無理せず身を委ねてもよかったよね。人事尽くして天命を待つ。わたしのすごく好きな言葉だよ」
その時「人事尽くして天命を待つ」という言葉がわたしの中に刻まれ、最終局面でバタつくことはほとんどなくなったように思う。
そこまで自分が選択を繰り返してきた結果を受け入れよう、という気持ちになれた。
そのせいで負けた試合もあると思う。
でも、それが実力であるとも思った。
(人事尽くして天命を待つ)
そう心の中で唱えて、リーチを打った。(もちろん9pは一発でなければツモ切るつもり)
この半荘、やるべきことはやった。
あとは結果を受け入れよう。
一発で6pをツモった。
条件クリア。
あの日の失敗が、リーチを選択する覚悟を決めさせてくれた。
そしてそこに、6pがいてくれた。
追い掛ける麻雀は面白いな。
数年前、沢崎さんと話していて言われたことをふと思い出す。
「ある時A1の最終戦オーラスで荒さんが満貫ツモれないと降級なわけ。高めダブ南のシャンポンリーチ打つんだけど、南引くんだよ。勝つ人間はみんな、そういう牌ちゃんと引いていった。だから僕は思ってるんだよ、勝つべき者が勝つって。」
沢崎さんも言っていたじゃん、自分を信じてるって。
自分が信じるに値する自分、そうなれるために必要なのは練習。
わたしはここまでにやれることはやれたという自覚があった、放銃という結果になった局も含めて。人事尽くして天命を待つって、そういうことだ。
もし一発でツモれずに裏も乗らず、条件を満たせなかった時は、まだ足りなかった、そう思おう。
勝負はオーラスで決まるのではない、そこまでの過程だ。
前大会に出ていた人たちも、あの時よりみんな強くなっていた。
みんな麻雀してるんだ。当たり前だ。
また対戦できる日まで、もう次の勝負は始まってる。