「酒とバラの日々」(ジョニー・マーサー/ヘンリー・マンシーニ) | 『Go ahead,Make my day ! 』

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【オリジナルのハードボイルド小説(?)と創作に関する無駄口。ときどき音楽についても】

えー、目下、快調に遅れ始めている「Letters」ですが、どうせ遅れるなら少し気分転換な記事を書こうかと思いまして。(ひ、開き直りだよっ!!)
どうせなら、誰にも相手にされている気配のないジャズ記事を書くことにします。
 
「酒とバラの日々」は1962年のアメリカ映画。
享楽的な響きのタイトルとは打って変わって、この映画はアルコールに溺れていく若い夫婦の姿を描いたかなり悲劇的な作品です。
最初は夫の方がアルコール依存症に陥り、やがて妻もその後を追うようにアルコールの泥沼へと落ちていきます。
紆余教説の末、夫のほうは何とか依存症から抜け出すことに成功するのですが、自分を依存症だと認めることのできない妻は夫のもとを去ります。
ラストシーンで、二人の間に生まれた娘が「ママはいつ戻るの?」と問いかけ、夫は「病気が治ったら帰ってくるよ」と答えます。しかし、それはいつのことかも分からなければ、治るかどうかも分からない、とてもあやふやなものでしかありませんでした。

で、この映画の主題歌が同名の曲「Days of Wine and Roses」です。
作詞を手がけたジョニー・マーサーは自身が酒に問題を抱えていたのだそうで、実話か映画にまつわる逸話かははっきりしないのですが、酔って人に嫌な思いをさせた翌朝、彼はその相手の部屋にバラを届けさせていたのだとか。
あるとき、いつものようにある女優にちょっかいを出したところ、マーサーは彼女から
「やめて。私はあなたからバラなんか貰いたくない!!」
と詰られて、すっかり素に戻ってしまったそうです。
そんなマーサーはこの詩をわずか5分で書き上げたという話も残っており、それは彼が酒に溺れながらも、そんな自分へ皮肉な目を向けていた証拠なのかもしれません。

そういう逸話のある曲ですし、そういう内容の映画の主題歌なのですから、ジャズのスタンダード・ナンバーになっても基本的には哀愁と悲しみ、憐憫に満ちたアレンジになるのが普通だと思うのですが……。

実際にはそうでもないんですよね~。

この曲をカバーしているミュージシャンを列挙してたら大変なリストができてしまうので、有名どころだけ挙げてみますが。
オリジナルはアンディ・ウィリアムス、有名なカバーはフランク・シナトラ、オスカー・ピーターセン・トリオ、ボビー・ダーリン、アニタ・オデイ、エラ・フィッツジェラルド、ビル・エヴァンスといった錚々たる顔ぶれですし、最近だと矢野沙織(「報道ステーション」のオープニングのサックス奏者)もカバーしてます。
もちろん、カバーをするからにはそれぞれの奏者の解釈が入りますし、そうであるべきなのですが、この曲くらいそれがバラバラな曲もそうないんじゃないかと思うのですよ。
実際、オスカー・ピーターセンの演奏なんか、えらく軽快というかオシャレな勢いがありますし、逆にビル・エヴァンス(例によってこの人の演奏好きなんですが。笑)は諦めにも似たやけっぱちさというか、彼自身もまたアルコールに問題があったエヴァンスらしい演奏になってます。

こういうのはどれが正しいというのではなく、違いそのものを楽しむべきなのでしょうね……。

Days Of Wine And Roses(1962 Johnny Mercer/Henry Mancini)

The days of wine and roses
laugh and run away like a child at play

(酒とバラの日々は、遊ぶことに夢中な子供のように
 笑いながら走り去ってゆく)
through a meadow land toward the closing door
(草原を通り抜けて、閉じかけたドアに向かって)
A door marked "nevermore" that wasn't there before
("やり直せない"と書かれた、見知らぬドアに向かって)

The lonely night discloses
just a passing breeze filled with memories
of the golden smile

(寂しい夜が語りかけるのは、
 ちょうど吹き抜けていくそよ風がつれてくる
 輝かしい笑顔の思い出のこと)
that introduced me to
The days of wine and roses and you

(その笑顔が酒とバラの日々と、
 そして、あなたへとわたしを誘った)

(The lonely night discloses)
just a passing breeze filled with memories
of the golden smile

(ちょうど吹き抜けていくそよ風がつれてくる
 輝かしい笑顔の思い出)
that introduced me to
The days of wine and roses and you

(その笑顔が酒とバラの日々と、
 そして、あなたへと私を誘った)

 
(今回は歌詞を見ながら曲が聴けるように、いつものTHICKBOXにはしてません。上がアンディ・ウィリアムズ、下がビル・エヴァンスです)

 

 
(えっと、我がブログの読者の大多数を占めるであろう酒豪の女性陣にケンカを売ってるわけでは決して……決してありません!! ←必死)