行間を読む男が重箱の隅をつついてみる。 | 『Go ahead,Make my day ! 』

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【オリジナルのハードボイルド小説(?)と創作に関する無駄口。ときどき音楽についても】

 
というわけで(?)始まった「Letters」ですが。第1回のラストで登場するのがあの女であることは、もうバレバレですね(笑)
 
ところで、第1回の前にウダウダ書いてる中で「真名さん作品は時制が固定されていない」と書いておきながら永一たちと真奈を同級生(!)にしてしまっているのですが、実はコレ、あながちムリなこじつけでもありません。
何故なら、読みようによっては「OVER」の中に、それがいつの話なのかをかなり狭い範囲で特定できてしまう記述があるからなのです。
それは<Scene3>の冒頭のこちらの段落。
 
学校法人も個人情報保護法の施行に神経を尖らせているらしく、ここ数年で情報管理が厳しくなっていた。それほど経営状態もよくなさそうな、人気も進学率も中堅どころの私立高であるこの学校も、大金をかけて全面的にシステムを更改したらしい。
管理されているデータにアクセスする方法が無いわけではないが、その程度の情報を得るために、合法的ではない手段を使う気にはなれなかった。(「天空の檻」収録版より引用)

 
勘の良い方はお気づきかと思いますが、キーワードは「個人情報保護法の施行」ですね。
 
個人情報保護法は2003年5月に成立、それからおよそ2年の猶予期間を置いて、2005年4月に施行されております。
文章によると永一たちが通う学校の運営法人は同法の施行に神経を尖らせているわけですが、これだけでは施行前なのか後なのかはハッキリしません。
そこでフォーカスされる次のキーワードが「ここ数年で」です。
まずは”この数年がいつから数えてなのか”ですが、この法律は2002年に国会に上程されてから、成立までの間にずいぶんと紆余曲折があった法律です。報道の自由を侵害するなどの理由から反対運動が展開されて、一度は廃案にまでなっています。
それが意味するのは”経営状態もよくなさそうな人気も進学率も中堅どころの私立高であるこの学校”がシステムの更改に大金を投じることを決めるのは、少なくとも法案が成立した後でなくては筋が通らないという事実なのですね。つまり、2003年5月以降ということになります。
 
で、後は「ここ数年」が具体的に何年なのかという問題になるのですが。
 
これを2年以内だとすれば(複数年なので1年はないので)「OVER」は2004年の秋のお話であり、3年以上であれば2005年以降のお話になるわけです。
わたし(えいみす)はここで「2年は数年とは言わないだろ」ということで2005年説を採りました。そうすると、2005年の夏に高校2年生だった真奈(「砕ける月」参照)とは同級生である、という結論にたどり着くのですね。
(ちなみに「OVER」アメーバブログ版は2005年に連載されていますので、2004年説も依然として有力ではあるのですが)
 
ついでに言っちゃうと、舞台が関東地方であることは間違いない(ネタバレになりますので詳しい解説はしませんが)とか、一人称の文章っていうのは書き手が思っている以上の情報量を持っているわけで、わたしのような読み手にかかると、こうやって重箱の隅をつつかれてしまうわけですね。
 
まあ、だからどーなんだって話ですが。
(あ、第1回にさっそく「OVER」と矛盾する記述(携帯電話関連)がありますが、それは「OVER」と「Letters」の間の経年変化ってことにしといてください……)